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御爛然  作者: 愛植落柿
第五章『禍都』
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第五章47話『叔父』

 建て替える前提で完全崩落させた城だが、人員を総動員することで早々に再建しようと考える地空(ちぞら)は自身にとっての従者の伝手で人員を派遣してもらおうと、同じく露零(ろあ)にとっては里親と互いに接点のある共通の人物が営むBARに二人は現在向かっていた。


 そうして到着した目的地。

 第二の我が家に案内する形で露零(ろあ)が扉を開いて誘導すると、中ではただ土だけが敷き詰められた屋内花壇の手入れを入念にする間微(まほろ)の姿があった。

 軽く触れておくとこの屋内花壇とは國の建築物に関する法律であり、屋内に土があることでいつでも監視の芽を生やすことができるという一種の脅しであり、同時に監視下にあるという牽制でもある。

 そんな自身を象徴する屋内花壇を念入りに手入れしている少年の健気な姿にすっかり気を良くしたこの國のトップに立つ地空(ちぞら)は従者にあるものを注文する。


「その子が噂の里子(さとご)かい? ご尊顔を見れて嬉しい限りだよ。(えい)ドリをパウチで頼めるかな」


「いらっしゃ~い、いつぶりかしらぁ? ケアしてもらうほどギクシャクもしていないけど感謝するわぁ」


 直後、スタンドパウチでお出しされた栄養ドリンクを一口飲むとまるで竹を彷彿とさせる成長速度で屋内花壇の土から植物アートをして見せ里子(さとご)二人の心を鷲掴む。

 その間に従者である(さと)植物人間(どうしゅ)の悩みの種である環境に左右されやすい体質なだけに根城を一から作り直そうと思っている旨、そしてそれをするにあたって借り出せる人材はいないかと尋ねる。


「ちょっと待ってよ! 間微(まほろ)君のお母さんについて教えてくれるんじゃなかったの??」


(??!?!?!?!)


 雷光のように駆け巡ったいくつもの思考が交錯する。

 その真相を探るべく、彼はその立場を考えれば何ら不思議はない自身の寝床確保を後回しに初代天爛然について語り始める。

 その内容については主に二つで、一つは和解をするにあたって提供する情報としてほんの少しだけ触れた「紛失者(ロスター)」と『拾得者(ファウター)』について。

 この二つは今で言うところの「滅者(めつしゃ)」と『幸者(こうしゃ)』に該当し、この世界、有為(うい)に生きる人間の中で最高齢である地空(ちぞら)はさも当然のように話していると従者にしてBARのオーナーでもある(さと)に指摘される。


「それって死語じゃないかしらぁ? 今は幸者(こうしゃ)滅者(めつしゃ)呼びが主流よぉ」


「僕たち外界人には今もそれで通用する。その言い分はねえさんが地上と密な関係になった故の価値観さ」


 次に彼が話したもう一つは第一、第二に続く第三の生命体が土塊から誕生した植物人間である自身であること。

 いや、正確には天空都市を築いた初代天爛然とは双子の関係性であり、本来であれば止め役にならなければならない自身がその役目を全うできず放棄していたと何十、何百年越しに恥を忍んでカミングアウトする。

 しかしその事実が知られれば当事者だけに留まらず、國民の立場も危うくなるため当時の部下の隠蔽工作によって体裁を保つべく箝口令を敷き、後に誕生した右も左も分からない地上の三國に対しても國ぐるみで歴史を辿ることは重罪であると刷り込んだと彼は言う。


「――――以来、僕は逃げるようにあの城に引き籠っていた。いつ地上に降りてきても不思議じゃない初代天爛然(うわねえさん)紛失者(こども)と結託して攻め入って来るんじゃないかと気が気じゃなくて緊張の糸をいつまで経っても切れなかったんだ」


「……露零(ろあ)はその緊張の糸を切る()()()()を持ってきてくれたのよぉ? それに必要なら私たち従者を頼ればいいじゃない」


「……」


 彼の治める國、紫翠(しすい)に身を置く間微(まほろ)叔父(おじ)にあたる存在の狼狽した姿に多少の困惑を見せるも静かに頷く。

 その様子に途方もなく長い年月、当事者以外の誰にも打ち明けることができなかった藤爛然(ふじらんぜん)の心は確かに救われ、その証拠に屋内花壇には四季折々の花々が一斉に狂い咲く。

 大道芸を思わせる彼の特技にこの場にいる本人以外の三人は観客と化すも、感情がそっくりそのまま反映された屋内花壇によって店内が新緑に包まれると同時に突如吹き荒れる新風が扉を押し開け吹き込んでくる。


 ひゅ~~~~~~~~ドン!!


「わわっ??! なになに?」


「全員伏せろ!」


「大丈夫よぉ。予定より遅かったわねぇ、VIP(こっち)の対応は私がするわぁ」


 明らかな発砲音。

 それも大砲のような重火器による砲撃のような爆音に敵襲を想定して伏せる三人。

 しかしオーナーである(さと)は来客の到着合図だと説明してすっかり怯え切った主君を始めとする里子二人の誤解を解くと自身が対応すると言って外に出る。


「お久しぶりねぇ、御影(みかげ)。気を利かせてくれて感謝するわぁ。でも私に言わせれば()()のはあくまで美学、あの子達が望むならお咎めだって受け入れるくらいの度量は持ってる。なんてったって私が惚れた()だものぉ」

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