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御爛然  作者: 愛植落柿
第四章『紫翠』
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第五章1話『会談』

 万物(ばんぶつ)(もう)()を討ち果たした日から早数か月。

 各々故郷に帰還した御爛然(ごらんぜん)を待ち受けていたのは歓喜とは程遠い、さらなる試練だった。

 この数か月の間で五ヵ國では次々と(とりで)が離反し國を去っていた。


 (とりで)は現在、鉄壁の要塞と化した野良(のら)滅者(めつしゃ)連合組織が設立した新たな国『禍都(まがと)』、そして御爛然(ごらんぜん)の治める國との狭間にある名もない土地に住み着いている。

 そこはかつて『未開(みかい)()』と呼ばれていた場所なのだが万物(ばんぶつ)(もう)()を討伐したことで今現在は陽光が差し込んでいる。

 そしてそれは最も外側に位置する『未知(みち)領域(りょういき)』も同様だ。


 そんな余談を許さない逼迫(ひっぱく)した状況の中で各國からの要人による会談が本日行われた。

 参加者は水鏡(すいきょう)から藍爛然(あいらんぜん)代理の弓波露零(ゆみなみろあ)

 荒寥(こうりょう)から酒場を営む男性、(すい)

 風月(ふうげつ)から(とりで)の直系弟子である南風詩音(はえことね)

 紫翠(しすい)からBARを営む男性婦人、(さと)

 そして白夜(びゃくや)からは天爛然(あまらんぜん)東雲出娜(しののめいづな)が会合場所として指定された(さと)の営むBARへと集結した。


露零(ろあ)殿ぉ、見慣れない人がいるでござる…」


「大丈夫よぉ。今日は私が回し役だから安心してちょうだい」


「私も全員と面識あるんだよ。いいでしょ~」


「――――懐かしい顔だ、今日は持ち合わせがある。飲むか?」


 そう言って酒場の店主である(すい)は謎の液体の入ったパウチを南風(はえ)露零(ろあ)に投げ渡す。

 その様子に「変なもの渡しちゃだめよぉ」注意喚起する(さと)

 だが彼女の心配とは裏腹に「おいしい!」と口々に言う二人がこれは何なのか尋ねると(すい)はそれを「スパークリング」だと答える。


「あらぁ、いつの間にそんなもの扱い始めたのかしらぁ」


「ライバル店に何でもかんでも話はしない」


「いけずねぇ。でも情報管理はそれぐらいでなくちゃ」


「はいはい、雑談はそれぐらいにしてそろそろ本題に入るわよ」


 懐かしの面々との再会に浮足立つメンバーを軽くたしなめたのは『この場』のまとめ役、出娜(いづな)

 彼女は続けて御爛然(ごらんぜん)不在の間の(さと)の行動について言及すると彼女は自身の取った行動とその意味をこの場にいる全員に共有する。


「それじゃあねえさん、事の経緯(いきさつ)を説明してもらえるかしら?」


「別に大したことはしてないのよぉ? でも強いて言えばそうねぇ――」


 彼女は(ぜん)碧爛然(へきらんぜん)が今回の騒動を予見し、記し残した書物があるという前置きをした上で自身が取った行動は主に四つだと語った。


 水鏡(すいきょう)の流行り病が解骨(かいこつ)だと判明、その病状悪化を防ぐために油分を摂取する必要があったこと告げると未知(みち)領域(りょういき)で発見された新種の果実、()()()()()をベースに増産した経口摂取可能なオイルを配給したこと。


 風月(ふうげつ)の流行り病が月黄泉(つきよみ)だと判明、その病状悪化を防ぐために一部地域ではすでに浸透している月光浴(げっこうよく)をより定着させるべく、また、進行を加速させる日光が発する紫外線対策としても期待できる()()()をご当地名物として普及させたこと。


 荒寥(こうりょう)の流行り病が狂尽(きょうじん)だと判明、その病状悪化を防ぐために密室空間で絶え間なく頓化効果のある()()を焚き続ける必要があるが、國民全員が避難できるだけの場所の確保が難しいため物資の支援のみを行ったこと。


 紫翠(しすい)の流行り病が恋忘(れんぼう)だと判明、その病状悪化を防ぐために風月(ふうげつ)の観光名所である月彩庭園(かっさいていえん)復興時の客寄せとして交配した新種の品種()()()()()()()の効能に着目。

 それから中和剤が作れるのではないかととある医療団体に依頼したこと。


「なんで白夜(びゃくや)だけ何もなしなのよ」


「それは記されていなかったし移動手段が地空(ちぞら)()()()()()()しかないんだものぉ。仕方ないじゃない」


 そう、羽を持たざる者の天空都市への移動手段は『地』の(マナ)を有する藤爛然(ふじらんぜん)に大地をせり上げてもらう必要がある。

 そんな二人のやり取りに「それじゃあ私が出娜(いづな)さんの國に行くことはないかもなんだ…」と落ち込みながら呟くと、彼女は優しく微笑みながら少女に告げる。


「ふふっ、そんな風に思ってくれていたのね。今すぐには難しいけどもう少しして落ち着いたらいつでも遊びにいらっしゃい」


「仲睦まじいところ悪いんだけどぉ、(とりで)の離反と捕虜の解放についての話もまだ残っているのよねぇ。どちらから話そうかしらぁ」

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