表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御爛然  作者: 愛植落柿
第四章『紫翠』
212/276

第四章50話『揺り籠』

(前ほどやないけど御影(みかげ)原初(げんしょ)(マナ)を継承してから思うてた以上に力が戻ってきおった。一体ウチらが手足縛られとった間にどんな死線をくぐってきたんや)


 御爛然(ごらんぜん)牽引(けんいん)する二大巨頭である朱爛然(あけらんぜん)碧爛然(へきらんぜん)

 二人のたゆまぬ努力を原初(げんしょ)(マナ)を通じて全身で感じた藍爛然(あいらんぜん)はお膳立てされたことで完成した実力以上の力を発揮できる得意フィールドで最後の大勝負を仕掛ける。


「あんたらの意思(おもい)はウチが絶対無駄にせえへんよ。生憎うちらははいつまでも箱入り娘でおるほどお淑やかちゃうんや。最後の勝負と行こか」


「……良心(こころ)を殺して生みの親たる両親(われら)を討ちに来るか。親不孝なことこの上ない、そうは思わぬか? 天命創始樹(てんめいそうしじゅ)よ」


 刻一刻と激しさを増す豪雨。

 枝垂桜のようになってしまった髪の隙間から覗くホラー映画さながらの万物(ばんぶつ)(もう)()の瞳に今更二人が動じることはなく、フィールドに合わせた『水』を主軸とした戦闘シミュレーションを脳内で行った彼は藍爛然(あいらんぜん)と激しく拳を打ち交わす。


「きゃあ!!」


「なんや?? 急にどないしてん??!」


 その時、突如後方から聞こえた少女の叫びに一瞬気を取られた藍爛然(あいらんぜん)は再度的に目を向けた際、眼球が失われているという事実に動揺する。

 その様子を遠巻きに見ていた満身創痍の藤爛然(ふじらんぜん)は思うところがある様子で目を背ける。


「――――我は全て見てきた。其方らの誰も手の内、腹の内を明かしておらぬというのに足並みを揃えるなど笑止千万」


「それがっ、なんやっていうんや!!」


「メコ、()(もの)が存命なら其方ではなく朱爛然(あけらんぜん)有利のフィールドを展開できたものを惜しいことをしたと憂いている。其方には荷が重いのだ!!」


 地底住民と同じく『植物人間』な万物(ばんぶつ)(もう)()は欠損部位を果実を実らせるが如く即座に再生させることができる。

 後方に控える露零(ろあ)が悲鳴を発したのはその性質故にくりぬいた眼球を投げ放っていたからであり、その特性を同じ力を有する者、藤爛然(ふじらんぜん)は自身の手の内全てを共有してはいなかった。


 いや、正確には彼にそれを行えるだけの余力が彼には残されていなかった。

 一國を担うものとして、マイナスに作用する持ち札をわざわざ公開する必要はない。

 しかしその選択が却って五人の関係性に亀裂を入れ、万物(ばんぶつ)(もう)()に付け入る隙を与えてしまったのだ。


「ヘイフリック限界を知られると虚を突かれると考えたのだろう? その年齢では無理もない…

が、我にとっては都合がいい」


「…………」


 状況が一変したのは誰の目にも明らかだった。

 露零(ろあ)は投げ飛ばされた眼球を矢で射貫き凍らせることに成功するも藍爛然(あいらんぜん)の方は動揺を誘われたことで防戦一方の状態。

 くりぬいた目も気付くと復活していて、その様子を歯痒そうに見ている他の面々に侮辱された張本人、藤爛然(ふじらんぜん)はあることを頼み逆転の芽を探る。


「――――さっきからあんた、何が言いたいんや? 墓まで持って行くて國のことを思うた選択は見習いこそしても誰も幻滅せえへん」


「その割には動揺が顕著に表れている」


「――っ!」


 そう言って気合を入れ直して奮起し、盛り返した藍爛然(あいらんぜん)

 凛とした空気に彼女の周辺の雨は凍り付いて小さなつららと化し、その様子に一瞬気を取られた万物(ばんぶつ)(もう)()は自身が散々こき下ろした藤爛然(ふじらんぜん)により致命的な足止めを受けてしまう。


「散々僕のことを好きに言ってくれたね。今は藍爛然(あいらんぜん)の清水で理性を保っていられるけどそれもいつまで持つか分からない。今生最後の(しん)(マナ)をその目に焼き付けなよ」


(心の臓を覗かれている感覚…悩みの種? 監視の芽か?!)


「あんた……」


 心内(こころうち)を覗かれたことにより弱点を知り得た藤爛然(ふじらんぜん)は弱点の部位が胴体であることを共有する。

 更に急成長した監視の目芽は万物(ばんぶつ)(もう)()の背中から蔦のような形状で発生し、彼をきつく締め付け拘束する。


「今だよ」


露零(ろあ)!!」


「胴体を狙えばいいんだよね??」


 しかしこのままただ黙ってやられる敵ではない。

 肉眼ではおよそ視認不可能な『かまいたち』で自身を拘束する蔦を切り裂き、彼はそのままその矛先を藍爛然(あいらんぜん)へと向ける。

 しかし攻撃動作から軌道を予測することで回避すると再度、露零(ろあ)に声を掛けることで催促し、氷結したことを確認すると水圧圧縮パンチで凍った万物(ばんぶつ)(もう)()の胴体を一撃で粉砕する。


「お姉ちゃん!」


「これで終いやぁぁぁ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ