表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御爛然  作者: 愛植落柿
第四章『紫翠』
202/276

第四章40話『下剋上等』

 そうして野良(のら)との面会を終えた科厄(かやく)は次に入れ替わりでログハウス内に入ってきた滅者(めつしゃ)達と卓を囲んでいた。

 その顔触れは『トップ』と呼ばれる人物を始め、死懍(しりん)、そして朔夜(さくや)の三人だ。

 理由は対等な立ち位置にいるメンバーで今後の方針を共有するためだ。

 話は野良(のら)滅者(めつしゃ)双方を取り纏めるトップと呼ばれる人物が率先して行う。


「宝玉が揃えばすぐにでも万物(ばんぶつ)(もう)()の復活に移りたい。できるか?」


「再現も済んだことだしもう手筈は整えてあるんだよね」


「仕事が早くて助かる。その後、お前達には別件で先駆けて動いて欲しい。故にこれから話すのはその先についてだ」


喪腐(もふ)先を待たなくてよかったのか?」


「後で話す」


 そう言って彼が卓上に置いたのは一丁のリボルバー銃だった。

 その拳銃からはおどろおどろしいオーラが溢れ出ていて、それが厄物だと瞬時に理解した他の面々は置かれた銃から距離を取る。

 しかし置いた張本人は微動だにせず、彼はそれを御爛然(ごらんぜん)が討伐した魔獣(まじゅう)、キメラの戦利品だと告げる。


「戦利品ってことはそれじゃあ…」


「ああ、これには全弾、計六発が装填してあった。野良(のら)にはとても話せないが俺たちがこれから狙うのは神と呼ばれる連中だ」


「あいつらの境遇を考えればそりゃ…な。だから魔砂(まさ)も末っ子ムーブを止めたんだろ?」


「……そうかもしれないな。ここからが本題だ、心して聞け」


 トップの声色が変わったのをこの場にいる全員が理解した。

 彼が皆に伝えた計画はまず、この世界を創ったとされる『万物(ばんぶつ)(もう)()』と御爛然(ごらんぜん)を潰し合わせること。

 望ましいのは御爛然(ごらんぜん)の勝利によって万物(ばんぶつ)(もう)()と彼が創ったとされる古代樹の撤去を同時に行うことだ。


 万が一、臨んだ結果にならなければ滅者(めつしゃ)が出ることになると話すトップだが例えそうなったとしても相当消耗しているはずだと彼は考えていて、算出した勝率の高さを伝える。

 だがさらにその後の展開を見越している彼は御爛然(ごらんぜん)が戦闘している間に各國に出向き、バイオテロを引き起こす準備を水面下に進めることこそ重要だと考えていて折を見て内部分裂、ひいては同士討ちさせることで休む間も与えず攻め立てるということだった。


古代樹(こだいじゅ)共々亡くなってくれるなら俺達にとっては様々だが奴らの動きが読めない以上、邪魔立てされたら他の計画に狂いが出るがどう考えている?」


「なになに? 私の腕が信用できないって言いたいわけ?」


「そうだ。内容も聞かされていないのにそんな得体の知れないものに俺たちの命運を託すべきじゃない」


「あームカつく! 言わせておけば――」


 仲裁役を一身に引き受けていた喪腐(もふ)の不在に代わって一触触発ムードを感じ取ったトップが二人の間に割って入る。

 そして自身が口止めしているのだと詳細について副長が語らない理由を説明すると二人の仲を取り持ちつつ彼は今一度全員に問う。


「この作戦の担保は俺の命だ。死懍(しりん)だけじゃない、命を(なげう)つのが怖いならここで降りても誰も咎めはしない」


「はぁ…俺が降りると言っても今更止めにはならないのだろう? それにその行動が俺のためでもあるなら致し方ない」


 神殺しという大それたことを最終目標に掲げるだけあり、トップはすでにリスクを承知で行動していた。

 だが部下もそうとは限らない。

 作戦途中で心変わりすることも大いにあり得ると考えた彼はこの場にいる部下全員の気持ちに変化がないか問う。

 そんな彼の問いに最初は揺らいでいた死懍(しりん)も覚悟、そして決意を固めると運命を共にする意思を今この場で宣言する。


「全員の同意も得たことだし方針はそれでいいとして、トップの懸念は御爛然(ごらんぜん)側にもあったよね。そっちはどうなったわけ?」


 そう、彼の懸念はなにも標的である神と呼ばれる者だけではなかった。

 御爛然(ごらんぜん)側に与し、彼らの治める國に身を置く『(さと)』なる人物も彼の警戒者リストに含まれている。

 副長はそんな男性婦人について何一つ言及しないトップに違和感を感じ、つい疑問を口にした。

 すると彼の様子は一変し、自身が指される側の詰将棋をしている気分だと告げるとその人物が『心不全』であり心音から本心を読み解くことは難しいと珍しく弱気な発言をする。


「天敵…か。なら早めに始末しておくか?」


「ダメだ。あれを手にかければ全方位からヘイトを買うことになる。各地に散りばめられた猛獣の枷を外すのが俺たちであってはならないことは皆理解しているだろう?」


「なら俺が記憶を焼きゃあ済むんじゃねぇか? それに常に背中を狙われてりゃこっちの作戦に支障をきたすだろ?」


 話を聞いた上での朔夜(さくや)の発言に心底呆れ果てる他の三人。

 そんな彼に呆れた様子で諭す死懍(しりん)は関わることでかえって状況が悪化するのだと言い聞かせ、触らぬ神に祟りなしだと告げる。

 朔夜(さくや)はそんな彼の言い分をまるで呪いのようにこの世を去った後に訪れる、良からぬ何かしらだと若干ズレた解釈ではあるものの理解するとそれ以上は何も言わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ