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【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法少女でした【コミカライズ】  作者: まるせい


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メイド服を着てみた(ネコミミ尻尾付き)

          ★


 テレサは混乱していた。

 自分の部屋に戻ると、ベッドの上にメイド服があったからだ。


(なぜここにメイド服が?)


 摘まみ上げてみると、フリルあしらえ胸元を強調したメイド服で、スカートの丈が短く妙にいかがわしい。使われている生地は高級品で滑らかな触り心地をしていた。


 こんなことをするのはガリオンに違いない。目的はいつも通りのいやがらせだろう。


 そう考えたテレサは即座にそれを燃やそうとするのだが……。


(まってください。だとすると妙ですね?)


 日頃からセクハラまがいの行動を繰り返すガリオンだが、テレサにちょっかいを掛ける時は手を凝らしてくる。


 単純にメイド服を置いておくだけというのは目的もはっきりしない上、着なければ済むだけの話だ。


(もしかしてガリオンの狙いは……)


 テレサはアゴに手を当て、彼との会話をシミュレーションしてみる。


『よお、テレサ。俺が買ったメイド服を知らないか?』


『それでしたら、なぜか私の部屋にあったので燃やしましたが?』


『何っ⁉ あれを燃やしたのか……。高かったのに、持ち主の許可もなく燃やすとは何てことなんだ……』


『えっ? だ、だって……あんないかがわしい衣装を置いておく方が悪いですよ』


『そうは言うが、別にお前さんに「着ろ」と強要したわけでもないだろ? それなのに燃やすのはやりすぎじゃないか?』


『……確かにそうですけど、ではどうすれば許していただけますか?』


『そうだな……。これを着てくれるなら許してやらんでもないが』


 そこでガリオンは厭らしい笑みを浮かべ、とても口では言い表せない露出の激しい衣装をテレサに渡してきた。


 テレサは首をぶんぶんと横に振ると、その想像を振り払った。


(危ないところでした。まさかこれを燃やさせるのがガリオンの手だったとは)


 一見すると何も考えていないように見えるガリオンだが、テレサにセクハラをするときは未来予知に近い読みを見せることある。


 だとすると、このまま思考の渦に巻き込まれるともっときわどい衣装を身に着けさせられるかもしれない。


 テレサは寸前のところで思いとどまると、ふたたび考え始める。


 これはガリオンからの挑戦状なのだ。ただ見過ごすだけでは駄目で、ガリオンの思考を読み切った上で策を躱さなければならない。


 何か手掛かりがないかとメイド服を見回していると、服の下に何かが置かれていることに気付いた。


(これは⁉)


 ガーターベルトと白いネコミミヘアバンド。さらには尻尾まであった。


(この衣装にこの装飾まで、ガリオンはそこまで私にこれを着せたいのですか?)


 これまでも散々『エッチ』『変態』と罵ってきたが、こういう自分の趣味を全開で押し付けてきたことはなかった。


 常にテレサの様子を窺い、あくまで自主的に行動するように仕組んできたのだ。


(ガリオンがそんな風に思ったところで見せてあげる理由がありませんけどね)


 ふと、もしこれを着た時のガリオンがどんな顔をするのか気になった。


 あくまで見せるつもりはないのだが、身に着けてみることでガリオンの思考を読むことができるかもしれない。


(やむを得ませんね。この部屋から出なければガリオンに見せることにはなりませんし、サイズの確認もしないといけませんから)


 来ている服を脱ぎ捨て、メイド服を身に着け、ネコミミヘアバンドと尻尾を付けてみる。


(着心地は良いですね、耳と尻尾も自然に見えます)


 衣装はテレサの身体にピッタリだった。鏡の前に立ち、おかしなところがないかくるりとターンして確認する。


(少しスカートが短すぎるのと、胸元が強調されているのは良くないですね。やはりガリオンはエッチです)


 もし今、自分がこれを着ていることを知ったらガリオンはどうするのだろう?


 そんな思考を浮かべながら勝ち誇った笑みをテレサは浮かべる。


 たとえ察知しても、ガリオンが強引に部屋に入ってこないと信頼しているからだ。


(だけど、この耳と尻尾の選択は……。もしかして彼は猫が好きなのでしょうか?)


 テレサは鏡の前で屈むと胸元を強調しつつ猫のポーズを取って見せる。そして口を動かし……。


(にゃーん)


 当然声は出ないのだが、傍から見ると可愛らしい子猫そのもの。


(わ、私は一体何を……?)


 気が付けば、メイド服を着て猫のポーズをとっていた事実に震撼する。


 テレサが我に返った瞬間……。


「私としたことが、御客様の部屋に衣装を置きっぱなしにするなんて……」


 ガチャリとドアが開き人が入ってくる。この宿の娘で食堂の給仕をしている。


「えっ?」


 給仕の娘の声が聞こえたがテレサは猫のポーズのまま固まっている。お互いの目がバッチリ合い、給仕の娘は「ニヒッ」と笑うと……。


「お邪魔しました。そちらの服は後ほど取りに来ますので、御自由に使ってください」


 実はガリオンの策略ではなくテレサの考えすぎで、給仕の娘がメイド服を置き忘れただけだった。


 この後、しばらくして我に返ったテレサは、自分の恥ずかしい格好を見られたことで引き込もり、枕に顔埋めるのだった。


          ★

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに作者が書きたかったから書いたみたいな、本編と全く関係ない感じの話好き。
[一言] バニーさんも置いておかないとね? ガリオン、頑張れ。 全ての力(知恵)を振り絞ってがんばるんだっ!
[一言] 策士、策に溺れる……… いや、ただのポンコツか………
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