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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
3話 雨のち晴れ

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3 暇つぶし

翌日、またしても朝から一日雨である。

 この日は少し早く授業が終わる日で、またもや清水の車に乗せてもらって登校した郁也は、「職員会議をこなしたら帰りますから」という清水を待って、コンビニにいることにした。


 ――学校って、暇つぶしが難しいし。


 暇を潰すのであれば図書館という手もあるのだが、明らかに図書館の係の生徒に心理的ストレスをかけているのがわかったので、かなり早い段階で暇つぶし場所からは外していたりする。

 それで言うと、学校近くのコンビニにはイートインコーナーがあるし、漫画雑誌でも買ってそこで読んでいれば邪魔にならない、と思う。

 清水にもそう伝えてあって、職員会議が終われば連絡を入れるというので、その連絡を貰ってからコンビニ前に出ていればいいだろう。

 というわけで、郁也はカフェラテと三つ入りの抹茶大福と漫画雑誌を買って、窓ガラスの方に向けて設置されているイートインコーナーに居座る。

 郁也がカフェラテをチビチビ飲み、抹茶大福をモグモグしながら、漫画雑誌をペラペラと捲っていると。


≪あ~、もうちょいめくるの待って!≫


脳内でポン助が雑誌のページめくりに待ったをかける。

 ポン助も漫画を読みたいらしが、漫画を読むタヌキとはシュールな絵面だ。

 そうして一人と一匹で読むせいで時間がかかり、ようやく漫画雑誌の後半に差し掛かっていると。


 ブブブ!


 鞄の中のスマホが震えた。


「清水先生からだ」


文面を見れば、職員会議が終わったらしい。

 郁也は思ったよりも早かったなと思いつつ、まだ食べていない抹茶大福の残り一個と、漫画雑誌を鞄に仕舞いながら、ふと窓ガラスの外に目をやると。


「あれ?」


コンビニの窓ガラス越しに、赤い傘を差した子どもが見えた。


 ――あの子だ。


 昨日と同じ、赤い傘と水色の服を着た子どもが、昨日と同じ場所に立っていた。

 あれからなんとなく気になっていた郁也は、コンビニを出てその子どもへと駆け寄った。


「ねぇ」


郁也が声をかけると、子どもはまたもや驚いた様子で振り向いた。


「あ……」


そして郁也を覚えていたのか、ちょっとホッとした顔になる。


「昨日、あれから家に帰れた?」


郁也が尋ねると、その子どもはしょんぼりと下を向いて、ぐっと唇をかみしめている。


「え、どうした?」


 ――帰ってないとか、ないよな……?


 子どもの反応に、郁也は慌てる。

 この子どもは薄汚れてないし、どこか野外で夜を明かした風には見えない。

 けれどもしかしたら、なんらかの事情で家出した子どもなのだろうか?


「お腹すいたりしてないか?

 あ、これ食べる?」


郁也はさっき仕舞った抹茶大福の存在を思い出すと、鞄から取り出してその子どもへと差し出す。


「……食べていいの?」


「もちろん、食べていいよ。

 あ、俺の食べ残しでごめんね?」


開封前でないことを謝ると、その子どもはフルフルと頭を横に振った。


「……おそなえ、うれしい」


そう言ってその子どもは抹茶大福を受け取り、パクリと食べる。


 ――おそなえ?


 郁也は変な事を言う子どもだと首を傾げた。


「昨日もここにいたけど、誰か待っているのか?」


郁也が尋ねると、子どもは抹茶大福をゴックンと飲み込んで答える。


「……あのね、ヒヨリが来ないの。

 ずっと待っているのに、まだ来ないの」


そう話す子どもは、とても悲しそうな顔だ。


「えっと、ヒヨリっていう名前のお友達を、ここで待っているのかな?」


郁也がそう尋ねるのに、その子どもはコクリと頷く。


「なんで来ないのかなぁ?

 僕、どうすればいいのかなぁ?」


「えっと、その……」


ウルウルした目で聞いてくる子どもを前に、郁也がオロオロしていると。


≪ありゃりゃ、こりゃ困ったねぇ≫


脳内のポン助が、珍しく茶化すでもなく、真面目な調子でそう告げる。


(困るのか?)


≪困るよぉ、だって……≫


 パパァン!


 その時、車のクラクションが響く。


「どうしました?」


コンビニの駐車場にいつの間にか停まっていた車の窓から、清水が顔を出していた。

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