2 おかしな子ども
思えばコンビニなんて、こちらへ引っ越してから初めて入ったかもしれない。
郁也は新鮮な気持ちで入店した郁也は、なんとなくスィーツコーナーへと足が向く。
≪うひゃ~、アイス! アイスクリーム食べよう!≫
脳内でポン助が騒ぐが、生憎と郁也は雨で冷えるせいでアイスを食べたい気分ではない。
それは雨が上がってもっと暑くなった時に言ってほしい。
にしても、ポン助はアイスクリームを知っているのか。
グルメなタヌキである。
――あ、シュークリームの新製品だ。
レモン風味クリームのシュークリームが目にとまり、郁也の手が自然と伸びる。
これと、カフェラテを買って、学校の学食で食べていようと決めて、早速レジへと向かう。
レジの店員は郁也の強面ぶりにビビっているようではあるが、仕事だからなのか最後には「ありがとうございました」と笑顔で見送ってくれた。
その笑顔をちょっぴり嬉しく思い、こうしておやつを買ってホクホク顔で店を出ると。
「あ」
郁也はコンビニ前の歩道にボーッと立っている人影に気付く。
あれは、今朝清水の車の中から見た、あの子どもではないだろうか?
赤い傘と水色の服に見覚えがある。
その様子が、悲しそうな、途方に暮れているように見えて、郁也はなんとなく目が離せない。
≪あれぇ~? まだいるぅ≫
ポン助のそんな声がする。あの子どもをポン助も知っているということは、寝ているフリをして見ていたのかもしれない。
とにかく、気付いてしまっては知らんぷりをできなくなった郁也は、「泣かれるか?」と思いつつも、その子どもの方へを歩み寄る。
「どうしたんだ?」
郁也が声をかけると、その子どもはパッとこちらを見ると、とても驚いた顔をした。
我ながら自分を見て泣きも逃げもしないとは、ちょっと変わった子どもかもしれないなんて、郁也は考えてしまう。
「……今、僕に話しかけたの?」
その子どもが恐る恐るな調子で聞いてきたのに、郁也は「当然だ」という風に頷く。
他には誰もいないのだから、この子ども以外の誰に話しかけるというのだろうか?
――やっぱり、変な子だなぁ。
郁也は内心で首を捻りながら、その子どもに尋ねる。
「どうかしたのか? 迷子か?」
これに、子どもはしょんぼりとうつむく。
「……帰り道、わかんなくなっちゃった」
そう言った子どもはシクシクと泣き出してしまう。
――やっぱり泣いた! いや、でもちょっといつもと違う、どうしよう!?
いかんせん子どもとのコミュニケーション不足な郁也は、ここからどうすればいいのかわからずに、オロオロとしてしまう。
「えっと、どっちから来た?」
「……ぐすっ、あっち」
聞いた郁也に、子どもが泣きながら指した方向は。
――空?
高層タワーマンションから来たとか、飛行機で来たとか、そういうことなのだろうか?
子どもの説明は意味不明なのだな、と郁也は戸惑う。
とりあえずここにいても解決しないだろうし、交番まで連れて行くかと考えていると。
ブウゥーン、バシャァァン!
偶然、車が車道端にある水たまりを引っかけたせいで、こちらに盛大な水飛沫が襲い掛かる。
「うわっ!?」
とっさに傘でガードしたものの、それでも膝から下がびしょ濡れで、グショグショしているスニーカーが気持ち悪い。
そして、自分の隣には子どもがいたことをすぐに思い出す。
「平気か、濡れてない!? って、あれ?」
けれど、郁也が振り向いた先に、あの子どもはどこにもいない。
今の、目を放した一瞬の隙に、どこかへ行ってしまったらしい。
周囲をキョロキョロとするが、赤い傘も水色の服も、どこにも見えない。
――足が速い子だなぁ。
郁也は感心しながら、コンビニで買った商品が無事だったことにホッとしつつ、学校へと戻ったのだった。




