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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
3話 雨のち晴れ

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2 おかしな子ども

思えばコンビニなんて、こちらへ引っ越してから初めて入ったかもしれない。

 郁也は新鮮な気持ちで入店した郁也は、なんとなくスィーツコーナーへと足が向く。


≪うひゃ~、アイス! アイスクリーム食べよう!≫


脳内でポン助が騒ぐが、生憎と郁也は雨で冷えるせいでアイスを食べたい気分ではない。

 それは雨が上がってもっと暑くなった時に言ってほしい。

 にしても、ポン助はアイスクリームを知っているのか。

 グルメなタヌキである。


 ――あ、シュークリームの新製品だ。


 レモン風味クリームのシュークリームが目にとまり、郁也の手が自然と伸びる。

 これと、カフェラテを買って、学校の学食で食べていようと決めて、早速レジへと向かう。

 レジの店員は郁也の強面ぶりにビビっているようではあるが、仕事だからなのか最後には「ありがとうございました」と笑顔で見送ってくれた。

 その笑顔をちょっぴり嬉しく思い、こうしておやつを買ってホクホク顔で店を出ると。


「あ」


郁也はコンビニ前の歩道にボーッと立っている人影に気付く。

 あれは、今朝清水の車の中から見た、あの子どもではないだろうか?

 赤い傘と水色の服に見覚えがある。

 その様子が、悲しそうな、途方に暮れているように見えて、郁也はなんとなく目が離せない。


≪あれぇ~? まだいるぅ≫


ポン助のそんな声がする。あの子どもをポン助も知っているということは、寝ているフリをして見ていたのかもしれない。

 とにかく、気付いてしまっては知らんぷりをできなくなった郁也は、「泣かれるか?」と思いつつも、その子どもの方へを歩み寄る。


「どうしたんだ?」


郁也が声をかけると、その子どもはパッとこちらを見ると、とても驚いた顔をした。

 我ながら自分を見て泣きも逃げもしないとは、ちょっと変わった子どもかもしれないなんて、郁也は考えてしまう。


「……今、僕に話しかけたの?」


その子どもが恐る恐るな調子で聞いてきたのに、郁也は「当然だ」という風に頷く。

 他には誰もいないのだから、この子ども以外の誰に話しかけるというのだろうか?


 ――やっぱり、変な子だなぁ。


 郁也は内心で首を捻りながら、その子どもに尋ねる。


「どうかしたのか? 迷子か?」


これに、子どもはしょんぼりとうつむく。


「……帰り道、わかんなくなっちゃった」


そう言った子どもはシクシクと泣き出してしまう。


 ――やっぱり泣いた! いや、でもちょっといつもと違う、どうしよう!?


 いかんせん子どもとのコミュニケーション不足な郁也は、ここからどうすればいいのかわからずに、オロオロとしてしまう。


「えっと、どっちから来た?」


「……ぐすっ、あっち」


聞いた郁也に、子どもが泣きながら指した方向は。


 ――空?


 高層タワーマンションから来たとか、飛行機で来たとか、そういうことなのだろうか?

 子どもの説明は意味不明なのだな、と郁也は戸惑う。

 とりあえずここにいても解決しないだろうし、交番まで連れて行くかと考えていると。


 ブウゥーン、バシャァァン!


 偶然、車が車道端にある水たまりを引っかけたせいで、こちらに盛大な水飛沫が襲い掛かる。


「うわっ!?」


とっさに傘でガードしたものの、それでも膝から下がびしょ濡れで、グショグショしているスニーカーが気持ち悪い。

 そして、自分の隣には子どもがいたことをすぐに思い出す。


「平気か、濡れてない!? って、あれ?」


けれど、郁也が振り向いた先に、あの子どもはどこにもいない。

 今の、目を放した一瞬の隙に、どこかへ行ってしまったらしい。

 周囲をキョロキョロとするが、赤い傘も水色の服も、どこにも見えない。


 ――足が速い子だなぁ。


 郁也は感心しながら、コンビニで買った商品が無事だったことにホッとしつつ、学校へと戻ったのだった。

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