21 部員でいいかも
「ところで、あの被害者三人はどうなったんですか?」
郁也は肝心の話について聞く。
「ああ、あの三人はね……」
崎山が語る、あの三人のその後はというと。
女子二人の方は、崎山が抱えて保健室へ連れて行った後にすぐに目を覚ましたけれど、何故そこに自分たちがいたのかわからなかったそうで。
天邪鬼のことも、自分たちが喧嘩をしていたことも忘れてしまっていたという。
ちなみに男子の方は廊下に放置されていたようで、寝ているところを教師に発見された。
教師からすぐに起こされ、具合が悪いのかと心配されるが、そういうことは全くなく。
寝不足て寝ていたのだろうという結論が出されたらしいが、こちらも天邪鬼についての記憶がなかったという。
「不思議だよねぇ~?
橘くんが急に子守唄っぽいのをやり出したのも、ビックリだったけど」
「ははは……」
ポン助の事を知らない崎山は首を捻りつつも、「あれはなんだったんだ?」とそれ以上の追求をしてこない。
郁也はそれが怖い気がするし、助かりもする。
それにしても、天邪鬼に関する記憶が消えているとは、これもポン助の力だろうか?
(すごい、こんなことができるのか)
≪ムッフーン♪ すごい? すごい?≫
ポン助が機嫌良さげにしているのがわかる。
しかしポンコツタヌキなポン助にこんな形で手助けされるとは、意外である。
そんなこんなを話して、やがて崎山が総括する。
「新入部員と怪奇現象を観察できて、オカルト部としては大成功ではないかな!
今日は橘くんのオカルト部デビュー戦だったわけだけど。
今後も励むように!」
崎山からのありがたいお言葉風の意見だが、どうやら彼女の中で、郁也は既に部員であるらしい。
部員であることが嫌なら、ここできちんと異議を主張するべきなのだろうが。
――まあ、いっか。
郁也はそう思ってしまった。
オカルト部なんて、怪しいし怖いけれど、こんな風に郁也を恐れずに真正面から迎えてくれる人と、祖父母以外で初めて出会ったのだ。
もし今後嫌になることがあれば、その時考えればいいのだ。
郁也がそう結論を出した時。
「話は済みましたか?」
それまでプリント採点をしていて話に参加してこなかった清水が、口を挟んできた。
「では、部員が増えて無事に消滅の危機を脱したお祝いを、僕から贈りましょうかね」
「なになに?」
清水の言葉に、愛がワクワク顔になる。
「冷蔵庫を空けてみれば、わかります」
というわけで、愛が早速室内の隅にあるミニ冷蔵庫を見に行く。
「わぁ、ケーキ!」
そう、冷蔵庫に入っていたのは学校の近所にあるケーキ屋の箱だった。
「さぁさ愛、眺めていないでお皿を出してください」
清水もプリントを一旦片付けて、こちらに合流する。
「はぁ~い! 橘くん、そこの机の上のを適当にどかしといて♪」
崎山にそう言われたものの、机の上のものは教師の誰かが置いたものではないだろうか?
勝手に動かすのはどうかと思うけれど、郁也もケーキは食べたいので、できるだけ分かりやすいように隅によけていく。
皿を三つ、机の上に並べられたところで。
「さぁ、新入部員の橘くんに、一番に選ばせてあげよう!」
ズイッと崎山にケーキの箱を差し出された。
郁也は「いいのかな?」と思うものの、崎山も清水も自分を待っているので、早くしないと二人が選べない。
「……じゃあ、これで」
「お、ショートケーキ! 王道だねっ♪」
郁也が選んだケーキを褒めた崎山は、チョコレートのケーキをとった。
残るフルーツタルトが清水のものだ。
「いただきまーす!」
「いただきます」
「はいどうぞ」
崎山を筆頭にして、手を合わせて挨拶したら、早速ケーキを食べる。
――甘い、美味しい……。
甘いものが大好きな郁也は、当然ケーキも大好きだ。
それにしても、この三人でケーキを食べるのが、なんだか不思議だ。
けれど、誰かと笑いあいながら食べるケーキは、格別に美味しかった。




