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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
2話 ひとちがい

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20 反省会

郁也はそれから授業終わりの休み時間に教室に入った。

 クラスメイトの視線が一瞬郁也に集中するものの、すぐに散っていく。

 注目が一瞬だったことに、郁也はホッとしつつ、自分の席についた。


 ――次の授業、なんだったかな。


 郁也が時間割を確認して、教科書とノートを出していると。


「あの」


隣の席の男子から声をかけられた。

 郁也は「なんだろう?」と思ってそちらを見るが、声で反応したら威圧感が増すことを熟知しているので、視線だけで問いかける。

 それでも、隣の男子はビクッと肩を跳ねさせていたが、彼が数回口をパクパクさせてから言ったことは。


「具合が悪かったら、ちゃんと言うといいよ」


ものすごい小さな声だったのだけれど、確かにそう言われた。

 これは、もしかして心配をされているという状況だろうか?

 クラスメイトに心配されるというのは、あまりというか、これまで全くないことである。


「あ、ありがと、そうさせて、もらう」


郁也は驚いたのと嬉しいのとで、だいぶん声が詰まりながらだけれど、なんとかお礼らしきことを言えた。


「お、おう」


郁也にお礼を言われると思わなかったのか、彼は目を見開いてから、プイッと前を向く。


 ――嬉しいな。


 郁也はなんだかほっこりした気持ちで、授業へと臨んだ。

 ちなみにクラスメイトからは「きっと抗争で負った傷が深かったんだ」「それをあんな平気そうな顔をして、超人だ」という話が囁かれ、ある種の尊敬の念が集まっていたりする。

 見当違いではあるが、クラスメイトとの絆は強まっているようだ。本当に見当違いだが。



それから普通に授業を受けて何事も無く過ごして、やってきた放課後。

 郁也はまた数学準備室へとやってきた。


「すみません、お邪魔します……」


「やっほ、橘くんおっつ~♪」


郁也が恐る恐る戸を開けると、既に来ていた崎山がコーヒーを飲みながら手をヒラヒラと振る。

 清水もいたが、どうやらプリントの採点をしているらしく、こちらを見てニコリとしたら、また机に視線を戻す。


「こっち、こっち」


崎山に席を勧められたので、素直にそこへ座る。


「飲み物はセルフサービスね♪」


「あ、はい」


崎山に言われて、郁也はドリンク類を集めている一角を見るとココアの袋があったので、それを紙コップに入れてお湯を注ぐ。


「今度、マイカップを持ってくるといいよ、エコだし♪」


「はぁ、はい」


郁也がここへ通う事前提の崎山のセリフに、戸惑いつつも頷く。

 こうして郁也が飲み物を作って落ち着いたところで、崎山が「エッヘン!」と咳ばらいをした。


「では、反省会を行います!

 うん、いいねぇ、部活って感じ♪

 アタシ一人じゃあこういうのができなかったんだよねぇ」


崎山が一人で興奮している。

 確かに会議というものは、複数人いて初めて成り立つもの。郁也もそういう場に呼ばれることなどなかったので、もしかしてこれが初会議かもしれない。

 そう気付いてしまうと、なんだかドキドキしてきた郁也である。


「はい橘くん! なにか言いたいことは?」


議長崎山がたった一人の参加者に話を振る。


「……天邪鬼が気持ち悪かったです」


「そうね、アタシもちょっとグロかったかなぁ?

 アレはないよね」


郁也の反省というより感想に、ウンウンと崎山が頷く。

 変身というのは、妖怪漫画とかだとありがちな話なのだが、まさかあれほど気味の悪いものだったとは。

 郁也がそう考えていると、脳内で異論が出た。


≪あれはね、変化が下手くそなの!

 ボクだったらあんなヘボいことしないもん!≫


(そうなのか?)


≪そうなの!≫


ポン助が天邪鬼相手にマウンティングをしているみたいにも思うが、けれど確かに変化はタヌキの得意技というイメージはあるので、ひょっとしたら本当に得意なのかもしれない。

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