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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
2話 ひとちがい

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18 後始末

郁也が崎山に考えがあるのかと視線をやれば、「どうしようか?」と言いたげに困り顔をしている。

 どうやらそこまで考えていなかったようだ。

 清水方を見ても知らぬ顔で、どうにかしようと動く風には見えない。

 そして郁也本人も、先ほどの天邪鬼のグロさがショックで、頭が上手く働かないままだ。


 ――マジでコレ、どうするんだ?


 混沌とした場に、郁也が戸惑っていると。


≪あふぅ、仕方ないなぁ~≫


脳内でポン助が大あくびをしながらそう言った。


(なんとかできるのか?)


≪ウムゥ、このままだとボクにもヘンな被害が出そうだしぃ≫


郁也の問いかけにポン助がそう告げたかと思ったら、グィン! と急激に意識が奥へと引っぱられるのを感じた。

 入れ替わるように、ポン助の気配が表へと追い出される。


「≪うん、ヨシヨーシ≫」


ポン助が郁也の身体で満足そうに頷くと、片腕をパニック中の三人にかざす。


「≪ねむれ~、ねむれ~、イイコイイコ≫」


ポン助がそう唱えると、突如三人はフニャリとその場に崩れ落ちる。


「≪あとよろしく~≫」


するとポン助はそう言ってまた奥へ引っ込み、郁也の意識がグン! と表に押し出される。

 郁也はその引力に酔い気味だ。


「あれ~、ナニナニどういうこと? 寝てる?」


崎山が三人を確認すると、寝息をたてて気持ちよさそうに寝ていた。

 先程のポン助の仕業だろうが、まさかこんな特技があるとは驚きだ。

 ただのポンコツタヌキではなかったらしい。

 崎山が不思議そうに三人を眺めているのに、清水が告げる。


「愛、とりあえず女子二人を保健室に連れて行きましょうかね。

 男子は放置してもいいでしょう」


「ん、オッケ~♪」


軽く返事をした崎山は、なんと両腕に女子一人ずつを担ぎ上げた。

 なんという腕力だろうかと郁也が感心していると、そのままズンズンと歩いていく。

 ここから保健室は遠いと思うが、逞しい限りである。

 その後ろ姿が見えなくなると、清水が「は~、やれやれ」と大きく息を吐いた。


「朝から働いてしまいましたよ。

 それにしても橘くんの中のタヌキは器用ですね。

 コレが『タヌキに化かされる』現象ということでしょう。

 きっと三人ともが起きたら夢現で、なにが起きたかあやふやですよ」


「はぁ……」


清水がポン助のやったことを解説するのに、郁也は生返事をする。


「けどとにかく、これでもう天邪鬼はここには寄り付かないでしょう。

 めでたしめでたしです」


清水のその結論に、郁也は目を瞬かせる。


「……あの、アレって死んじゃったんじゃないんですか?」


てっきりポン助のいうところの「調伏~!」をされたとばかり思っていたのに。

 そう問うてみると、清水はヒラヒラと手を振った。


「そんな面倒をする義理はありません。

 追い出しただけですよ」


「……なるほど」


ではもしかするとあの天邪鬼が今回の仕打ちに腹を立て、やり返しに来る可能性もなくはないわけか。

 郁也としては、来ないことを祈っているしかできない。

 復讐なんてしてもいいことはないので、ぜひ遠くで楽しく生きてほしいものだ。


「じゃあ、本当にこれで解決ですか?」


「そういうことです」


清水に肯定されたことで、郁也は今回の出来事がグルグルと思い出される。

 特に、あの「彼女」が崩れる瞬間の気味悪いことと言ったら……。

 そう考えた瞬間、郁也も色々限界が来ていたのか、精神がプツリと途切れた。

 そして郁也がドタンと倒れたその場には、気を失って伸びているデカいタヌキがいるばかり。


「おやおや、またですか」


清水はそれをモフっと抱き上げる。


「とりあえず、朝から働いたご褒美をコレにしておきましょうかね」


そう独り言を零す清水は、タヌキをムニムニと撫でながら、その場を立ち去っていく。

 残された男子一人は、宣言通りその場に放置された。

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