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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
2話 ひとちがい

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16 二度あることは

そして作戦決行日である、翌朝。

 郁也は今、二人を探して校内を彷徨っている。

 そもそも、天邪鬼もいい加減逃げているのではないだろうか?

 むしろ逃げていてくれたら、この件は楽に終わるのだが。

 こんな郁也の思いに、ポン助が脳内であくび交じりに言う。


≪ふわぁ、朝からねむぅい。あいつらって、面白ければなんでもいいんだよね。

 だから警戒心っていうのが足りないおバカさんなんだぁ≫


(そうなのか?)


≪そーなの、だから昔っから最後には痛い目を見るんだし。

 ちょっとからかってすぐに逃げればいいのに、面白そうなのに弱いんだぁ≫


なるほど、好奇心が逃げ際を消してしまうということか。

 それは確かにおバカかもしれない。ポン助に言われるのだから、たいがいだろう。

 それにこれはたとえ失敗しても、郁也たちに痛手があるわけではない。

 なので気楽に構えていればいいのだが、それでも妙に緊張してしまう。

 そんな風に脳内でポン助と会話しながら、まずは昨日の朝見かけた場所に行ってみようと歩いていたところ。


「……!」


「……!」


 ――あ、いた。


 なんと、同じ場所で同じようにケンカをしていた。

 二人とも、嫌いならば無視すればいいのに、と郁也なんかは思う。

 けれどこうしてケンカし合っているということは、本当は仲良しで、ケンカ別れしたくないという気持ちがどこかにあるのかもしれない。

 そんなことよりも、まずは報告である。

 郁也はスマホを鞄から出すと、崎山に二人を発見したことと場所を、アプリのテキストメッセージで連絡する。

 スマホで文字入力するのに、ドキドキして指先が震える。

 このために昨日、崎山と番号を交換したのだが、実は友達と番号交換なんてこと、人生初だったりするのだ。

 ある意味天邪鬼のおかげで、郁也のスマホの「友人」カテゴリに、記念すべき一人目の名前が登録されたようなものである。

 そう、中学時代には、番号交換するほど仲の良い相手はいなかった。

 悲しいことに。

 故にコミュニケーションアプリなんてものを使うのも初めてである。

 スマホで連絡する相手は祖父母くらいだが、こちらはもっぱら通話で、父母に至ってはあちらから連絡してきたことはほぼ皆無だ。

 逆にこちらから連絡したところで、通じないのが分かっているので無駄なことをしない。

 そんな悲しい過去を振り返りつつ、ドキドキしながら崎山にメッセージを送ると、すぐに可愛い「OK」スタンプが返ってきた。

 あちらはこちらよりも少し先に、通学路を張っていると例の男子に絡みながら通学してくる姿を捉えている。

 彼らに上手く話しかけて、こちらへ誘導してくる手はずだ。

 清水と一緒なので、なんとかうまくこちらへ引っ張ってくることだろう。

 郁也がドキドキしながら待っていると。


 ――あ、移動する!


 ケンカに疲れたのか、二人がばらばらに別れて立ち去りそうになっている。

 ここで解散されたら、計画が失敗してしまう。

 そう思った郁也は。


「あの、二人とも!」


気が付いたら、二人に声をかけていた。


「橘くん、どうしたの?」


あの双子疑惑の女子の方が、郁也の出現に驚きながらもそう尋ねてくる。

 もう一人も、とりあえず足を止めていた。

 これでまずは二人をこの場に留めるという目的は果たした。

 しかし勢いでやってしまい、ノープランである。

 あとはなんとか時間稼ぎをするだけだが、それがまた、口下手な郁也には難しい。


「えと、その、昨日の話で、思い出したことがあって」


「そうなの? どんなこと?」


双子じゃなかった女子の方が尋ねてくるが、当然思い出したことなどなにもない。


「うん、あの、あ、二人って長い付き合いなの?」


郁也がなんとか話題をひねり出すと、彼女たちは一瞬お互いを見つめ合う。


「……そうね、小学校の頃から一緒ね」


「家が近所で、よく一緒に遊んでいたのよ」


「そうなんだ、仲良しって羨ましい」


郁也が心底からの言葉を漏らすと、二人して下を向く。


「で、思い出した話って?」


そして話が最初に戻ってしまう。なんとか郁也なりに会話をつなげていたのだが、限界がきてしまった。


 ――崎山先輩、清水先生ー!


 郁也が内心でべそをかいていた、その時。


「職員室は、こっちじゃないですよね?」


「あまり人に聞かれたい話じゃないんで、こちらでいいんですよ」


清水の声が聞こえてきた。

 これぞ救いの神の声だろう。

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