8 誘われた
「えっと、あんまり怖い部活は、ちょっと……」
郁也はポン助の泣き声を聞きながら、断りのセリフを捻り出そうとする。
「え~? 怖いことなんてないよぅ?
ねえ快斗くん」
「僕を頼らないでください、勧誘は自力で頑張るように」
崎山が話を振るが、清水はお茶を飲みながら冷たく返す。
「なんでよぅ、顧問じゃないの!」
ぷうっぅと頬を膨らませて文句を言う崎山に、郁也は「え?」と驚く。
「清水先生が、顧問なんですか?」
「書類上はね。
学校側からなにか部活を受け持つように言われたので、楽そうで都合がよかったので」
理由が非常にドライなものだった。
けれど逆にホッとしたりもする。
坊主がオカルト部顧問だなんて、本気の物の怪討伐を目指していると考えるではないか。
「ちなみに、部員はコイツ一人です」
「そうなんですか!?」
清水の暴露に、郁也はさらに驚く。
たった一人の部員で、果たして部活と言えるのだろうか? と謎に思っていると。
「ね? ね?
橘くんがいてくれたら、お取り潰しを回避できるんだよぅ!」
やはりその問題はあがっているようだ。
崎山が泣き言を言ってきた。
「……潰れるんですか?」
「部活はどんなものであれ予算が組まれますからね。
活動実態が無ければ整理対象になるのは必然です」
清水に確認すると、リアルな事情を教えられた。
言われれば確かにそうだ。
「ボランティアだと思って!」
崎山から両手を合わせて拝まれるが、それでも郁也としては気が向かない。
「ねぇ~、やろうよぅ!
それに、誰かとオカルト話で盛り上がりたいんだよぅ!」
「いや、でも、オバケを殴るのはちょっと……」
とうとう駄々こねモードになってきた崎山に、郁也は本音を口にする。
これに、崎山が目をパチクリとさせた。
「……? なにそれ?」
そして郁也の横で、清水が一人笑いを堪えていた。
「橘くん、愛のイメージでそうなったのでしょうが。
この部活はそんなことをしませんよ。
オカルト小説や漫画を読んだり、たまに民間伝承で興奮して本物を見たがったり、その程度のうっすらとした活動内容です」
「だって私、快斗くんみたいに霊感ナイからねぇ♪
ズルいよね快斗くんみたいなのって、一度幽霊とかオバケって見たいものじゃない?」
「え、いや」
自分の中にまさに化けタヌキがいる郁也なので、崎山のその好奇心が怖い。
「甥っ子として援護しますと、愛は悪い奴ではないですよ。
あまり裏表がありませんし、付き合いやすい部類かと思います」
「甥っ子言うな!
ね? 一緒にオカルトについて探求しよう?
世の中の不思議に体当たりしようよ♪」
清水の援護射撃に崎山が噛みつきつつも、郁也にグッと迫ってくる。
――近い、近いから!
世の中の不思議については、郁也は既に一件体当たり済みであるのだが。
けれど、この崎山という女子については好感がもてた。郁也は真っ直ぐに目を見て会話されることは、特に同年代だとあまりない。
それに部活というものはいかにも「青春しています!」という感じがして、中学の頃から憧れている。
運動部は向いてないし、文化部からは断られるのだから、この誘いはもしかすると唯一の希望なのではないだろうか?
「あの、試しに、部室へ行ってみるだけなら」
「本当!?」
郁也が恐る恐る口にした答えに、崎山がキラキラ笑顔になる。
「うんうん、そうだよね、お付き合いだって『まずはお友達から』っていうのが定番なんだし、お試しって大事よね!」
崎山がそう話しながら、郁也の両手を握ってブンブンと上下に振る。
「じゃあ、放課後に部室に来て! あ、部室は数学準備室ね♪」
こうして、郁也は放課後にオカルト部とやらに行ってみることとなった。
≪ボク、ボコボコにされない?≫
ポン助はまだ心配しているが、ポン助がボコボコにされるとは、すなわち郁也がボコボコにされるわけで。
そうなったら速攻で逃げよう。




