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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
2話 ひとちがい

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8 誘われた

「えっと、あんまり怖い部活は、ちょっと……」


郁也はポン助の泣き声を聞きながら、断りのセリフを捻り出そうとする。


「え~? 怖いことなんてないよぅ?

 ねえ快斗くん」


「僕を頼らないでください、勧誘は自力で頑張るように」


崎山が話を振るが、清水はお茶を飲みながら冷たく返す。


「なんでよぅ、顧問じゃないの!」


ぷうっぅと頬を膨らませて文句を言う崎山に、郁也は「え?」と驚く。


「清水先生が、顧問なんですか?」


「書類上はね。

 学校側からなにか部活を受け持つように言われたので、楽そうで都合がよかったので」


理由が非常にドライなものだった。

 けれど逆にホッとしたりもする。

 坊主がオカルト部顧問だなんて、本気の物の怪討伐を目指していると考えるではないか。


「ちなみに、部員はコイツ一人です」


「そうなんですか!?」


清水の暴露に、郁也はさらに驚く。

 たった一人の部員で、果たして部活と言えるのだろうか? と謎に思っていると。


「ね? ね?

 橘くんがいてくれたら、お取り潰しを回避できるんだよぅ!」


やはりその問題はあがっているようだ。

 崎山が泣き言を言ってきた。


「……潰れるんですか?」


「部活はどんなものであれ予算が組まれますからね。

 活動実態が無ければ整理対象になるのは必然です」


清水に確認すると、リアルな事情を教えられた。

 言われれば確かにそうだ。


「ボランティアだと思って!」


崎山から両手を合わせて拝まれるが、それでも郁也としては気が向かない。


「ねぇ~、やろうよぅ!

 それに、誰かとオカルト話で盛り上がりたいんだよぅ!」


「いや、でも、オバケを殴るのはちょっと……」


とうとう駄々こねモードになってきた崎山に、郁也は本音を口にする。

 これに、崎山が目をパチクリとさせた。


「……? なにそれ?」


そして郁也の横で、清水が一人笑いを堪えていた。


「橘くん、愛のイメージでそうなったのでしょうが。

 この部活はそんなことをしませんよ。

 オカルト小説や漫画を読んだり、たまに民間伝承で興奮して本物を見たがったり、その程度のうっすらとした活動内容です」


「だって私、快斗くんみたいに霊感ナイからねぇ♪

 ズルいよね快斗くんみたいなのって、一度幽霊とかオバケって見たいものじゃない?」


「え、いや」


自分の中にまさに化けタヌキがいる郁也なので、崎山のその好奇心が怖い。


「甥っ子として援護しますと、愛は悪い奴ではないですよ。

 あまり裏表がありませんし、付き合いやすい部類かと思います」


「甥っ子言うな!

 ね? 一緒にオカルトについて探求しよう?

 世の中の不思議に体当たりしようよ♪」


清水の援護射撃に崎山が噛みつきつつも、郁也にグッと迫ってくる。


 ――近い、近いから!


世の中の不思議については、郁也は既に一件体当たり済みであるのだが。

 けれど、この崎山という女子については好感がもてた。郁也は真っ直ぐに目を見て会話されることは、特に同年代だとあまりない。

 それに部活というものはいかにも「青春しています!」という感じがして、中学の頃から憧れている。

 運動部は向いてないし、文化部からは断られるのだから、この誘いはもしかすると唯一の希望なのではないだろうか?


「あの、試しに、部室へ行ってみるだけなら」


「本当!?」


郁也が恐る恐る口にした答えに、崎山がキラキラ笑顔になる。


「うんうん、そうだよね、お付き合いだって『まずはお友達から』っていうのが定番なんだし、お試しって大事よね!」


崎山がそう話しながら、郁也の両手を握ってブンブンと上下に振る。


「じゃあ、放課後に部室に来て! あ、部室は数学準備室ね♪」


こうして、郁也は放課後にオカルト部とやらに行ってみることとなった。


≪ボク、ボコボコにされない?≫


ポン助はまだ心配しているが、ポン助がボコボコにされるとは、すなわち郁也がボコボコにされるわけで。

 そうなったら速攻で逃げよう。

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