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Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。  作者: 右薙 光介
第一部

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第42話 帰還と暴言

今日の更新です('ω')!

 改めて状況と情報を全員で整理した俺達は、相談の上……帰還することを選択した。

 これはあらかじめいくつか立てておいた方針の内の一つでもあり、俺としては初挑戦(ファーストアタック)の成果としては充分であると思う。


 第二階層の階段エリアまで大きな問題なく進むことができたし、戦闘でも苦戦することはなかった。消耗も軽微で、このまま奥に進んでもいけるだろう。

 そういった成功体験を得たうえで、まずはいったん戻る。

 今回はまさに様子見だ。『無色の闇』をまず肌で感じると言うのが課題だった。


 それに、未確認の魔物(モンスター)との遭遇、『黒い箱(ブラックボックス)』の獲得も、報告に値する情報だ。

 目的は異常の調査を行うことで、スピーディな攻略ではない。

 欲張って張り込んだところでリスクを抱え込むだけだ……という意見の一致を全員で見た。

 みんな成長している。


魔物(モンスター)の再出現はまだみたいだな」


 帰路をたどりながら、いまだ残された魔物の血痕を確認する。

 第二階層の階段に達するのに休憩も入れて約五時間。魔物の再出現はどんなに早いダンジョンでもだいたい十二時間ほどだ。

 『無色の闇』の再配置時間は配信では確認できなかった。

 もしかするとダンジョンの構成を変える時にまとめて再配置されるのかもしれない。


「噂に聞いていた構成の変化もないみたいっす。このまま出口までいくっす」


 道程をきちんと覚えているらしいネネが、俺達を先導してくれる。

 小さいながら頼りになる背中だ。


 チグハグな風景が続く『無色の闇』の中を歩きゆくと、見覚えのある石造りの風景が増えてきた。


「出口っす」


 ネネの指さす先、少しばかりの通路を抜けた先……だだっ広い地下空洞へと俺達は戻ってきた。

 まだ薄暗いが、やはりダンジョンの中とは違って圧迫感は薄い。

 息を吐きだして周囲を見る。


「……!」


 さすがにベンウッドはもう居なかったが、代わりとばかりに別の一団が、そこにいた。


「ユーク……!」


 こちらを睨みつける『サンダーパイク』の面々と、その背後には見知らぬ者が二人。

 サイモンたちも一時加入(スポット)を募ったようだ。


「見損なったぞ、ユーク。僕たちの依頼を横取りしようとするなんて」

「誤解を招く言い方をするな。俺達は正式な依頼を国から受けてやっている」

「なら、どうして僕の要請を断った! ここに潜るなら受ければよかっただろう!」


 どうやら頭の悪い幼馴染は、ほんの一か月前の話すらすっぽりと抜け忘れてしまっているようだ。脳によく滑る油でも塗りたくっているのだろうか。


「お前の要請とやらは、一時加入(スポット)を装ったただの引き抜き工作だろう? これは『クローバー』の受けた国選依頼(ミッション)だ。一緒にするな」

「だったらなぜ僕に知らせない!? 協力するべきだろ!」

「そんな義理はない」


 突き放すような俺の言葉が癇に障ったのか、サイモン以外の『サンダーパイク』が前に出てくる。


「おい、ユーク……! てめぇ、舐めんのもたいがいにしろよッ」

「反省なさい。あなたには感謝の気持ちというものが足りません」


 がなるバリーたちを諫めるようにして抑えたサイモンが俺に向き直る。


「まあ、いい。これからは同じ仕事をする仲間だからね。これまでの事は水に流してやろうじゃないか」


 どうやっても上から目線でしか話せないのか? お前ってやつは。

 湿気た笑みを浮かべながら、右手を差し出すサイモン。

 握手なんて絶対にごめんだぞ……と思ったが、サイモンの口から出た言葉は斜め上をいっていた。


「さ、配信データと拾得物を出してくれ」


 当たり前のように言うサイモンに思わず固まる。

 何を言っているのかなかなか理解できずに、それが言葉通りの意味であると思い当たるまで、ゆうに五秒はかかった。


「は?」


 ……それで、結局出た言葉がこれだ。

 俺というやつは、少しばかり緊急時のボキャブラリーが足りないらしい。

 しかし、それも今回は仕方ないだろう。サイモンの言っていることが全く理解できないのだから。


「『連合(アライアンス)』になるんだから、情報共有や拾得物の分配は当たりまえだろ? お互いに無駄なく調査を進めて行こうじゃないか」


 『連合(アライアンス)』はいくつかのパーティが集合して作る、パーティのパーティみたいなものだ。

 主に超大型の迷宮などを攻略する際、疲労や消耗を分散したり、戦力を増強する目的で結成される。


 ……さて、そんなものになる提案をされた覚えも、入ると返事をした覚えもないんだが。


「お前らCランクパーティと合同にしてやるってよ」

「よかったですね。よく働くように」


 バリーとカミラがサイモンの意図を汲んで、愉快気に笑う。

 本当お前らって頭の悪いサイモンを支える、察しのいいクズだよな。

 ……おっと、心がすさんでいる。いけないな。


「君たちよりも僕らが報告した方が効率がいいだろ? さ、出してくれ」

「ふざけないでくださいッ!」


 俺が口を開くよりも先に、シルクが声を上げた。


「仮にもAランクパーティがたかりの様なマネをして恥ずかしくないんですか!?」


 シルクの声にバリーとカミラが顔を見合わせて鼻で嗤う。


「おいおい、野蛮な“黒エルフ”が生意気言ってんじゃねぇぞ」

「汚らわしい黒き邪神の使徒よ。口を慎みなさい」


「──黙れッ!」


 大空洞に俺の声が反響した。

 心無い罵声に立ち尽くして涙をためるシルクを抱き寄せて、『サンダーパイク』を睨みつける。


「シルクは俺の大切な仲間(かぞく)だ……侮辱するな」


 半笑いのサイモンが、半歩前に出る。


「おいおい、ユーク。たかだか蛮族じゃないか。何をムキになってるんだ?」

「失せろ、サイモン。『連合(アライアンス)』だと? 寝言は寝て言え。お前らの仲間になるなんて反吐が出る」

「な……っ」


 目を白黒させるサイモンと、苛ついた様子のバリーとカミラ。


「お前たちに、一切協力はしない。……行こう、みんな」


 肩を震わせるシルクを支えたまま、出口へと向かう。

 背後からは、マリナ達が殺気じみた気配を放ちながらついてきているのがわかった。

 飛び掛かりたいのは俺も一緒だ。

 ……だが、まだ〝配信中〟だったからな。よく耐えてくれた。


 冒険者ギルドに続く長い長い階段を上りながら、俺は『ゴプロ君』に顔を向ける。


「最後にトラブルがありましたが、初回攻略はこれで終了です。〝配信〟終了」


 シルクと仲間たちに顔を向けて、俺は無理やり笑顔を作る。


「さあ、帰ろう。我が家に」


 こうして、俺達の『無色の闇』の初挑戦は終わった。


いかがでしたでしょうか('ω')

書いてて自分でちょっとへこんだ……


「頑張れ!」「続きが気になる!」って方は是非、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援いただければ幸いです!

よろしくお願いいたします。

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