桜の木の下で
「はーい、涼ちゃんあーん」
「あーん」
私の制止もむなしく彼女ら二人のいちゃいちゃは店員さんが頼んだものを運んでくるまで続いた。
しかし店員さんは私たちの制服を見てなんだか納得したような顔をしていたところを見ると学校外でも『百合の花園』って呼び名は通じているのかもしれない。
「あ、そういえば涼ちゃんがさっき言ってた『運がいい』ってどういうこと?」
さっき涼ちゃんはケーキを見ながら言っていたが、なにか特別なものはなかった気がする。
「実はね、ここの喫茶店ねほんの一週間前にテレビで紹介されちゃってさ、最近ここのケーキ午前中には完売しちゃうんだ、今日はまだ残ってたからよかったけど残ってなかったからどうしようかと思ってさ」
「そういうことだったんだ」
確かに、涼ちゃんがお勧めと言って頼んでくれたケーキはテレビで紹介されても申し分ないくらいおいしいものだった。
「この商店街には買い物とかでよく来るけどこんな雰囲気の喫茶店があるなんて思わなかったよ」
「そうでしょ?だから真奈ちゃんにも大切な人ができたら一緒に来ればいいと思うよ!」
涼ちゃんの言葉に口に含んだコーヒーを吹き出しそうになるがこらえることには成功した。
「た、大切な人って…そんな人まだいないよ!そもそもまだ入学して1日目だよ!?」
「大丈夫だよー真奈ちゃん、そうやって『まだ』って言ってた人がその二日後くらいには相手を見つけてたっていう有名な話が学園にはあるらしいよー?」
「え?」
なんとも聞き捨てならない話をさらっと口にする倞ちゃん、それに便乗するように涼ちゃんが続く
「学校にいるときに言ったじゃん、『この学園に入学すると卒業までにはほぼ100%の確率で女の子同士で結ばれる』ってさ」
「うーん…私に大切な人ねぇ…」
ふと、私と『大切な人』が目の前の二人のような雰囲気になっているのを想像するが、どうもそんな感じに私がなるようには思えなかった。
「まーまー、真奈ちゃんが言うとおりまだ入学一日目なんだから焦ることもないと思うよー?」
「そうそう、長い学園生活ゆっくりやっていけばそのうち倞ちゃんのようなカワイイ娘と出会えるから大丈夫だって」
喫茶店からの帰り際二人と別れる時にこんなアドバイスのようなモノをもらった、確かに入学して一日目でそんなこと考えても仕様がないと思い私は家路に就いていた。
近道ついでと私は近くの公園を抜けて行く途中に私は公園に植えられている大きな桜の木のところに人が佇んでいるのに気がついた。
よく見ると私と同じ制服を着た長いポニーテールの女の子だったが、桜の木の方をじっと眺めているからどんな顔かが分からない。
「………?」
ふと、私の視線に気づいたのか女の子がこちらを向いた
「あ……」
彼女と目が合った、一瞬の間、しかし私には永遠にも思えた時間
桜の花びらが散るなか佇む彼女はどこか神秘的で他に例える言葉がないくらいに綺麗だった、この人となら今日知り合った二人のような関係になってもいいと思えるくらいに。
どれくらいの時間が経っただろうか、惚けた視線を送る私に彼女がゆっくりとこちらに近づいてくる。
気がつけば彼女は私の目の前にいた、近くに来てやっとわかったが彼女のほうが少し頭一つだけ背が高い。
「………ふぇ?」
そして気の抜けた声をあげる私に対して彼女は
何も言わずにいきなり私の唇を奪ったのであった―。
お久しぶりです。
更新をしばらく放置してしまい申し訳ありません…
何かと忙しく明日やろう、明日やろうと思っていたらこんなに期間が空いてしまいました…。
しかし、今回の話でやっと物語のほうを動かしてゆけそうです
感想、アドバイス等ありましたらドンドン受け付けておりますのでよろしくお願いいたします。




