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親しき仲にも…?

学校からほど近い商店街にある音野さん行きつけという喫茶店、コーヒーショップアルテに私たちは訪れた。

店内に入るとコーヒー独特の香ばしい香りが漂ってくる、すこし周りを見渡すと販売のために専用のケースに入れられ保存されている大量のコーヒー豆や食器などの調度品、

そしてなぜか猫や犬などのぬいぐるみまで置いてあるところをみると所謂普通の喫茶店とは少し違うように思える。

「へぇ…喫茶店なのに雑貨とかも扱ってるんだね」

「それだけじゃなくて、そこのギャラリーでよく個人展とかやってるんだよ」

そう言って音野さんが指差した先には作品展示用としてちょうど良い広さのギャラリーがあった。

「どんなのやってるんだろう…?」

「きっとこの時期は私たち向けじゃないと思うな」

近くにあった展示内容の案内をしているポスターを見てみたが、音野さんが言うように私たちのような若者向けというものではなく、どちらかといえば暇を持て余した主婦向けな内容だった。

「これは私たち向けじゃないよね…」

「ま、まあ、次の展示会に期待かなぁ…」

「ねーねー二人ともーそっちも気になるけどさー早く行こうよー、席埋まっちゃうよー?」

と中野さんが私たちの後ろで不満げに声を上げる。

ギャラリーなんて普段お目にかかれないもののおかげで本来の目的を忘れるところだったが、私たちは店内奥の喫茶スペースに移動し空いてる席を探す。

「おや、二人とも運がいいね」

「へ?どういうことー?」

と、音野さんがカウンターの脇に設置されていた冷蔵用のショーケースの中身を指差す。

そこには、まるで宝石と見紛うばかりな色とりどりのケーキが保存されていた。

「わぁ…おいしそう…」

「ここのケーキは美味しいって評判だからね、ほら、ちょうど席も空いたみたいだし座っちゃおうか」

ショーケースの中のケーキに後ろ髪をひかれながら窓際の空いた席に三人そろって座り店員さんが持ってきてくれたメニュー表をながめる。

窓際の席は店の中庭に面していて、中庭のガーデニングが素敵だ、とかちょうどよい具合に日がさしていて心地よい、とかいろいろ見るべきところはあったのだが私も女子のはしくれ、一番気になるのはもちろん。

「ね、ねぇ音野さん!ここのケーキのお勧め教えてもらえないかな!」

「涼ちゃん!涼ちゃん!私が引っ越す前よりもおいしそうなケーキ増えてるよ!」

花より団子にきまっているだろう。

「まあまあ落ち着いてよ二人とも、ケーキは逃げないからまずはゆっくり注文決めちゃおうよ」

興奮する私たち二人を窘める。

「あ、それと決めてるところ悪いんだけどさ皆谷さん」

「ん?なにかな?」

「名前で呼んでいいかな?真奈ちゃんって」

いきなりの提案だった。

「え、別にかまわないけど…なんで急に?」

「私は倞ちゃんのこと名前で呼んでるし倞ちゃんも私のことは名前で呼んでくれてる、折角こうやって知り合うことができたんだからさ、真奈ちゃんも私のこと名前で呼んでほしいなって思ってさ」

「音野さ…」

とっさに名字で呼ぼうとしてしまった私の口は彼女の人差し指で抑えられてしまう。

「名前で、呼んで?」

なんて殺し文句だ…、中野さんが彼女に惚れるのもわかる気がする。

「り、涼ちゃん」

「ふふ、ありがと」

そういって私は涼ちゃんに頭を撫でられる、なんだかとっても恥ずかしい。

「あーずるーい!私も真奈ちゃんに名前で呼んでほしいー!」

「え、えっと、倞ちゃん」

「えへへー、真奈ちゃんに名前で呼んでもらったー」

「良かったね、倞ちゃん」

「あのー?注文お決まりでしょうか…?」

女の店員さんが少し気まずそうに聞いてきたときには、流石の私も恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

注文は涼ちゃんがまとめてしてくれたが、店員さんが戻った後もうつむきっぱなしの私に対して涼ちゃんは

「ごめんね真奈ちゃん、お詫びにこのお店のお勧めのケーキ頼んだからさ」

とちゃんと謝ってくれた。

「ううん、涼ちゃんが悪いんじゃなくてさ、なんていうかその、まるで告白みたいなシチュエーションだったからなんだかだんだん恥ずかしくなっちゃって…」

「ホントにごめん!真奈ちゃんと仲良くなれたからってすごくテンションあがってたから…」

「あはは、女の子と仲良くなるとすぐああいうことするのは涼ちゃんの昔からの悪い癖だからねー、トラブルも絶えなかったんだよー」

「う、それだけは言わないで…」

今度は涼ちゃんが顔をうつむける番になったようだ。

「もう、冗談だからってあんまりそういうことしちゃダメだよー?涼ちゃんには私っていう大切な人がいるんだからさー」

「ごめんね倞ちゃん…」

「えへへー」

なんだか二人の雰囲気が怪しくなってゆく、というかあからさまに二人の物理的な距離が縮まってゆく。

「ちょ、ちょっと二人ともストップ!ストップ!」

流石に公共の場でいちゃいちゃされてはお店側にも迷惑がかかるので私は必死に止めに入るのであった。


どうも4月の頭のほうは忙しくなりがちですね…

ちなみに作中出てくるコーヒーショップは地元にあるコーヒーショップがモデルだったりします。

なんかこうしたほうがいいよーというご意見などありましたらドンドンお願いいたします。

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