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ぐうたらエルフののんびり異世界紀行 ~もふもふと行く異世界食べ歩き~  作者: キミマロ


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第69話 次なる目標

「ったくもう、一気に食べすぎだよ」


 痛がるふぇるの頭をなでながら、やれやれと愚痴をこぼす。

 こうしていると、岩場にいた他の人たちもジェラートを食べにやってきた。

 やっぱり、お風呂上りには冷たいものだよね!

 こうして私たちがのんびりしていると、近くにいた女性たちが話しかけてくる。


「ねえ、あんたたちは何者だい? 子どもが二人でこんなとこ来るなんて、珍しいじゃないか」

「子どもじゃありません! 私でもあなたより十倍は年を取ってますよ」

「十倍? そりゃ何の冗談だい?」

「冗談じゃありません!」


 ぷくーっと頬を膨らませて反発するイルーシャ。

 まぁまぁ、そう興奮しなくたっていいのに。

 私がイルーシャの肩を叩いて宥めようとすると、ここで女性たちの一人が言う。


「耳が長いから、ひょっとしてお二人はエルフなんじゃないですか?」

「そうだよ。私もイルーシャもエルフ」

「うわぁ、珍しい!」


 そう言うと、女性は目を輝かせながらパチパチと手を叩いた。

 一方、他の女性たちも少し納得したような顔をする。


「なるほど、エルフかい。じゃあ見た目通りの年じゃないね」

「まーね、百歳は軽く超えてるから」

「そりゃすごい。エルフってことはやっぱり、白樹の森から来たのかい?」


 女性がそう言うと同時に、これまで私たちを静観していた男性陣も一斉にこちらへ注目した。

 ……なんだ、みんなエルフに対して何かあったのか?

 ジロジロとした容赦のない視線に、私たちは戸惑ってしまう。


「……ううん、白樹の森なんて知らないよ。というか、どこ?」

「そう言えば、魔境の中心に聳える気が白樹様だっておばあちゃん言ってませんでした?」

「ああ。ということは、白樹の森って魔境のことか」


 私がそう言うと、周囲の人々は興味を失ったように視線を外した。

 今のは何だったんだろ?

 私とイルーシャがともに顔を見合わせると、女性の一人が言う。


「実はね、あたしらみんな冒険者でさ。白樹の森に詳しいやつを探してるのさ」

「へえ……。それでエルフの私たちに期待したってわけ」


 エルフと言えば、森に引きこもって自然とともに生きる種族ってイメージあるからね。

 私たちが白樹の森について、何か知っているかもしれないと聞き耳を立てたのだろう。

 それで、特に何も知らない様子だったので失望してサッと離れたってことか。

 勝手に期待して勝手に離れて、失礼しちゃうねえ。


「私たちは特に何も知りませんが、どうして詳しい人を探してるんですか?」

「……そりゃもちろん、トロフ茸を探してるからさ」

「トロフ茸?」


 エルフとして生まれて、はや数百年。

 この世界の植物には詳しい自信があったけど、初めて聞く植物だ。

 イルーシャの方も、思い当たるものがないのか首を傾げている。


「知らないのかい?」

「ええ、ぜんぜん」

「トロフ茸ってのはね、世界で最も香り高いとされる幻のキノコさ」

「世界で最も!?」


 それは、俄然興味が湧いて来た!

 私はにわかに目を輝かせると、一気に女性との距離を詰める。

 そんなキノコがあるならば、ぜひお目にかかりたいものだ。

 いや、絶対に食べたい!

 きっと炭火焼きにしたら優勝できるよ!


「ず、ずいぶんと食いつくねえ……」

「ララート様はおいしいものに目がないので」

「うん! 私は美食家だからね!」


 どーんっと胸を張る私。

 その勢いに押されつつも、女性は話を続ける。


「このトロフ茸が百年ぶりに白樹の森で大発生してさ。んで、みんなキノコ狩りに集まったわけ」

「へえ!」

「けど、大発生した場所が魔境のちょうど中心部でね。並大抵のことではたどり着けないのさ。ここにいる連中はだいたい、途中で怪我をして湯治に来た連中だよ」


 なるほど、それで冒険者っぽい人たちが多かったのか。

 怪我をしている人が多いのも納得だ。


「ララート様じゃあるまいし、みんなキノコに本気出し過ぎでは?」

「トロフ茸は王侯貴族も愛するキノコの王様だからね。一本につき金貨一枚はくだらないのさ」

「わぁ……。すごい金額ですね!」


 人間の貨幣価値には疎い私たちでも、すぐにとんでもない金額になると理解できた。

 群生地の規模によっては、一撃でお屋敷が建ちそうだなぁ。

 そりゃ、危険を冒してでもみんな行くはずだよ。


「私たちも行こう! 誰かに採られちゃう前に見つけなきゃ!」

「わわ、走ると危ないですよ!」


 こうして私たちは、魔境の情報を仕入れるべくギルドへと急いだ。

 さあ、次の目標は茸だよ!

 こうして次なる旅が始まるのだった――。



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