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ぐうたらエルフののんびり異世界紀行 ~もふもふと行く異世界食べ歩き~  作者: キミマロ


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第55話 お昼の作戦会議

「さーてと、これからどうしようかなぁ……」

 トーマス商会からの帰り道。


 私たち二人は白帆亭を訪れていた。

 テイオウイカの辛子漬けがないとはいえ、ここのお料理は絶品だからね。

 お昼ご飯を食べながら、軽く作戦会議という訳である。


「他の商会を当たってみるしかないんじゃないですか?」

「でも、町一番の商会がダメなら他も駄目だろうね」


 そう言うと、私は腕組みをして考え込んだ。

 私たちが無茶をしないように、トーマス商会が他へ手を回したとしても不思議じゃない。

 大きな船を借りてテイオウイカのハズレに対抗するというのは、なかなか難しくなったとみていいだろう。

 さーて、どうしたものかなぁ……。

 流石に大きな船がないと、あの強烈な水鉄砲を凌ぐのは難しい。

 魔法で迎え撃つという手もあるけど、あの威力を相殺しきれるかどうか。


「うぅーん……」

「レインボーマグロのカルパッチョです!」


 ここで、ウェイトレスさんが料理を運んできた。

 おぉー、こりゃおいしそう!

 テーブルの上に置かれたご馳走を見て、私はたちまち目を輝かせる。

 赤味の強いマグロが薔薇のように盛り付けられ、その上に貝割れ大根とパセリが散らしてあった。

 ほのかに漂ってくる酸っぱい香り。

 お酢だけでなく、レモンの風味も少し混じっている。

 これはとっても、期待が持てそうだ……!


「レインボーマグロはとっても脂が乗ってて、しかも旨みが強いお魚なんですよ!」

「うはー、そりゃ楽しみだね!」


 ウェイトレスさんの説明を聞いて、テンションがさらに上がる。

 私はすぐさまフォークを手にすると、マグロを口に放り込んだ。


「んんん!!」


 期待を裏切らない濃厚なお味!

 それとレモンとお酢の程よい酸味が見事に調和し、軽やかに仕上げている。

 やっぱり、日本人にはマグロだなぁ……!

 日本にいた頃はお魚よりお肉派ではあったのだけど、それでもマグロは大好きだった。

 お寿司屋さんに行けば、必ず二皿は食べていたぐらいだ。


「うぅ、おいしいよぉ……」

「ラ、ララート様!? そんな泣くほどおいしかったんですか?」

「つい、懐かしくて」

「は、はぁ……」


 私の返答に、戸惑った顔をするイルーシャ。

 彼女は皿に乗ったマグロを見ると、何とも言えない顔をする。


「どしたの? 食べないの?」

「いやその……」


 何故だかわからないけど、イルーシャはマグロを食べるのをためらっているようだった。

 この間の髭おっさんとかは平気な顔して食べてたのに、いったいどうしたんだろう?

 まさか、今更になって「お魚はダメです!」とか言わないよね?

 お野菜魔人がまた復活しようとしてたりしないよね?


「すっごくおいしいよ。ほっぺた落ちちゃうんだから」

「その、とても赤いので……血の匂いがしそうで」


 あー、そういうことか!

 イルーシャは血の匂いとかダメそうだもんね。

 そういう私も、魚の臭みはちょっと苦手だ。

 というか、あれが得意って人はほとんどいないんじゃないかな。


「大丈夫だよ、新鮮だから臭みとかないし」

「ほんとですか?」

「ほんとほんと。というか、今まで私がおすすめした料理でまずいものあった?」


 私がそう言うと、イルーシャは顔を下に向けて少し考え込むような仕草を見せた。

 里を出てから、いろいろなものをイルーシャにはおすすめして来たけれど……。

 基本的には、どれも気に入ってもらえたはずである。

 やがてイルーシャもそのことに思い至ったのか、顔を上げて意を決したように言う。


「食べてみます!」

 フォークでマグロを突き刺し、パクっと口に放り込むイルーシャ。

 その目は固く閉じられ、未知の味に備えているようだった。

「……んん!」


 数秒後、イルーシャの目がパッと大きく開かれた。

 そして次の瞬間、その口からふあぁと甘い吐息が漏れる。

 その表情は恍惚としていて、目がとろんとしていた。

 口の中で幸せ噛みしめてますって言わんばかりの雰囲気だ。

 身体全体がほんのりと輝いているようにすら見える。


「このとろけるような食感は何ですか……。脂ってこんなにおいしいものなんですね!」

「わかるわかる、初めていいマグロを食べると世界が変わるよねー」

「んんー、最高です!」


 イルーシャは再びフォークを手にすると、二切れ目を口に入れた。

 さっきまでのためらいはどこへやら。

 マグロのカルパッチョをパクパクパクっと食べ進めていく。

 フォークを動かす手が、もう止まらない。


「この貝割れもいいアクセントですね! 口の中がさっぱりします!」

「だよねー。あっ! ちょっと食べ過ぎだよ!」


 いつの間にか、イルーシャがマグロを半分以上も食べていた。

 いかんいかん、このままでは私の分がなくなっちゃう!

 イルーシャって、菜食主義者で食が細そうに見えて意外と食べるときは食べるからね。

 ひょっとすると、大食いの才能があるのかもしれない。


「次は海藻サラダですよ」

「おぉ、サラダ!!」


 たちまち、最後のマグロを取ろうとしていたイルーシャの手が止まった。

 流石はお野菜魔人のイルーシャ、一瞬にしてサラダの方に気を取られたらしい。

 その隙に、私はしれっと最後の一切れを食べる。

 ふ、こういうのは最後まで見てなきゃダメなんだからね!


「どうぞ」


 そうしている間に、テーブルの上に大皿が置かれた。

 その上には、たっぷりとサラダが盛り付けられている。

 わかめとレタス、そして赤い細いやつが入ったオーソドックスな感じの海藻サラダだ。

 ドレッシングは別添えで、小皿に緑色の液体が入っている。

 大葉か何かのペーストを、油に溶かしたもののようだ。


「んんん!?」


 このサラダを見た途端、イルーシャの目が丸くなった。

 あれ、そんなに驚くようなところあったかな?

 私がおやっと首をかしげていると、彼女はわかめをフォークで持ち上げて凝視する。


「これは……私が全然知らないお野菜!? いや、これは野菜ではない?」

「ああ、イルーシャは海藻も初めてだっけ」

「海藻? 初めてです!」

「海に生えてる植物だよ。お野菜とはジャンル的には似てるかな、植物みたいなもんだし 」

「へえ……!!」


 そう言うと、イルーシャはキラキラと目を輝かせながらフォークでわかめを刺した。

 そしてドレッシングに付けると、そのままゆっくりと口に入れる。


「ああ……いいですねえ。新鮮お野菜の幸せ空間に海の風味が広がります……!」


 再びほっぺたを抑えながら、幸せそうな顔をするイルーシャ。

 どうやら、この海藻サラダが相当に口にあったらしい。

 マグロを食べた時に負けないぐらい、うっとりとした表情だ。

 いやむしろ、それ以上に目が輝いているようにすら見える。

 流石はお野菜魔人、本当にサラダ大好きだなぁ。

 幸せそうなイルーシャにつられて、私もまたサラダを食べる。


「うんうん、なるほどなるほど」


 これは、食感が楽しいサラダだね!

 レタスのシャキシャキさとわかめのムチムチさ。

 そして、赤く細いやつ……たしか、トサカコケだったっけ。

 あれのプリプリとした食感が合わさって、口の中がとても賑やかだ。

 ドレッシングの味も良く、大葉ベースのさっぱりとした仕上がり。

 それが野菜の甘みや海藻の旨味と相まって、重厚なハーモニーを奏でる。


 まさに、海を食べてるって感じだ。

 濃厚なマグロのカルパッチョの後に出してきたのも、いい配慮だろう。

 お口の中がさっぱりと洗われたようである。

 こうして私たちは、イカのことを忘れてしばしランチを満喫するのだった――。


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