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ぐうたらエルフののんびり異世界紀行 ~もふもふと行く異世界食べ歩き~  作者: キミマロ


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第47話 リュートの家

「どう? お刺身、おいしい?」

「わん、わん!」


 漁のお手伝いをしたその日の昼。

 宿に戻った私たちは、フェルにお土産のお刺身を食べさせていた。

 フェルは尻尾をぶんぶんと振りながら、すごい勢いでお刺身を貪る。

 お魚が好きなのはどちらかと言えば猫だと思ってたけど、犬のフェルにも大好評らしい。

 かなり大きめの柵を買ってきたのに、あっという間に無くなってしまった。

 今度は丸ごと一匹買ってきて捌いてみようかな。

 一応、前世ではお魚をけっこう食べていたので包丁さばきに自信はある。


「わん、わんわん!」

「今度は自分もつれて行けって言ってますよ」

「船長さんとは知り合いになったし、次に行くことがあれば交渉してみよっか」


 流石に初対面で犬を連れていくとなると勇気がいるけど、二回目だからね。

 既に見知った仲だし、交渉の余地はあるだろう。

 フェルにも、船の上で食べる新鮮なお魚はぜひ味わってほしい。

 あれはね、人生を変えるからね。


「ふあぁ……。早起きしたし、眠くなってきちゃった」

「もう寝るんですか? まだお昼ですよ」

「いいじゃん。寝る子は育つって言うし」

「ララート様、そんな年じゃないですよね?」

「見た目は子どもだから」


 私はそう言うと、ベッドに潜り込んだ。

 疲れた体に布団の柔らかな感触が心地よい。

 やっぱ羽毛布団は最高だわぁ……。

 たちまち私がウトウトとし始めると、ここでイルーシャが呆れたように言う。


「もう……。夜眠れなくなっても知りませんよ」

「いいもん、そしたらまた昼間寝るから」

「昼夜逆転しちゃうじゃないですか! そんなことになったら、働けませんよ!」

「仕事ないじゃん。モンスターが居なくてギルドもガラガラだし」


 今日はたまたま漁のお手伝いの仕事があったけど、あれも毎日じゃないからね。

 船長さんの話によれば、あまりにも魚が獲れるので最近は自主的に回数を制限しているのだとか。

 他にもいろいろとお手伝い系の仕事はあるはずだけど、なんだかなー。

 やっぱり食べ物が絡まないと、やる気が出ないんだよねえ。


「……そもそも、何でモンスターがいなくなっちゃったんでしょうね?」

「さぁ? 流石の私もそこまでは知らないよ」

「暇だったら、調べてみたらどうです? ずーっとゴロゴロして過ごすよりは健康的だと思いますけど」


 イルーシャはそう、チクチクと刺すような感じで言った。

 ……こやつ、私がしばらくゴロゴロして過ごすつもりだったのを見抜いているな。

 付き合いが長いだけあって、こちらの魂胆はお見通しという訳か。


「それに、モンスターが戻ってくればテイオウイカの辛子漬けも食べられますよ。もともとは、テイオウイカを手に入れるためにギルドへ行ったわけですし」

「……むむ、すっかり忘れてた!」


 そうだ、テイオウイカの辛子漬け!

 食べなきゃ人生損してるっていう、この街の名物をすっかり忘れていた!

 あれを食べるためには、モンスターであるテイオウイカに戻ってきてもらわねばならない。

 そのためには、まずはいったい何が起きているのかを調べないといけないね。

 ふあぁ……仕方ない、動きますか。


「よし、ひとまずリュートの家に行ってみようか」


 私はベッドから起き上がると、すぐさまそう言った。

 するとイルーシャは、えっと驚いた顔をする。


「リュート君って、あの漁師の子ですか?」

「そう。彼のおじいちゃんが災いがどうとか言ってたみたいだし。話を聞いてみれば、何か分かるかも」


 老人の知恵ってのは馬鹿にできないからね。

 ひょっとしたら、昔にも似たようなことが起きていたのかもしれない。


「なるほど、当てもなく調べるよりはいいですね」

「でしょ、というわけで出発! フェルも行くよ!」

「わんっ!」


 すぐさまフェルを連れて、部屋を出て行こうとする私。

 するとすでに部屋着に着替えてしまっていたイルーシャが、慌てた顔で言う。


「わわ、ちょっと待ってください! もう、寝たり動いたり激しいんですから!」

「子どもはそんなもんだよ」

「ですから、ララート様は子どもじゃないですよね!」


 こうして私たちは、ひとまずリュートのおうちを探して尋ねることにしたのだった。


――〇●〇――


「えっと、船長さんに聞いた話だとこの辺りのはずだけど……」

「だいぶ、街の中心から離れちゃいましたね」


 山から海に向かって、半月状に広がるウェブルの街。

 その端っこのかなり山側の地区に、リュートの家はあるようだった。

 延々と続く長い長い坂道を登っていくと、やがて小さな一軒家が見えてくる。


「ここかな。船長さん、坂の上の家って言ってたから」

「何だか、廃屋っぽく見えますけど……」


 そう言うと、イルーシャはううーんと首を傾げた。

 彼女が疑ってしまうのも無理はない、見たところ家はかなり荒れている。

 庭に生えている大きな木が家屋に寄りかかり、そのまま侵食しているようだった。

 日当たりのいい海側の壁など、甲子園球場みたいになっている。


「そうだねえ、間違えちゃったのかな?」

「こんなとこ、人が住んでるように見えませんもんねえ」

「住んでるぞ、悪かったな」

「わっ!」


 不意に後ろから声を掛けられて、私もイルーシャもびっくりしてしまった。

 振り返れば、買い物かごを持ったリュートが不機嫌そうな顔をして立っている。


「なんでアンタらがいるんだ? 船長から言伝でも頼まれたのか?」

「そうじゃなくて、ちょっと気になることがあってさ。ほら、船の上で言ってたじゃん。災いがどうとかって」

「ああ、あれか」

「そのことで、リュートのお爺ちゃんにちょっと話を聞いてみたくてさ」


 私がそう言うと、リュートはふぅんっといまいち興味のない様子で頷いた。

 まあ、彼からしてみればいきなりよくわからん連中が押しかけて来たのだから、無理もない。

 追い返さないだけ有情だろう。


「ちゃんと、お土産も持ってきましたよ。お野菜詰め合わせです!」


 そう言うと、イルーシャは野菜のたっぷり入った袋を差し出した。

 ここに来る途中、市場であれこれと買い物をしていたけれど……。

 まさかお土産用だったとは予想外だ。

 流石はお野菜魔人、土産までお野菜とは徹底している。


「あ、ありがとう……。食い物は助かるよ」

「そうでしょうそうでしょう! きっと野菜不足になっていると思いました!」

「そうだな……」


 戸惑いつつも、感謝の意を示すリュート。

 まぁ、お野菜なんて貰っても困るものではないしね。

 いくらか態度を柔らかくした彼は、ゆっくりと家の扉を開く。


「入ってくれ。爺ちゃんは中にいるはずだ」

「おじゃましまーす」


 こうして私たちは、薄暗い家の中へと足を踏み入れるのだった。

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