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ぐうたらエルフののんびり異世界紀行 ~もふもふと行く異世界食べ歩き~  作者: キミマロ


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第39話 海の見える街

「おぉー、海だ!」


 検問所で進路を変えて、南へ進むこと一週間ほど。

 木々の生い茂る山々を抜けたところで、眼下にドーンと大海原が広がった。

 群青色の水平線が陽光を反射し、キラキラと輝いているのがとても美しい。

 やっぱり異世界だけあって、日本とはだいぶ海の色が違うね!

 海外のリゾート地のように、見事なまでの群青色だ。

 おまけにどこまでも透き通っていて、海底まで見渡せそうなぐらい。

 海水浴したくなってきちゃうね!


「んん? なんかちょっと変な匂いがしません?」

「磯の匂いじゃない?」

「何ですか、それ」

「海の近くに行くとこういう匂いがするんだよ。特に岩場が多いとするかな」


 いわゆるリアス式海岸という奴だろうか。

 山が海のすぐそばにまで迫っていて、海岸線は切り立った崖や岩場が続いていた。

 あまりリゾートっぽさはないが、これはこれでとても美しい風景だ。


「この匂い、ちょっと苦手です……」

「わううぅ……」


 鼻をつまんで、すごく嫌そうな顔をするイルーシャとフェル。

 特にフェルは、私たちを乗せたままその場でうずくまってしまった。

 あー、磯の匂いが嫌いな人っているからなぁ。

 鼻がいい精霊獣なら、なおさらのようだ。


「しかたない、フェルが慣れるまでは歩こうか」

「そうですね」


 フェルの背中から下りる私とイルーシャ。

 だいぶ辛そうだけど、こればっかりは慣れてもらうしかないなぁ。

 私は小さくなったフェルを抱えると、そのままゆっくりと歩き出す。


「でも、磯の匂いがする海は栄養豊富なんだからね。あんまり嫌っちゃダメだよ」

「そうなんですか?」

「うん、前にテレビ……本で読んだから」

「流石はララート様、博識ですね!」


 鼻を抑えながらも、感心したような顔をするイルーシャ。

 これが出来るから、エルフの大魔導師って便利だよね。

 よくわからん出所不明の知識をたくさん持っていても、何も疑われないし。

 本で見たとか言えばだいたい通じる。


「ウェブルの街はあそこかな? おー、絵ハガキみたい!」

「綺麗なところですね!」


 小さな半島の付け根に当たる部分。

 海に迫る山並みを削るようにして、大きな市街地が形成されていた。

 半月のような形をしたその街は、赤いレンガの屋根が連なっていて何とも風情がある。

 地中海沿岸の港町とか、こんな雰囲気ではなかろうか。

 ……残念ながら、前世の私はヨーロッパ旅行なんて行ったことないけど。

 山と海、そして市街地の織り成す風景は実に見事だった。


「よーし、急ぐよ! ご馳走が待ってる!」

「ご馳走よりも、船ですよ船!」

「あ、そうだった!」


 こうして私たちは、街を目指して山道を駆け下りていくのだった。


――〇●〇――


「うわぁ、すごい活気!」

「トゥールズの街以上ですね!」


 大きな門を潜って街の中に入ると、そこはもう別世界。

 たくさんのお店が並ぶ大通りが、数えきれないほどの人で埋め尽くされていた。

 流石に渋谷のスクランブルとまではいかないけど、こりゃなかなか大したもんだ。

 気を抜いていたら、イルーシャとはぐれてしまいそうだ。


「イルーシャ、財布をすられないように気を付けてね」

「大丈夫です、こんなこともあろうかと紐で結んでおいたので」

「なるほど、そりゃ賢い」

「はい、エルフは学ぶ生き物ですから!」


 えっへんとばかりに胸を張るイルーシャ。

 しかしその自信に満ちた可愛らしいドヤ顔はすぐに曇ってしまった。

 何だか、あんまり具合がよくなさそうな感じだ。


「大丈夫?」

「すいません、なんだかちょっと酔ったような感じで」


 あー、なるほど。

 イルーシャは人に酔うタイプか。

 エルフの里で生まれ育ったら、そうなるのも無理はないなぁ。

 あの里、全員で集まっても百人ぐらいしかいないし。


「しょうがない、船を取ったらさっさと宿へいこっか。料理巡りは明日にしよう」

「ありがとうございます。それで、チケットはどこで買えるんでしょう?」

「さあ、聞けばわかるんじゃない? すいませーん、ちょっといいですか?」


 手を上げて、道を歩いているおばさんを呼び止める。

 するとおばさんは、おやおやっと驚いたような顔をして近づいて来た。


「かわいい子だねえ。お姉ちゃんと一緒におつかい?」

「はい! 船のチケットを買いたいんですけど、どこに行けばいいですか?」

「それならあそこの桟橋だよ。でも、定期船はもうどこもいっぱいじゃないかしら」


 そう言うと、おばさんはまっすぐに通りの奥を指差した。

 通りはそのまま港へと繋がっていて、岸壁から木で出来た桟橋が何本か伸びている。


「とりあえず、行って確認してみます!」

「気を付けてね。海の近くは風が強いから」

「はーい!」


 おばさんに軽く会釈をすると、そのまま桟橋に向かって歩き出す。

 するとイルーシャが、呆れたような顔をして言った。


「ララート様、人を騙すのは良くないですよ」

「騙すってなにさ?」

「あのおばさん、ララート様が子どもだと思ってましたよね?」

「それは向こうが勝手に思っただけだもの。私は騙してない」

「うーん、そうなんですかね……」


 何となく納得がいかないような様子のイルーシャ。

 ま、使えるものは何でも使わないと損だからね。

 せっかく子どもの姿をしているのだから、子どもの特権を使わないのはもったいない。

 小さくなったことで不便なことも多いんだから、そのぐらいは役得が無きゃね。


「ほら、急ぐよ」

「はい!」


 こうして人混みをかき分けて桟橋へとたどり着くと、小さな事務所のような建物があった。

 おばさんが言っていたのは、たぶんこの建物のことだろう。

 さっそく中へ入ると、すぐに眼鏡をかけた事務員らしきおじさんが声をかけてくる。


「定期船かい?」

「うん。マーセル王国行きのやつ」

「マーセルへ行く船はどれもいっぱいだよ。えーっと、最速で……」


 まるで電話帳のような分厚い資料を取り出すと、おじさんは慣れた様子でページを繰り始めた。

 パラパラっと勢いよくページがめくられていく。

 そして――。


「三か月後だねえ」

「三か月!? そんなに待たされるの!?」


 あまりの待ち時間に、私はたまらず目をぱちくりとさせるのだった。

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