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ぐうたらエルフののんびり異世界紀行 ~もふもふと行く異世界食べ歩き~  作者: キミマロ


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第27話 偽物

「偽物!?」


 大きく目を見開き、素っ頓狂な声を上げるイルーシャ。

 私はあるページを開くと、そこに書いてある二つの魔法陣を示す。


「これを見て。右側の術式は古代ウェーロッグ文字を使った千年以上前の骨董品だけど、左側の術式は現代ザーランド文字を使った六角記法が使われているから相当に新しい」

「ほんとだ、だいぶ年代がズレてますね。これ、それぞれ何の魔法陣なんですか?」

「右側が黄金石に組み込まれている魔法陣で、左側が魔石から魔力を抽出する魔法陣だね」

「それじゃあつまり……」

「そう。魔石から魔力を抽出する術式は後から編み出されたもの。黄金石に魔力を補給するための正規の方法ではないってわけ。それにこの古文書って言われている本自体、実際にはだいぶ新しいものなんじゃないかな」


 あれこれ古く見せかけようとしているが、よくよく調べてみると材料が新しい。

 特に内側のページは紙の劣化がほとんど進んでおらず、ここ百年以内に書かれた本であることはほぼ確実だ。

 恐らくだが、誰かがもともとあった黄金石の資料を参考に新たに書き起こしたものだろう。

 それなりに魔法の知識があることからして、それは恐らくドワーフではあるまい。


「いったい誰がこんなものを……」

「決まってるじゃん。例の盗人だよ。本を盗み出すついでに、この偽の古文書を書庫に置いていったんだ」

「黄金石の魔力が尽きて、困ったドワーフさんたちが書庫の資料を漁ることを想定してですか?」

「うん。ひょっとすると、黄金石の魔力が尽きたのもそいつらのせいかも。何かしら、魔力が抜けるような細工をしたんじゃないかな」


 私がそう言うと、イルーシャの顔色が悪くなった。

 昨日のモードンさんなどとは比べ物にならない、正真正銘の悪意に触れたのだ。

 純朴無垢な彼女がショックを受けるのも無理はないだろう。


「……ここに記されてる魔石から魔力を抽出する方法は、モンスターが持ってる魔瘴の処理が意図的に無視されてる。こんな方法で大量の魔石から魔力を抽出して注ぎ込んだりしたら、すぐに黄金石が魔瘴でいっぱいになるね」

「そんな恐ろしいこと……」


 モンスターの身体には、わずかながらに魔瘴が蓄えられている。

 少量ならばたいした問題ではないが、これがもしたくさん集まってしまうと大変なことになる。

 強力な魔瘴はモンスターを呼び寄せる餌となってしまうのだ。


「フェルがこの国に来た時、具合悪そうにしてたのもこのせいだろうね。精霊は敏感だから」

「わん、わん!」

「いまはもう慣れたみたいだけどね」


 私はゆっくりとフェルの身体を抱き上げると、その頭を撫でた。

 そして、再びイルーシャの方を見ると意を決して語る。


「話を戻すよ。この術式を開発したやつは、魔瘴をためてモンスターをおびき寄せ、やがてはこの国を潰すことが目的だったとみて間違いないね」

「でも、どうして……!」

「ミスリル製の武具を作る技術を自分たちだけで独占したいんだよ。そのために本家であるこの国のドワーフたちが邪魔になった。でも表立って動くと、ドワーフと取引をしている国々も黙っちゃいないからバレないようにってとこだろうね」


 そう説明すると、イルーシャはいよいよ泣き出しそうになってしまった。

 私はゆっくりと彼女に近づくと、その背中を強く抱きしめてやる。


「大丈夫、こんなくだらない陰謀はこのララート様が打ち砕いてやるんだから」

「できるんですか……?」

「私はエルフの大魔導師だよ。できないことなんて、あんまりないって」


 そう言うと、イルーシャを安心させるべく満面の笑みを浮かべた。

 そして気分を切り替えるように、パンッと手を叩く。

 昨日からちょっと怒ってるけど、もう本気で怒ったよ。

 どこの誰だか知らないけれど、絶対に許さないんだから!


「さあ、王さまのところへ行くよ。さっそく、調べた結果を私の案を聞いてもらわないと」

「これをそのまま伝えるんですか? 国が亡びるなんて知ったら、彼らは……」


 憂鬱そうな顔をするイルーシャ。

 ある意味、国の余命宣告みたいなものだからしたくないという気持ちは分かる。


「平気だよ、もう解決策は思いついたから」

「え、もう考え付いたんですか?」

「当然! というか、術式を見たら制作者が何を考えていたのか意図は明らかだったし」


 黄金石の魔力が尽きた際、本来ならばどのように対処するのが正しいのか。

 術式を読み解けば、制作者がどのような方法を想定していたのかは明らかだった。

 いや、正確に言うならば……どうして欲しかったかというべきであろうか。

 黄金石の術式には、それを作成したものの想いがたっぷりと詰まっていたのだ。


「隊長さん、また王さまのところへ案内して!」

「……もう調査用が済んだのか? ずいぶんと速いな」

「私はできるエルフだからね」

「減らず口を。これでもしろくでもないことを言ったら、その首を刎ねてやるぞい!」


 戦士長さんは背負った大戦斧に手をかけ、思いっきり私のことを睨みつけた。

 おーおー、こりゃまたすっごい殺気だこと。

 下手なことをすれば脅しでも何でもなく、即座に私の首を斬りに来そうだ。


「そんなに脅さなくても、大丈夫だって」


 これでもなお納得しない様子の戦士長さんと、討論未満の言い争いをしながら歩くこと数分。

 私とイルーシャ、そしてフェルの三人は再び謁見の間へと戻ってきた。

 予想以上に早い帰りに、皆、呆気にとられたような表情でこちらを見ている。


「早かったな。まだ一刻ほどしか経っていないのではないか?」

「いったい、何がわかったというつもりなのだか」

「案外、もう白旗を上げるつもりなのかもしれんぞ」


 王の横に控えている貴族らしきドワーフたち。

 彼らは私の顔を見るなり、眉をひそめて陰口を叩いた。

 そして――。


「…………結局、連れてこられちゃいましたよ」

「モードンさん!」


 ここで、貴族っぽい集団からモードンさんがはじき出された。

 どうやら、古文書を調べている間に城へと連行されてきたらしい。

 彼はすぐさま私の手を取ると、凄い勢いで王さまに向かって土下座を始める。


「偉大なる王よ。この者の起こした数々の無礼は、すべて私の責任です! このうえは、この命を持って償いを――」

「わ、何するの! そんなことしちゃダメだって!」

「止めないでください! だいたい、元はと言えばあなたがこんな無茶苦茶をするから……! それもこれも、あなた方の嘘を見抜けなかった私の責任です!」

「だからってねえ!」


 懐から取り出したナイフで、首を貫こうとするモードンさん。

 私は慌ててその手を止めようとするが、学者といえどもドワーフである。

 思っていたよりもずっと力が強く、そのまま揉み合いとなってしまう。

 すると――。


「よい! 騒ぐな!」


 王さまの一喝が、力強く広間に響いた。

 たちまち、モードンさんはナイフを鞘に納めて深々と平伏する。

 私とイルーシャもまた、姿勢を正して王さまの王へと向き直った。


「戻って来たからには、何か分かったのだろう? 聞かせてみよ」

「ええ。まず、例の古文書だけどまず間違いなく偽物だよ。魔法の知識があればすぐ見破れるぐらいの出来だった」

「そんな! あれは城の書庫から出てきたものですよ」

「じゃあ聞くけど、あの本について目録とかには書いてあったの?」

「目録……。申し訳ない、実は城の書庫の目録は作成中で……」

「やっぱり。もうちょっと書籍を大事に扱った方がいいね、この国は」


 私がそう言うと、モードンさんは申し訳なさそうに身を小さくした。

 この国の学者として、今の書庫の在り方には忸怩たるものがあるのだろう。

 その表情からは恥ずかしさと同時に悔しさが見て取れる。


「書庫に泥棒が入った時に、バレないように仕込まれたんだろうね。で、ドワーフさんたちはそのことに気付かずに偽物の古文書に頼って黄金石が魔瘴に汚染されちゃったってわけ」

「……なんと、黄金石が魔瘴に!?」

「そんな、だからモンスターがあれほど沸いたのか!?」

「ううむ、やはり魔石を使うには無理があったか」

「もしや、あのアースドラゴンも……」


 再び騒ぎ出す貴族たち。

 この人たちの中にも、アースドラゴンのせいで家が潰されてしまった人がいるのだろう。

 動揺は大きく、明らかに狼狽しているのが見て取れた。

 すると再び、王さまが大きく咳払いをして彼らを落ち着かせる。


「……騒ぐな。エルフよ、そなたの話を最後まで聞こうではないか」

「ありがとう。じゃあ続けるけど、あの古文書に書いてある方法を行う限りモンスターは湧き続けるよ。目覚めたアースドラゴンもこの国を狙ってくるだろうね」

「……ならばどうすれば良い? その様子なら、解決策の一つでも思いついているのだろう? それを言えば、城に侵入したことは忘れようではないか」

「もちろん、ちゃんと考えてあるよ」


 そう言うと、私は一拍の間を置くのだった。


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