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ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!  作者: 櫛田こころ


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第57話 ポイ活の基礎をつくる

 藍葉は、眠りの底でなにかに指示されるかのように動いていた。


 体そのものが動かないのはわかっている。美晴も成樹も誰もいない、暗い暗い底の場所のようなところで……石の塊をざくざくと仕訳けてはまとめていた。


 どこでどう動いているのかさっぱりだが、『次はこれ』『これはこっち』と勝手に頭と手が動くのでどうしようもない。


 自分が何をしたいのかもわからないでいるのに、体と心を切り離したようなこの感覚はなになのだろか。



(……なに、しているんだろ。あたし……)



 少しずつ、きっかけを得たばかりなのに。


 健常者じゃなくても、普通の生活をしてもいいんだと思いかけていたのに。


 症状が出たと分かった途端、成樹まで離れていくことがあるかもしれないと悲しくて辛くて。


 家で寝たあと、どうしたのかなかなか思い出せない。


 ここはどこだろうか。


 生きているのか、死んでいるのかもわからない。


 だけど、なにか温もりを感じるのはわかっていた。体の方で誰かが傍にいてくれているのだろうか。できれば、成樹であってほしいというのはわがままだ。ただただ、わがままな感情で側にいてほしいという思いが先走ってしまう。


 だけど、この場所を整えなければ、成樹にはちゃんと言えないかもしれない。


 この奥の奥に……なにか、大切なものが埋まっている感じがするのだ。


 仕訳けて。


 選り分けて。


 奥の奥に仕舞い込んだ大切な『宝の種』。


 異世界ファームの最初の基盤となる、拠点のための魔法みたいな道具。


 化学や科学と似て異なる、シェルターそのものだと誰も気づかないでいた。


 その『種』を作ったのは、並行世界の彼ら。上下はあるが、『神』と部類されるような人間の進化系に近い存在。


 藍葉は選り分けながらも、本能的にわかっていた。この下には、こちらでの『義姉』になる存在が埋まっているのだろうと。



(……まだ、まだだ)



 砂を掻くようにして、多くの砂利石みたいなのを選り分けても。まだまだ底が見えにくい。この汚れを早いうちに掻きださないと、彼女の『核』たるモノが出てこれないのだ。


 地上では妹たちが。


 真ん中では、下の姉である自分が。


 地底では、上の姉が埋まっているのがようやくわかったのだ。成樹らの仕事と表向きのポイ活は隣接しないようにみせて、実は密接したふたつの世界との循環作業。


 それを引き継ぐのが『ナツ』の妹である表側の藍葉しか出来ないのであれば。


 こちらの上の兄神だと自称する『ハル』に、彼女を見つけさせるための旅路を早く終われるようにしなくてはいけない。


 データベースは整いつつあるも、どの並行世界で『要』になっている種を作り出した『加東奈月』が眠りにつく前に……義姉となる『ナツ』を起こさねば。現実世界だと自分たちが自負している地球のデータベースの更新する勢いが間に合わない。


 魔法もなにも出来ないが、科学技術の粋を活かせるこの異世界ファームのシェルター内であれば。バグのように見せて、魔法のそれと勘違いすることはいくらでも可能だ。


 だからこそ、藍葉は本能的にVRMMOのような世界にダイブする形で……ファームの狭間でポイ活のリニューアルをしているのだが。義姉らしき基盤が見つかったのは、体が寝てから三日後だった。

次回はまた明日〜

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