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ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!  作者: 櫛田こころ


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第39話 それは夢でも現実でもない

 いきなりとは言え、酷い会話をしたというのに……成樹はあれから運転に集中していたので、藍葉にはあまり話しかけてこなかった。藍葉も藍葉で、兄の美晴への連絡をしなくてはいけなかったので、まずはSNSのメッセージからやり取りを始めた。


 今なぜか風呂に入っているらしく、通話は出来ないがメッセくらいなら送れるので対応は可能。ならば、こちらが文字打ちする時間がかかるので乗車している分揺れるために……ゆっくり丁寧に打つことにした。



「藍葉、もうすぐ着く」



 美晴に確認を二、三回しただけでもう到着したらしい。美晴にはもう成樹の家に到着したので、ゆっくり来るようにと送ってから……タワーマンションでないにしても、それなりのセキュリティのあるマンションに到着したのに開いた口が塞がらなかった。



「……年収すごいの?」

「開発部門と兼任してるだけじゃ。貯金しとるけど、そこまで高過ぎんよ」

「うそだぁー……」

「美晴も似たとこ借りとるよ。外装をきれいにするんは今時じゃ。ここも何回かリノベーションされとるんじゃ」

「えぇえ?」



 とてもとても築年数が十年を超えているようには見えない。駐車場を降りてからも、エントランスに行きやすいバリアフリーからして絶対高いイメージがどんどん募っていくくらいだ。エレベーターを降りて目的の部屋に着いても、中へ上がらせてもらっても、結局は『開いた口が塞がらなかった』ままだ。



「ははは。女上げんの初めてじゃけど、藍葉でもそんな顔すんのか?」

「……はじめて?」

「ダチも美晴以外はあんまり来ないんじゃよ。両親は県外じゃし、姉貴やいとこも特に連絡がないしな」



 モテまくりの外見にして、この高額所得保持者に彼女ひとりすらいない。期待してしまいそうな暴言が口から出そうになったので慌てて空いている手で口を塞いだ。杖も倒さないように気を付けていると、中の電気を点け終えた成樹がなぜか玄関に戻ってきた。



「シゲくん?」

「ここには壁にバーもなんもないからな? 支えいるか?」

「……案内、だけ」

「俺に重いとか気にせんとき」

「いやいや、壁壊したくないからそっちを」

「おん」



 偽物でないとわかっても、甘々なこの空気がこしょばゆくて仕方がない。藍葉には彼氏などいたことがないし、実質初恋の相手が目の前にいるとこれで発覚したら照れる以上の感情があふれて当然。


 美晴もなぜ風呂に入っているかわからないが、早く来てほしいとメッセに送り付けてやりたいが今は静かに玄関から中へお邪魔するしかない。ゆっくり誘導してもらい、ソファに座れば。作業場がほとんどと言っていた割には、室内は機材が思ったよりも少なく感じた。



「……シンプルだね?」

「美晴が改造好きじゃし、組み立てたPCも結構コンパクトにしたんじゃ。その分、負荷でかいから安もんで作業しとる」

「ふーん?」



 ディスプレイは大きいのや小さいのがあったが、アニメとかであるような複数同時に使いこなすにしては少ない台数だと思った。とりあえずは、藍葉も美晴から渡された端末は持っていたので、改めて見てもらうのに成樹に渡したのだが。



「えーと、どれどれ」

「……?!」



 なぜか、当然のように横に座るのはともかく。若干以上密着した位置に座るのに心臓が口から出そうになった。

次回はまた明日〜

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