第31話 モニター同士の交流活動
クルスに接触してきた『リーナ』と名乗ったモニターのキャラクターだったが。可愛らしい女の子でチャットには友好関係を築きたい意思が強く出ていた。
文章を打っているのが男性かもしれないが、別に嫌悪感は出てこない。今時、キャラクターの男尊女卑する気はないし、モニター同士ということはつまり同僚。
年齢も性格も不明でも、これが社会人へのスタートだと人見知りを発動するのも宜しくない。クルス越しにチャットをする機能もきちんと搭載しているので、にわかではあるが方言キャラが好きな藍葉は関西弁で文字打ちしてみた。
別に標準語でもいいのだが、なんとなくキャラメイク向上のために考えながら打つのも意外に楽しく。
向こうは標準語だったけれど、少しテンションは高いが話し易い女言葉ではあった。
「レシピ交換と食材交換。それくらいは当然」
ゲーム感覚で情報交換するくらいでいいかもしれない。日程とどの食材を交換するかを決め、炊き出しが終わったら解散。実にあっさり終わったが、ここで追いかけても意味がない。ヘタレな上にコミュ障がちな藍葉の文章では逃げられるかもしれない。
リア友が極端に少ない藍葉には、ここで良い印象を持たせないと向こうが離れてしまう可能性が高いのだ。成樹のこともあったので、トラウマが根深いのは今更だ。
「広告が出ないソシャゲと似てるから……RPGのチャット導入?? あんまり、外見似過ぎたキャラデザ嫌だしなあ。でも、ポイ活もゲームの内だから普通??」
オンラインゲームもあまり得意でない藍葉には、必要以上の会話スキルも持ち合わせていない。文章も片言になってしまっていたからか、向こうが適当に引き上げてくれたのはありがたかった。
「女の子かなあ? 女の子……だったら、いいなあ。さっちゃんも卒論忙しいから、最近メッセもないし」
唯一の親友との連絡もあまり出来ないでいるが、大学の顔見知りも就活で忙しいのか適当な連絡もない。
藍葉はインターンとして内定もほとんど決まっているため、卒論もテーマを決めようかと言うところだったが。そこでふと、そのテーマをどうしようかが浮かんできたのだ。
「そうか。文系だから気にしてたけど……自分の生活を卒論に組み込んでもいいじゃない? 身体障がいの生活がどれだけ困難かとか……うんうん!」
業務外とは言え、就職する前に卒論を終わらせるのも大事。明日、少し頑張って大学に登校しようと決めてから端末を覗き込めば。自動運転にしていたクルスは、自領である自宅内に既に戻ってきていた。
ポイントを確認したが、レシピ投稿より少し上くらい。まずまずだったが、次は収穫と料理作成の任務をしつつ……少し休憩も兼ねて、電子書籍を読むことにした。
最近、WEBサイトから発売された新作コミカライズだが、異世界転生でもトリップモノも好きだがSFもなかなかに面白いと思い始めていたところだ。
タイトルは『C.C.クロニクル=バースト』と期待を誘う文言だが、内容は現実世界からのスタートと今風であった。
次回はまた明日〜




