第21話 手入れしまくる
新たな指示をこなしてから、半日。
無心なくらい、クルスは薪割りや雪掻き。そして、畑に生えてきた雑草の草むしりなどもこなしにこなしたおかげで。当然のように、空腹と汗だくになるのも仕方がなかった。
「……まずは、風呂や!」
足を引きずるようにして小屋へ向かい、服を適当に脱いでから露天風呂直行。身体の汚れは少しあとにしたかったが、掃除が大変かもと思い直して普通に洗うのはした。
蕩けそうな温もりのお湯に包まれたあとは、もう一度髪を洗ったり念入りに清めておく。他に誰もいないわけではないが、見たことない『管理者』がクルスを見ていることに変わりないのは確実。
一度鏡を見る機会があり、ボサボサだった髪や髭を整えられていたため……いつでも、クルスの命を奪うのも簡単な存在だと肝を冷やしかけた気分にもなったりした。
男か女かわからないが、神に性別があるとしてもクルスをどうしたいのだろうか。奴隷にしては至れり尽せりだが。
とにかく、清潔はきちんと守ろうと、改めて決意してからは風呂には一日に何回も入ることにしていた。
「……この髪乾かす道具にも慣れたなあ?」
布で拭くだけだと、風邪をひくから……などと、連絡版に書かれていたため、道具の使い方の紙を読んでから遠慮なく使うことにした。女のようにサラサラの栗色の髪が目立つが、管理者が特にいじってこないようだから大丈夫みたいだ。
「……三十手前で髭気にせんくてええと思ったんやけど」
管理者は手入れした方が好みなのか、鏡を見た時にしっかり剃られていたため……面倒でも、使い放題の道具を駆使することに。
おかげで、顔を見るたびに若返っているような気がしたが。今日手入れしても、なんだか青年にしても若い気がする。気のせいと思っておくことにした。
「……あかん。空腹もやけど、ねっむい!」
綺麗サッパリまでは良かったが、眠気はどうにもならなかった。
整備するのが、思いの外楽しかったせいもあり……作り置きもしてなかったので、今から簡単に作るのも億劫でしかない。
同時に眠くなるのに抗えず、寝巻きに着替えてそのままベッドに沈んだ。寝て寝て、寝まくって、気づいたらまた一日くらい寝たのか……外は薄暗いままだった。
「……連絡版見に行こ」
ある程度スッキリした気分になれたので、今日はちゃんと食事の指示もあるかもと見に行けば。
レシピの本がキラキラと光っていたので、先にそれを開く。主菜や副菜の作り方がわかりやすく記入されていたため……半日以上腹に何も入れていないクルスの胃を刺激するものでしかない。
【今日は『定食』を作ってみよう】
という項目が連絡版に増えていたので、まずは必要な食材を収穫するのに笹ザルを抱えて外に出たのだった。
次回はまた明日〜




