第20話 資格が欲しいものの
藍葉は大学ではよくある文系関連の専攻を取っているだけ。
足の不自由さで、実技もアルバイトも限定された場所でしかできないせいもある。そして、その分疎外するように線引きされた経緯も。
なので、就活を機に退職したが。美晴が持ってきたインターン『だった』、将来の就職先へのために……何か資格試験を受けれないか考えたものの。
業務内容としては、ITの技術職以下の研修も受けていない身。
興味はあれど、PCスキルに必要な基礎も大学で学んでいた程度しか持っていなかった。
「……いや、社員目指すんなら。ちゃんとそう言うところから、始めてみるとか?」
先日給与に振り込まれた金額は、もうインターンとしての業績では認められているためか……ほぼ毎月振り込まれることは決まっている。マニュアル作成の一端として、成樹には結構褒められたから上機嫌になってしまったが。
だからって、このまま引きこもりでリハビリも室内は良くない。
足の手術費についてもきちんと話せたし、執刀医が決まるまで『ポイ活研修』以外は自分でできることをしようと決めた藍葉は。
コミュニケーションを少しリハビリしたいのも兼ねて、パソコン教室に通ってみることに決めた。研修込みで、と成樹に連絡したところ許可が出たからだ。
藍葉の現状を知っている上で、きちんと考慮してくれる上司として成樹は頼れる存在。期待に応えたいし、藍葉も卑屈になりがちな性格を矯正したいのもあった。
「こんにちは、小鳥遊さん。基礎実習からまず希望だったわよね?」
美晴たちくらいの世代の女性講師に挨拶すれば、にこやかに笑顔を返された。藍葉は笑顔が出来ていたかわからないが、不安な表情は出ていたかもしれない。
何せ、身内以外でここ最近まともに会話すらしていないからだ。
「あ、はい。インターンシップを始めたんですが。業務に必要なスキルを……少しでも身に付けたくて」
「なるほど。キーボードの速度とか、他も簡単にテストしてからスケジュール決めましょうか?」
「お願いします」
テストアプリを起動して、二十分くらい練習込みで受けてみたが。やはり、日常生活程度のタッチでは書類作成も遅いことがよくわかった。
他のグラフ、表への組み立てについても知識がにわかで点数があやしい結果だ。
「小鳥遊さんは大学生?」
「……三年生です」
「レポートは文章作成くらい?」
「ですね。プレゼンするのは、あんまり受講してないです」
「んー。じゃ、まっさらな状態に戻すつもりでいきましょうか? 気負いする必要ないわ。いきなり出来る人って、早々いないもの」
「……はい」
ポイ活のマニュアル作成に、少し有頂天になっていたかもしれない。篭って、外と隔絶して、諦めた人生の殻で守ろうとしていた。
けれど、掬い上げてくれる人たちが来てくれたから……やはり、自分で応えたい意識が強くなってきた。
今日はまずキーボードに慣れる練習をメインに、久しぶりに両手でタッチをしっかり動かした。ゲームで決まったキーを動かす以外に頭を使うのが……幾らか楽しく感じたので、教室に来た意味があったと実感。
それから、藍葉の外出理由と資格取得のための時間が少し増え、ポイ活マニュアルにも『歩数』『チェックイン』によるポイント収拾という項目が出来たのだった。
次回はまた明日〜




