第16話 だらけだらけ、雪だらけ
クルスは、ここまで環境の変化が『外で』起きていると思わなかった。
「さっぶ!? 雪だらけやんけ!!?」
家と畑、外のお風呂よりさらに外の変化には見向きもしていなかったが。
『門』と『壁』がぐるっと一周するように、敷地内をを囲んでいた。宝物を埋めたことで『守護』かなにかが働いたにしても、鉄門をゆっくり開けた向こう側の寒さと冷気に……勢いで閉めたのは仕方がないかもしれない。
「……ここいら、雪だらけやっけ?? 俺が埋めた時は渇いた土地だったような??」
記憶が軽く混乱するが、防寒も何も無しに向こう側を見に行く気にはなれない。一度家に戻り、服が保管されている部屋へ向かえば……管理者があらかじめ用意していてくれてたかのように、冬の服がたっぷりと。
手袋やブーツ、あとは雪掻き用の道具もあったので……これなら、と意気込むことが出来る。
雪は積もっていたが降ってはいない。その『境目』が外で何か起きたことへの兆しなのだとしたら。
「……あの国は。埋もれたんかな? 雪の中に」
管理者が神の類であれば、その慈悲を向けてくれたかもしれない。クルスは宝物を持っていたことで……それを埋めたから『生きながらえたこの場』での生活を送られる。
だがそれでも、他人を避けて生きていくかとは考えられない。
クルスは永く生きるエルフでもドワーフでもない、ただの人間が永劫の時間を手にすると思うわけがないのだ。神かもしれない、管理者が見守っていたとしても……ここは宝物の内側で、クルスは守り人にたまたまなっただけだ。
とにかく、いつか他の存在がこの地を見つけてもいいように……整えるように仕組まれている。しかし、生き延びる手段を与えてくれたのは管理者。
食事も風呂も好きにしていいのなら、あとは雪掻きをして周辺を整備しなくては。ザクっと感触が重いが、幾つか持ってきた道具が役に立つのが分かれば……夢中になって進めて行ってしまった。
汗をかいてきたが、食事よりもまず風呂でさっぱりしたい気分になる。
ある程度の道を作れたので、次は……と道具を寄せようとしたところ。
道の方へ勝手に『柵』が出来上がっていくのが見えて、たまげそうになった。
「……整備すれば、あとは管理者が好きに??」
一方が整えれば、一方が増やしていくのか。
その理屈がわかると、風呂は少し我慢して家の中の連絡版に向かうことにした。
やはり任務が増えていて、『雪掻き』『薪割り』が収穫以外に任務の項目としてあった。
ただ、棒のようなものが伸びているのは変に見えた。
「……おもろい。やっぱ、誰かわからんでも……外と繋がるために、何かしたいんやろ」
それでも一旦休みたいくらいには動いたので、風呂から食事にするくらいは許してくれるだろう。あの独り言は聞こえなかったが、特に何も指示はなかった。
次回はまた明日〜




