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ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!  作者: 櫛田こころ


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第15話 『異世界ファーム』を手にしたのは

 成樹が、藍葉を含めるモニターを『インターンシップ』で雇い入れているのを決定出来たのは。


 普通ならあり得ない、異世界からの『御告げ』とやらでひとりの神が夢を渡ってきたのがきっかけだった。



『拗れているとは聞いていたが、随分と澱みが多いな?』



 厳つい体格に、熊を思わせる顔立ち。


 包容力が高そうで女にモテる感じは、成樹には苦手であった。見た目だけでアクセサリー扱いされてきた、こちらのモテ具合を考えると自分でなんとか出来そうな。


 そんな男が夢枕に立つなど、死神でも来たのかと勘違いしそうになったが。



『俺は死神じゃないぞ? むしろ、お前の悪友に近い存在だな。そっちじゃ』

「は? ワレぇ、バカにしとんのじゃろ……」

『今は広島近辺の言葉か? だと俺は…………俺やで俺、美晴って言えばええん??』

「は?! ば!? な、なして!!?」



 言葉遣いと名前を聞けば、たしかに悪友の美晴に面影はあったかもしれない。正確に言うと、今二十代後半のお互いにしては……目の前の神は三十後半に見えてしまう。


 髪型と体格でこうも印象が変わるのは、成樹も言えたことではあるが。変わり過ぎだろうとツッコミしたかったが、逆に話を聞く姿勢にはなれた。



『お前の開発してるアプリ(?)があるだろ? そっちの俺と意識共有はしてやっから、【異世界救済措置】って形で助けてくんね? もちろん、見返りは神の俺として与えるが』

「……どこまで信じればええんじゃ」

『いきなり、全部は無理かもな? 自分の別、ってこっちの俺に言っても意味不明だから……近いとこのお前にしたわけ』

「……そーかい」



 あの世との繋がりではないが、ギリギリSFのような世界観と繋がりが出来たようだ。別世界で魂が同じであれど、生き方も性格も違うそれが本当にあるのなら……成樹が最近開発部門で半ば趣味で作ってたアプリを使えると言うのだ。向こうの美晴が言うには。



『異世界ファンタジーの共有が日本はわかりやすく多くなってるからなあ? それ系の遊戯……ゲームとして、一度壊れる俺の世界を『再生』させてくんね?』

「……こっわい事言うが。マジなんじゃろな?」

『国の革命とかあんだろ? 澱みが心どころか世界の歪みを生み……破壊と再生を促す。俺は神だから、しばらく傍観って意味で休むが』

「……で。人間については、人間がか?」

『その仕組み。そっちの言い方じゃ、異世界より並行世界か? お前が欲しい『そいつの生活』のために……貸してくんね?』

「……は? 藍葉の」

『そーそ。こっちじゃ、お前とそいつは離れ離れになってるし。俺の妹でもない』



 うま過ぎる展開。


 そして、最近辞令で昇進の可能性が出てきたとなれば。アプリの実装への提案も出来るかもしれない。あくまで、端末の中での『育成ゲーム』とすれば。


 藍葉のような身体障がい者の正規雇用に向けての枠空け。さらに、給与形態を変えるきっかけの資金工面を……こちらの美晴と契約し直せば。



「藍葉の足も……治せる可能性が?」

『願いがそれなら、叶えてやれる。代価は大きいのはわかるだろ?』

「……ああ」



 拗れた性格に少しでも寄り添ってくれた少女。少し個性的になってしまったのには自分の責任があるとは思っていたが……少しでも、謝罪と再会のきっかけになれば。彼女への詫び以上の何かが出来れば、このチャンスは本物かもしれない。


 それが異世界だろうがなんだろうが。


 神の方の美晴とは、その契約をした以降……夢枕に立つことはなかったが。現実側の美晴がすぐに異動してきて、彼だけにその秘密を打ち明けたところ。



「あー……良かった。俺の変な妄想ちゃうんかったんや」

「……これからは、上司と部下以前の関係にも戻ろか」

「……藍葉んためにもなるんなら、ええよ。お前さんにしか任せられん」

「ん」



 ただ、互いの美晴が夢渡りで『崩壊』を共有したのは、そこから二年後。誤差は神側がいじってくれたが、藍葉へ渡した端末の中にリンクさせるのにはさらに三年はかかった。


 藍葉がメインで担当している『並行世界』とやらは、彼女が好んでいた北欧ベースのそれ。インターンシップを開始すると共に、成樹が他の並行世界(サーバー)に選ばせないよう……専門にしたのだ。



(……最近のポイ活に似せたが。予想以上じゃの)



 今頃怒られている美晴を軽く心配しつつ、藍葉のサーバーを見ている成樹はサーバーの『AI生命体』が自分そっくりなのに苦笑いしていた。

次回はまた明日〜

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