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52 第4番世界 愚痴る日もある

文字数見たら上げてもいいかと言うぐらいだったけれど、全く話は進んでいなかった。

此処まで話が進まないのは珍しいかもしれない。

「フィーナ、朝よー」

「うぅ~ん……」


神力生成した服を掴んだまま仰向けに寝ているフィーナのほっぺをツンツンすると、コロンと転がりシュテルに抱きつく。


「おぉ……」


ギューっと抱きつくわけだが、ハイエルフであるフィーナの身体能力もそれなりに高い訳で。

だいしゅきホールド(絞め技)である。普通の生物なら骨ボキボキである。鍛えていてミシミシ言うぐらいか。それでもフィーナの顔はふにゃっとしている。

フィーナからしたら寝ているので、力としてはソコソコ……程度である。表情に出るほど力は込めていない。


シュテルからしたらなんてことはないので、ゆさゆさして起こす。

『ん~……』ともぞもぞした後、体をプルプルさせながら伸びをして起きる。


「おはよう……お母様」

「ええ、おはよう」


着替えて髪も梳かして、食堂になっている1階へと降りる。



「あぁ~、全てが自分に都合よく回ればいいのにな~」

「おいどうした楓、何かあったのか」


食堂で、ボヤく清家にいきなりどうしたんだと問う長嶺がいた。


「私ですら都合良く回らないんだから諦めなさい」

「女神様でもダメかー」

「私は自分に都合良く回すからね」

「……手動かー……」


全てをコントロールする事は無理だ。いや、本気出せば可能かもしれないが面倒というレベルではないだろう。

そもそも世の中の事の大半が当人以外からしたらどうでもいい事だ。

都合の良いように回すと言うのは、自分にとって都合の悪い部分だけ良いように誘導する事である。


「自分にとって都合が悪いというのなら、変えればいい。人類皆そうしているさ。自分から自分にとって都合が悪いように行動するドMはそうはいまい。いや、当人からすればそれが自分にとって都合が良いのだから、やっぱいないわね」

「他の人からしたらしたらドン引きでも、ドMな当人は喜んで自分からその道を選んだんだもんね……」

「そうね。人生というのは如何に自分の周囲という小さな世界を都合良く回すか」

「負けた方が振り回されると……」

「別に自分1人で回す必要はない。親友とでも妻とでも、当人達にとって幸せな世界を創ればいい。それをどう作るかは人による」


他人に任せた時点で『その人の感性に任せる』ということだ。自分が思ってたのより多少違うのが来ても文句を言う権利はない。文句があるなら最初から自分でやればいいのだ。

これは全てに当てはまる。

自分に都合のいい世界を作るなら、自分で動くのが一番である。


「まあ、自分に都合良く動かせるだけの『力』を持ちなさい」

「『力』かー」

「綺麗事は何の役にも立たない。権力でも、財力でも、武力でもなんでもいい。『力』を持ちなさい。それがないと『綺麗事』のままで終わるのだから」

「結局何かしらは必要かー」

「でないと自衛すらできないもの。まあ人徳なども武器といえば武器ね」

「困った時に助けてくれるとか? ……でも死にそうな時に体張ってまで助けるなんてことは無いよねー……やっぱ第一は武力か?」

「武力はいいわよー。障害は薙ぎ払えばいいからね。まあ、そもそも命を狙われない立ち回りをしろと思うけれど。人間理不尽な怒り方するからほぼ不可能ね」


そもそも『一国の王』と言う時点でシュテルは暗殺対象である。

王が賢王だろうと愚王だろうと関係なく、一定数命を狙う奴はいるのだ。

まあ、アクロポリスの入り口である東西南北にあるセキュリティーゲートに入った瞬間、そういった者は人知れず消されるのだが。


「自分が強いに越したことはないけれど、強い人を味方に引き込めるというのも立派な武器ね。まあ、あなた達は順調に武力を得ている最中でしょ」

「おぉ! そうか」

「まあ、かと言って人の身で一騎当千は楽じゃないけれど……不可能ではない。我々の世界のSランク以上はそれぐらいに人間辞めてるのよね」

「まじかー」

「世界に二桁しかいないけど。と言うか大規模殲滅撃たれた瞬間、人の身だとほぼ死亡確定するからね。フィーナはあの弓で超遠距離射撃すれば終わる」

「大規模殲滅魔法って超級ぐらいのレベル?」

「上級の範囲攻撃魔法からそう呼ばれるわね」

「宮武頑張ればいけるな!」

「いやいや、詠唱中に殺られるし」


当然詠唱を何もしないで黙って待つなんてことはない。ヒーローとかの変身シーンじゃあるまいし。

弓やら魔法やら飛んできて詠唱の邪魔をするだろう。それらを捌きながら詠唱できなければならない。


「後は何より運次第ね。こればっかりはねー」

「結局運かー」

「私からすれば全て必然と言うか……そうなるな、って感じだけれどね」

「そうなの?」

「周囲の全ての人間を把握していれば、未来の推測は可能でしょう? 人の身ではそれが不可能だから『運』という言葉で片付けるのよ」

「あー……」

「とは言え、例え私でもあくまで推測。清家がボールを投げる時、どうなるかある程度分かるけど、確率の低い事は保留にして確率の高い可能性で推測する」

「確率が低いことはあまり考えないってこと?」

「そうね。面倒だし『この可能性がある』とだけでも思っとけば、そうなってもどうにかする力があるからね。この場合、清家からボールがすっぽ抜けてあらぬ方向に飛んでいく可能性。どの方向にどのスピードですっぽ抜けるかなんか面倒な事したくないから、『すっぽ抜ける可能性もある』程度ね」


例えば1対1の格闘ゲーム中。

所謂コンボを綺麗に決めた時テンションが上がるだろう。

それは一瞬のうちに決めた動きを綺麗にできた、上手くハマったということだ。

だがそこに第三者……例えば猫乱入という介入があってコンボに失敗した場合、運が悪いと思うだろう。

だが、それはゲームに夢中になり、猫という存在を忘れていただけだ。

コンボ最中というタイミングはともかく、最初から部屋に猫がいたのなら猫乱入という可能性は最初から十分にあったと言える。


時空を司るシュテルやその眷属達は猫の存在を忘れることはない。余裕を持って胴体や足、肘などを使って猫をブロックしつつコンボを継続するだろう。

ただ、正直そんな処理能力は人にはない。

時空を司り、空間把握が呼吸するのと変わらない事だからこそできる芸当だ。

最初から猫という存在を意識しているシュテルと、忘れていた者ではだいぶ変わるのだ。

とは言えだ……。


「私も大体『運が悪い』で片付けるけどね」

「「「えっ」」」

「年がら年中思考読んでると思うなよ面倒くさい……。基本的に人混みの他人と変わらないわ」

「……つまり興味ない」

「微塵もない。人生が上手くいかないのは自分のせいか周りのせいね。断じて神ではない。それをこちらのせいにするのは喧嘩売ってるのと同義。殺すわよ……」

「「うわー……」」

「まあ……誰だっていきなり『お前のせいだ!』とか言われたら『あ?』ってなるわな。心当たり無いなら尚更か」

「お前に都合の良い神がいるかって言いながら往復ビンタしてやるわ。あぁ~壁直すのめんどくせぇ~」

「「「……壁?」」」

「次元の壁」

「「「あぁ! 頑張って!」」」


机にぐでっとしながら愚痴り始めるシュテルであった。

長嶺、清家、宮武の3人にはどう足掻いても手伝いようがない事である。と言うか、眷属達でもこればっかりは無理である。


敢えて言い換えるとすれば……次元の壁修復とは絡んだコードや途切れたコードを周囲を気にして静かに年単位で直している様なものだ。

しかもコードにちょっかい出したのは他人どころか別世界の住人である。


「慈愛の女神も助走つけて殴りかかるレベル」

「女神様の身体能力で助走付きとかミンチになる気がする」

「なる……と言うかする。間違いなく目は笑ってない。視線だけで殺れそう……と言うか神眼なら殺れるか」


世界が滅びても神々は世界の神界から共用の神界に移れば何の問題も無いのだが。


神界には現状3個4個程種類……と言うか区切りがある。

まず1個は創造神様がいるところ。

もう1個は神々がうじゃうじゃ寛いでる共用スペース。

そして1個はそれぞれの管轄……世界ごとの神界。前の学校の例えだと教卓辺り。

後は神界との間的な輪廻転生を管理する冥界などなど。

シュテルは現人神と特殊なので、地上と創造神様スペースが基本行動範囲。基本的に他の神々とは会わなかったりする。


ちなみに、創造神様スペースはシュテル以外進入不可だ。

流石に創造神様も時が経ち制御できているが、ふとした拍子に消し飛ばさないとも言い切れないのだ。

よって、シュテルも創造神様スペースに行くときは多重次元結界を自分に張り巡らせてから行く。普段から次元結界自体は使ってはいるが、増々にしてからだ。

一緒に寛いではいるが、極稀に次元結界が数枚消し飛んだりする。

『ちょっとー』『ごめんごめん』とか実に軽いノリで言うが、普通なら上級神ですら消し飛びかねない代物である。

1枚の次元結界で絶対防御と言える代物だが、創造神様相手じゃ絶対防御(笑)である。1枚じゃ無いに等しいので次元結界を多重に張り巡らせる。

とても物騒である。



まあ、それはともかく。


「さて、食うもん食ったしギルドだっけ?」

「「だねー」」


シュテルはちょっと怖い……操り人形のような人じゃない起き上がり方をして3人をビビらせつつ、渋々ギルドへ向かった。


\宿から出て終わった/

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