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37 第4番世界 人は陸上生物

中々道中のイベントが思いつかず、書き進まない( ˘ω˘)

勇者達は東に2、西に2、居残り2の6パーティーになっている。

東に行くのは4人パーティーが2つなのだが……シュテルの付き添いがいるから8人以上いる。ヒルデ、フィーナ、エルザとイザベルだ。3パーティーと言っても良い人数である。


『馬車はケツがいてぇ』


という理由から、移動は徒歩になった。

サスペンションなどは付いていないし、道もちゃんと整備されている訳ではないので物凄い揺れるのだ。馬車は木造でクッションなどもない。振動がお尻にダイレクトで来る事になる。


そんな中シュテルはと言うと……素直に歩くわけもなく。ふわふわと重力操作により浮いて動いていた。

フィーナはマーナガルムに乗っている。これだけでかなりの防犯効果あり……。

マーナガルムは大人の男より遥かにでかい狼である。普通は怖い。


この世界、冒険者の依頼にランク自体は設定されているが制限はない。つまり己のランクに関係なく上の依頼を受けることが可能である。

ただし、自分のランクより上の依頼でランクに差があればあるほど、失敗時に払うお金が高くなる。まあ、生きて帰ってくればの話だが。

依頼ではなくとも倒してきた魔物素材の買い取りレートが張り出されている板もあるし、正直ランクは楽に力を示す物でしかない。

故に、ランクなんぞどうでもいいとシュテルは言ったのだ。


そしてマーナガルム。どこからどう見ても普通の狼ではない。

つまり倒せば素材が……と言う理由で狙ってくる可能性もなくはないが、可能性は低いと言えるだろう。

まず、マーナガルムの異常さに気づけないレベルの者なら見た目でビビる。ベテランならマーナガルムのヤバさに気づくだろう。いるだけで護衛になるのだ。




主に行商人に踏み固められた道を進む勇者一行。


「穏やかな風! 雲のない空! 広がる草原! そして聞こえる獣の声! ……うん? 獣の声?」

「そうだな。マーナガルムにビビって近づいてこないが、そこにいるな」

「……倒した方が良いかな? 魔物だし」

「ギルド持っていけば金になるし、良いんじゃないか」

「よし、狩るか!」


異世界を満喫しながら歩いていた長嶺がウルフの声に気づき、清家を連れて突撃していった。1体しかいないんだし余裕だろう。


持って帰ってきたウルフにヒルデが解体ナイフを刺し解体。空間収納へしまった。

それからもちょくちょく魔物の姿が目に入るが、全てマーナガルムにビビり奇襲を受けることはなかった。


「にしても凄い来るなー」

「だな。移動も油断できないなこれは……」

「予想より遥かにあれだね……」


一度で来る数は少ないから問題は無いが、結構な頻度でやってくる。

とは言え、現状スライムかウルフなので大した事はない。

資金もそれなりに余っているので、本格的な狩りはまだする必要も無く、歩いているだけでそれなりに来るので地味な稼ぎにはなりそうだ。


「でもこれだけ来るんじゃ安くなるんじゃ?」

「ほう、その辺りも分かるか」

「俺らがやってたゲーム、流通システムあったんだよねー」

「ああ、なるほどな。確かに安くなるだろうが、人間食べなきゃ死ぬんだ。ウルフの肉は一般的に食べられる肉だから、下限が決っている……はずだ」

「なるほどー……ならまあ、良いかな?」

「皮も一般的に使われるが、耐久がそこまであるわけでは無いからな。そもそも、稼ぐつもりならウルフ自体放置だろうよ」


空間収納という便利な物も全員使えるわけだし、全員少しずつ肉を入れておけば万が一という時には便利だろう。残りを売ればいい。


「しかしあれだな、仕方ないとは言え丸1日歩き続けるの飽きるな……」

「分かる」

「ほんそれ」

「『ユニエールさん……器用だよな……』」


シュテルはと言うと、書類達と一緒に浮きながら空中で仕事をしていた。

浮いてるのが武器とかならかっこいいとなるが、書類である。しかも重要な書類。

たまに空気椅子的に、空中で優雅に座りながら紅茶を飲んだりもしていた。


「《時空魔法》の《重力魔法》かー、面白そうだよなぁ」

「コスパ超悪いって聞いたけど?」

「重力操作中魔力消費するってことは、浮いてる間ずっとかぁ……」

「そう言えば《飛行》って無いの?」

「あるぞ。だがあれは飛べる種族用だからな。《飛行》スキルと魔法で飛ぶのは別物になる」

「そーなのかー」

「ユニエールさんは?」

「妾は《飛行》をスキルで持ってる方だな。この浮いてるのは能力の効果だから、《飛行》ではなく重力操作だ」


当然《飛行》スキルの方が飛ぶことに関しては有利だ。

《飛行》には風から本体を護るための効果も自動的に発動する。だが、魔法で飛ぶ場合……所謂飛行魔法だろうか。その場合は同時に風などから護る何かしらの方法も用意する必要があるだろう。

更に《飛行》と飛行魔法の違いは燃費だ。

飛行はそもそも飛べる種族が空を飛ぶだけ。鳥が空を飛ぶのと変わらん。

それに比べ飛行魔法は【魔法】だ。飛んでる間魔力を消費する。

《飛行》も全く魔力を消費しない訳ではないが、明らかに燃費に違いが出る。


「4番も10番も飛ぶことに関しては少々特殊でな。航空力学って知ってるか?」

「飛行機とかのあれ?」

「清家は何気知識人なのか? まあ、それであってるとしていいだろう。どう考えても、航空力学だけではドラゴンは飛べんだろう。あれは魔法法則も絡んでいる」


魔力を使い【魔法】で飛ぶが、翼が不要かというとそうではない。

スタビライザーの役割をするのが翼だ。

故に、翼のない人間が飛行魔法で飛ぶのと、翼のある種族が飛ぶのでは同じ『飛行』でもだいぶ勝手が違う。


「翼のある種族が飛行機。飛行魔法はミサイル……ではなくロケットだ」

「直進!」

「うむ。方向転換がそれなりに難しいのだよ。全て魔法で、魔力操作などで制御する事になる。それを助けるのが翼だ」


大体飛ぶものは1対で2枚だろう。鳥とかな。

だが、シュテルは3対で6枚だ。その分細かい姿勢制御が可能となる。

翼の枚数と大きさがそのまま飛行能力を示すと思っていい。


「翼が大きい方が安定性があり、枚数が多い方が複雑な動きができる。スピードは保有魔力量や魔力操作、形状が影響する」

「空の敵は翼で大体強さが分かるかな?」

「大体はな」

「そう言えばユニエールさんの翼、かなり大きいよね? 広げてるの見たこと無いけど……1対?」


シュテルは通常時、でかい1対に見えるように畳んでいる。その為、実は広げないと3対とは分からなかったりする。

畳んでいる状態でも身長よりでかいのは分かる。上は頭から飛び出て、下は地面スレスレだ。


「ふむ。別にそこは隠しているわけでもないからな、見せてやろう」

「『……でかっ! しかも3対!』」


広げた翼のサイズはシュテルの2倍以上のサイズがある。

翼自体は真っ白だが、光の反射で虹色に見える自然神の影響が出ている。


「あれだね! セラフィムみたい!」

「いや、妾女神。妾の方が格上」

「…………そうだった」

「セラフィムの翼はこれよりかなり小さいしな」


他に見られると説明が面倒なので、早々に翼は隠してしまう。

目は6番世界のように偽装した。


「飛べなくもないけど、かなり大変かー」

「でも魔力だけで個人飛行できるかもなら全然ありじゃね?」

「まあ……そうか。要練習だな!」

「浮遊や滑空自体ならそれほど難しくないから、やるならまず浮遊。次滑空。そして飛行だな。最終的に空中戦ができるようになれば上出来だ」

「『地上戦が先だな!』」

「よろしい」


地上の生物なのに地上戦がろくにできない場合、空中に行ったところで的でしか無いだろう。この世界は飛行の魔物とているのだ。

魔法もまず他の魔法を満足に使えるようになるのが先だ。


つまり、勇者達が地上の生物を辞めるにはまだまだ早い。


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