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閑話01 王妃の独白

元々27話を書いてる時にあった文だったのですが、これだけで2000文字。

1話行けるな? と言う事で閑話行きに。

本編と同時更新されています。

どことなく、憂いを帯びた顔で頷く王妃。

若い頃は頑張っていたようだが、それが逆に王のプライドを傷つけたのだろう。

王妃という唯一、王に対し物を言える立場。妻という立場で夫にしたアドバイスは王の劣等感を加速させた。逆効果になってしまったのだ。

そして丁度お腹に子がいたため、政から離された。


とは言え、優秀だからこそ王妃に選ばれたのだから、それで大人しくなる王妃では無かった。子を身籠りながらも、王のサポートを。

王妃は優秀だった。いや、優秀過ぎた……と言うべきか。

正しく『王妃』なのだ、彼女は。



ノブレス・オブリージュ。

王妃……王族の一員となったからには、義務を果たさなければならない。

例え夫たる王に嫌われようとも、やらねばならない。民のために。

表がダメなら裏から手を回すのだ。王が出した物を、後で密かに改良する。

ただそれには協力者は必要不可欠。口が固く、信用でき、国を想う者。

お腹も膨らみあまり動き回れないが、だからこそ今のうちに……産んで動けるようになった時、動けるように手を回しておく必要がある。

そして、やはり優秀な者には付いてくる者がいるのだ。人格に問題が無いなら尚更である。協力者を得た王妃は一先ず安心して、子のために大人しくした。

そして王子を産んだ後、予定通り動き出した。


だが、王は増長していった。俺はできるんだと。上手くいっているじゃないかと。

上手く行くように王妃が後から裏で手を加えていると気づかずに。


そして王妃は、そんな王を見限ってしまった。

子供も乳母に任せきりではなく、王妃自ら乳母と共に育てていった。

王子と王女はすくすく育ち、王妃に似てとても聡明で優秀な子。

大きくなった子達すら時には使った。


実に順調だったが……ここで問題が発生した。

そう、魔王……勇者召喚である。

王妃も伝承で知っていた。と言うか、子供の頃に誰でも聞くのでは無いだろうか。

勇者と魔王の物語を。

王妃は急いで城の……王族の資料を漁った。子供用の『物語』ではなく、歴史を。

そこで召喚魔法や約370年前の被害を知る。同時に問題点を導き出し、理由は分からないが神々の加護が薄れているという。


誘拐か誘拐じゃないかは判断できない。加護の薄れも気になる……。

どちらにしても魔王を倒すには勇者は必要で……かと言って、今の我が国の戦力で防衛できるのか……。

勇者が魔王を倒しに行くなら、その間勇者無しで防衛する必要がある。そもそも、勇者の人数は毎回違うようで……全ての村、街に勇者を配置する事などどう考えても不可能である。


反対しようにも納得させる材料がない。

裏から手を回そうとも、勇者召喚は誤魔化しようがない。

そうこうしてるうちに、召喚が行われてしまった。

そして初日で知る。これは向こうの意思に関係ない誘拐なのだと。


それからと言うものの、なるべく勇者達の回りにはこちら側の者で固められるよう手を回したりしていた。

そしてシュテルの存在が頭を悩ませる。初日といいその後といい、他の勇者達とは違いすぎるのだ。間違いなく上流階級の令嬢、下手したら王族。

物凄いやりづらいのだ。王妃は表立って動けないなど制限が多すぎる。


そんなこんなしているうちに学園……だが、これも手は出せない。

王妃の立ち位置ではどうしようもない。


更に今度はスタンピードである。

これもどうしようもない。策は明らかに穴だらけだ。最悪と言ってもいい。

不確定の少数戦力のみに街1つ任せるなどあり得ない。

しかも北の領地はこの国にとっても重要な領地にも関わらずだ。しかも理由も理由だ。酷すぎる。勇者達の強さを見るため。騎士団はお金がかかる。

そして……辺境伯の勢力を削ぐ。……こんな時にまで権力争い。

最悪の場合、勢力どころか勇者を全て亡くし、重要な領地まで失いかねない策……それに気づきながらも手が出せない自分が腹立たしい。

魔物の素材……肉や魔石は勿論皮など大半がこの領地からだと言うのに……。


これが、平和ボケ。恐ろしい。もし呪えるのなら、呪っているかも知れない。

何もできない事が非常に腹立たしい。ただ帰りを待つことしかできない。


あぁ……神よ。どうか彼らをお護り下さい。


加護が薄れていると言っても、完全に無いわけではない。だからどうか、彼らだけでも……祈らずにはいられない。祈ることしかできない……。

騎士団なんて目立つもの、動かすのは不可能だ。


そして、勇者達に付けた護衛騎士が帰ってきた。

我が子達と聞く報告は衝撃的な物だった。にわかには信じがたいが、報告する騎士達は震えていた。そして最後に言う、『敵対したら国が滅ぶ』と。

ドレスを着た、まるで作り物の様な少女。目を閉じているが、全く動きに迷いのない不可思議な少女。

我が国はいったい『何を』召喚したのでしょうか。

……首を差し出すことも、考えねばならないでしょう。国王と王妃の首で満足して貰えるでしょうか。しかし、我々王族の首を差し出せば民は助かるのなら……。

あぁ……なんと薄情な母でしょうか。普通は我が子に温情を願うべき……しかし王家なのです。芽は摘むでしょう、間違いなく。

……聡明なのも考えものです。こういう時ぐらい、母に甘えて欲しいものですが……そう育てたのもまた私。


どうなるか分からないけれど……やれるだけ、やってみせましょう。

だいぶ予定は変わりましたが、王を変える密かな計画が早くなっただけですから。


という事で、あの父にしてあの子供……な理由は母と乳母の影響。

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