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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
2章 『王都の冒険者見習いたち』編
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第129話 11歳(春)…決闘のご案内2

「それでご主人さまを決闘に引きずりだして、どうしようと?」


 罠については理解したようだが、その目的については思いつかないのか考えるのが面倒なのか、シアはさらに尋ねてくる。


「そんなのうちを下に置きたいからに決まってんだろうが。ってことは、シアをよこせってのはけっこう本気なんだな」

「行きませんよ!?」

「行くつっても行かせねーな」

「え!?」

「メイドであるかぎりは」

「えー……」


 なんかシアが不満そうな顔をしていたが無視する。


「ねえねえ、なんでシアをよこせってのが本気なの?」


 ミーネの問いに、おれはため息混じりに答える。


「一応、こいつおれの妹なんだよ。レイヴァース家の一員。その娘を奪って息子の嫁にすれば周りには立場が上だって知らしめることができるだろ? で、ならどうしてセレスじゃなくこいつなんだってことになるんだが、それはこいつを()()()娘だと思ってるからだ。養子だからこの話を飲みようがあるとふんでるんだろ。ったく、母さんが知ったらブチキレるぞ……」


 ウィストーク家に殴り込みくらいするかもしれん。

 恐ろしい。


「つまり、叩きのめされて両家の立場が完全に周知されるのが嫌ならシアを差しだしてそこそこの周知で折れろ、ってことだな」


 今頃、ウィストーク家の連中はやってやったとばかりに大喜びしているのだろうか?

 まったく、ふざけた真似をしてくれる。

 しかし――、なにか釈然としないものを感じる。

 うちを下に置いてそんなにいいことあるのかね?

 レイヴァース家を傘下におさめ、その威光でもってさらなる権力拡大を望む? 

 うーん、いまいちしっくりこない。

 そんなことしないでも、そもそも三百年以上昔から情報の重要性を理解してたってんなら、もう現在は情報を牛耳ってのやりたい放題になってんじゃないの?

 とりあえず、もうちょっと姉さんから情報を聞きだそう。


「ミリー姉さま、ウィストーク家ってどんな貴族なんでしょう? 周りの評判や、どんなことに取り組んでいるとか」

「貴族のあいだでの評判は良くありませんね。しかしそれはウィストーク家が悪辣というわけではありません。むしろ逆で、後ろめたいことのある貴族に恐れられ、嫌われていますから、その印象が広まってしまっているんです。ウィストーク家は悪評を望んでいるところがあるので、その風評を覆すようなことはとくにしないんです」

「……あれ? と言うことは、ウィストーク家はよからぬ企みをくわだてる貴族を取り締まる側なんですか?」

「ええ。そう考えてもらって問題ありません。ウィストーク家は情報を扱うことに非常に厳格で、情報戦という見えない戦いにおいてこの国に貢献してくれています。それゆえに、形なき王国の盾と呼ばれていますね」

「あれー……?」


 おかしい。

 ちょっと想定と違いすぎる。

 もっと野心を滾らせた家かと思ったが、どういうことだ。

 そもそも情報を牛耳っている者が腐敗せず三百年以上清廉潔白でやってこられるものか? シャロ様が存命の頃はまあいいとして、それ以降となるとどうしてもその志は劣化していくものだ。

 例えばそれはアメリカの若き英雄が晩年には情報の魔物となったように情報の持つ魔力に魅了されないわけがない。

 それにこの世界には情報の集積に対しての法的な規制などない。

 なのにどうして情報の力に溺れないでやってこられたんだろう。

 ちょっと想像を超えるぞ。

 そして、どうしてそんなまともな家が罠まではって決闘を望んだんだろうか。

 悪評を気にしないなら負けっぱなしでもそれほど問題ないはずだ。

 あざ笑われようとも実際の影響力には影響を及ぼさないし、むしろ侮ってもらったほうがやりやすくなる。

 なんか……、決闘する意味がぼやけてきた。

 もちろんただの酔狂なんてわけはないので、なにかしら目的はあるのだろうが……、はて?

 レイヴァース家に決闘を挑む理由……。

 いや、もしかして家は関係ないのか?

 おれか。

 おれが目的か。

 決闘に引っぱりだしてレイヴァース家を継ぐであろう、おれという人物を確かめるためか?

 つまりはおれを試すため?

 ん?

 ()()()()()

 ふと、一昨年王都に来たとき頼んでもいないのにおれを鍛えるとか言いだした恐いお姉さん――ロールシャッハのことを思い出した。


「あのー、ミリー姉さま、ちょっと聞きたいんですが……」

「なにかしら?」

「ローなんとかっていう、シャーロットに関わりがあって、今は冒険者ギルドの裏方やっている恐いお姉さんをご存じでしょうか?」

「あら、もう気づいたの?」


 ミリー姉さんが驚いた顔で言う。

 当たりか。

 当たりなのか。


「辿り着いたならもう黙っている必要はないですね。ええそう、今回のことはお姉さまの企みなんです。ウィストーク家にとってお姉さまは影の当主のようなものですから。いえ、王家にとってもそうかもしれませんね。私だけでなく、御父様も、御爺様も、曾御爺様も、お姉さまは王家のお姉さまなんです。そしておそらく、世界中の」

「えー……」


 とんでもねえ京都の老人もいたもんだ。

 とにかく事情は把握できた。

 今回はロールシャッハがおれを試すために仕掛けたことだ。

 しかしそうなると……、ヴュゼアはホントいいように振りまわされただけだな。

 きっとこれまでも家の悪評のせいで大変だったに違いない。

 なんてこった。

 そうと知っていればもっと友好的に接していたのに。

 いやまあ弟を貶めた罰は当然だが、その後なにかしらフォローくらいはしていただろう。

 この騒動が無事片付いたらちゃんと話をしてみよう。


「しかしあの人が関わってるとなると……、どんな代理人がくるのか不安なんですが……。ぼくも代理人って認められますか?」

「あ! 私やりたい!」


 びしっ、と手を挙げたのはミーネだ。

 しかし――


「ミーネちゃんごめんね、代理人には条件があってその親族の男性でないと駄目なんです」

「え、それって……」


 シアは女だからダメ。

 父さん呼んでも間に合わない。

 おれが出るしかねえじゃん。


「まあご主人さまが勝てばいいだけの話じゃないですか。指を鳴らしてそれで終わりでしょう?」

「なんの対策もなしに決闘を挑んでくるとは思えない。むしろ都合がついたから決闘の話がきたんだろ」


 雷撃無効なんて装備とか持ちだしてきても驚きはしない。

 なにしろシャロ様の精霊、そして冒険者ギルドの裏の支配者だ。


「ところで僕が勝ったらなにかいいことはあるんでしょうか?」

「特にないですね」

「…………」


 やる気の湧かねえ話だな、おい。


※表現と誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/01/20

※脱字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/04/14


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[一言] やっぱりー、、、。
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