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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
2章 『王都の冒険者見習いたち』編
120/820

第119話 11歳(春)…適性占い師

 訓練校での授業が終わったあと、食文化の調査もかねて料理店へと足を運ぶようになって気づいたのは、どうやらこの国の食の中心にあるのはシチューだということだった。

 各料理店にはそれぞれの味のシチューがあり、セットには必ずシチューがついてくる。

 適当な野菜、そして適当な肉、そこに小麦粉でとろみを加えるところまでは各店同じだが、そこから風味をつけるための香辛料などはそれぞれ独自のものであり、それがその店の味となっていた。

 ならば、とおれは密かに期待する。

 どこかにカレーみたいなシチューがあるのでは……!?


「それじゃあ後でね!」


 昼食をすませておれとシアはメイド学校へ、ミーネは訓練校へと戻っていく。

 これまでならミーネも必ずくっついてきていたが、冒険者の先輩たちを伝説にしようとして正座させられた事件以降、マグリフ爺さんに教えをこいに行くようになっていた。

 どうやらマグリフの魔法に打ち勝てなかったことがショックだったようだ。

 とは言えミーネは魔法自体は使えないので、魔法を使う際のコツのようなものを授けてもらいに通っている。

 爺さんは土の魔法が得意なので、特にアースクリエイトを使う際に心がけていることを伝授してもらっているらしい。


「そのうち訓練場に砦を建ててみせるわ!」


 ミーネはそんな事を言って息巻いていたが、どう考えてもそれは迷惑である。

 もし建てたとしても、すぐにマグリフ爺さんによって平らな地面に戻されることだろう。


「ミーネさんて、強くなることにはびっくりするほど真摯ですね」


 入学試験の日、ミーネと試合して勝ったシアはその日からひたすらミーネに試合を申し込まれ続け、そして戦い続けていた。

 さすがのシアもこれにはうんざりして――


「ちょ、待ってくださいよ! ここのところ毎日じゃないですか! わたしはもっとだらだらと王都生活を満喫したいんですよ!?」


 ある日、音を上げて本音がだだ漏れになった。


「えー……、あ、ねえねえ御主人様、シア借りていい?」

「どうぞどうぞ、なんならそのまま家に持って帰ってもいいぞ?」

「そこまではいらない」

「いやそこは、いいの!? ――とか嬉しそうにしましょうよ! 嘘でも! 人を強引に戦わせようとしておいて、どうしてそこで引くんですかね! というかご主人さまも専属のメイドをほいほい貸し出すとかどういうことですか!」


 ――などと、シアはぷんすかしながらも結局はミーネにつきあって試合をする。

 シアとミーネがメイド学校の訓練場でぶつかりあう風景はそろそろ日常的なものになりつつあった。


「ミーネさんて、俺より強い奴に会いにいく、を地でいってますよね。それでいいのかお嬢さま、って気がしないでもないですが……」

「うん、それな」


 そうは思っても訴えるところがない。

 奴の家はむしろ推奨するような家なのだ。


「ここしばらく戦ってみてミーネはどんな感じだ? まだおまえには勝てないようだけど」

「このまま続けたらわたしを捉えるとこまではきますね」

「はあ!? ちょっと待て、あいつっておまえと試合するようになって一週間くらいだろ? それでそれ!? どんだけ戦いの申し子なんだよあいつは!」

「いやいや、お父さまのようにはいきませんよ? ひとまずわたしの攻撃を避ける、わたしに攻撃を当てる、くらいの話ですから」

「いやそれにしてもすごいだろ……」


 シアに負けまくっているおれだからこそよくわかる。


「あれですよ。〝好きこそものの上手なれ〟」

「すごく納得できるけど、おれその言葉嫌いなんだよな」

「おや、そうなんですか?」

「おれの場合はあれだからな。〝下手の横好き〟」

「そ、そうですか。じゃああの、ご主人さまの好きな言葉は?」

「〝人事を尽くして――〟」

「ああ、そ――」

「〝後は野となれ山となれ〟」

「――んなのありましたっけ!?」


 シアが愕然とするが、おれは知ったことかと鼻を鳴らす。


「おまえおれが〝天命を待つ〟なんてガラに見えるか?」

「そう言われると……、すごくご主人さまっぽい言葉ですね……」


 そんなしょうもない会話をしながら、おれたちはメイド学校へ戻る。

 それからおれはひと休みして本格的に仕事――冒険の書の二作目の作成と、さまざまな発明の考案――に取りかかる前に、メイドたちにおやつを用意する。

 なんでおれがメイドたちのおやつを作っているんだろうと思わなくもないが、しかし、このおやつこそがメイドたちからの敬意の源とあっては、おれは作らざるをえないのである。


    △◆▽


 王都で生活を始めて二週間ほどたったその日、おれはいつもより早く訓練校へと登校した。

 シアとミーネは放置。

 あとから普通に登校してくるだろう。

 訓練校に到着したおれは職員室へと向かい、そこで朝の職員会議に出席する。

 なぜ職員会議に出席するのか?

 答えは単純。

 今日からおれは生徒ではなく先生になってしまったからである。


「ではまず伝えることは彼についてじゃな。本日からレイヴァース卿は本校の臨時教員として働いてもらうことになった。まあこれについて異存のある者はおらんじゃろ? ここ数日、彼に教えることがないからどうしようなんて議題がでておるくらいじゃったからな」


 マグリフ校長の話に、うんうんとうなずく職員たち。


「では次に、儂が受け持つことになった生徒たちについてじゃが――」


 と、マグリフ爺さんにより会議は進行していく。

 おれはぼんやりと、この状況に陥ったきっかけについて考えた。

 もうちょっと注意深くやっていれば、こうはならなかっただろう。


    △◆▽


 事の始まりは生徒たちに懐かれ始めたのがきっかけだった。

 冒険の書の制作者ということで生徒たちはおれに妙に懐いた。

 始めこそ遠巻きにおっかなびっくりで接触してきたが、おれがそう恐ろしい人物でないとわかるといっきに群がった。

 怯えられる状況をどうにかしようと、一度、放課後に冒険の書の勉強会を開いたのがきっかけだったような気がする。

 以降、あれこれと修学に関しての質問をされるようになり、気づくとそれはクラスメイトだけにはおさまらず、BからFまでのクラス、それどころか去年入学した先輩方まで押し寄せた。

 近い将来、冒険者として生きていかなければならない子供たちは学ぶことに貪欲だった。

 この訓練校で一緒になったのもなにかの縁と、おれは出来るだけ生徒たちの質問に答え――、あるとき、一人の生徒が言った。


「あのー、僕ってどんな武器を使ったらいいと思いますか?」


 そこでおれは、これだけ懐いているならばと試しに〈炯眼〉を使ってみた。

 結果だけ言えば丸見えだった。

 誰も彼も丸見えだった。

 どいつもこいつも好感度が高く、まるで無邪気な子犬の群れ。

 いや、地面にひっくり返って腹を丸出しにしている子犬の群れか。

 おれは成長を促すことはできないが、どんな武器に適性があるかどうかくらいは調べることが出来る。

 だからそれとなくこんな武器はどうかと勧めてみた。

 おれに勧められたからとその生徒はその武器の修練に励み、才能があるから当然熟練も早い。

 結果としておれはますます懐かれ、気づけば先生扱いされるようになっていた。

 めずらしく〈炯眼〉が大活躍するなか、気づいたことがある。

 それは能力値は『並』が当たり前ということだ。

 ちょっと鈍くさい奴、機敏に動く奴、力の強い奴、それぞれ特徴があるにも関わらず身体資質はみんな『並』だ。

 どうやらこの『並』の範囲はかなり広いらしい。

 つまり『優』だの『有』だのは、基準から逸脱した場合に表示されるものなのだ。

 両親、弟妹、シア、ミーネと、わりと当たり前に『並』以外の表示がついている者ばかりだったのでこれまで気づかなかったが、実はおれの周りには化け物級に優秀な者ばかりが集まっていたようだ。

 今回の発見はおれにちょっとした希望をもたらした。

 おれも身体資質が『並』ではあるが、幼少よりみっちり訓練を受けているのでここの生徒たちに比べればかなり身体能力が高い。

 つまり『並』とはいえ努力の成果はちゃんとでているのだ。

 ちゃんと訓練を続けていけば限界突破した超人は無理でも、一般人よりはかなり上、くらいにはなれるかもしれない。


「……あれ?」


 評判が評判を呼び、放課後になると生徒たちが適性を教えてもらおうと集まるようになった。

 なんだか行列のできる占い師になったような気分だ。

 なかには特定の武器に適性のない生徒もいたが、逆に意外な才能を持つ生徒もいた。

 魔法だ。


「あ、あの……! わ、わたし、どうかしましたか……?」

「あ、いや、とくに悪いことがあったわけじゃないから」


 しまった。

 ちょっとびっくりして、声を漏らしたがために怯えさせてしまった。

 診察していた医者が「あれ!?」とか言ったらびびるもんな。


「ちょっと面白い才能があるような気がしてな。またそのうち調べるために呼ぶよ。いや、ホントに悪いことじゃないから泣かないの!」


 半泣きになってしまった生徒にそう言ってひとまず帰らせる。

 なにしろ長蛇の列。後ろが詰まっている。

 じっくり調べている時間はないのだ。

 適性判断は放課後から深夜まで及び、連続三日で四百人ほどの生徒――、訓練校生のほぼ全員を調べることになった。

 正直疲れ果てたが、本当に馬鹿みたいに懐いてくる奴らばかりだったので、つい庇護欲が湧いて頑張ってしまった。

 適性判断が一段落した翌日、おれは魔法の適性を持っていた六人を集め、ちょっとした実験を行う。

 ライトの呪文を唱えさせてみるという、本当に簡単な実験だ。

 結果から言うと六人全員がライトの魔法を発動させた。

 そして騒動になった。


忙しくなってしまったため、しばらく更新が二日に一回になります。

書く時間が足りなくて……。


※誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2020/02/03

※さらに誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/09/14



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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば、最初に絡んできたAクラスの三人組は、どうなったのでしょう?
[一言] 読み始めとても面白く感じていましたが、 最近なぜか、なにが面白く感じていたのかが分からなくなりました。主人公のすることが読み手と噛み合ってなかったのか、 周りのキャラに読み手が静かにストレス…
[気になる点] 119話のタイトル「適正占い師」は「適性占い師」が正しいのではないでしょうか。 [一言] 章タイトルは誤字報告機能が使えないようなのでこちらでお知らせします。
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