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顔合わせ

 どうにも釈然としない気分のまま、ノアとも別れ、指定の場所に向かう。

 私の集合場所は、第二倉庫前。この前ベルタが大活躍したところだね。


 最近日常生活では、予言を降ろすのを控えて大きな流れに任せるようにしてるけど、今日のイベントは自重するつもりはない。動く人数が相当数いるし、絶対に人死にを出さないよう自分のできる全力で当たる。

 なんだかんだで教師陣にも私の正体に気付いてるのは多いらしいし、責任者の校長からしてそうなんだから、大いに後始末(フォロー)を期待しよう。


 スタート地点になる倉庫前には、すでに十数人の人影が見える。

 今日明日を一緒に避難訓練することになるグループのお仲間たちだ。基本的に戦闘職、非戦闘職は、各グループごとに、不公平がないよう大体同じ配分になっている。

 学園の生徒ならお互い顔くらいは知っているけど、知らない顔もちらほらとあるのが、この雪中行軍イベントの一番の特徴。


 戦闘職の学生の任務は、災禍において、無力な一般人を守るという想定になる。過酷な環境下で、戦闘ではなく護衛に徹することが最大の課題だ。


 というのも、学園生の騎士、魔導師やその見習いたちは、入学までは領地でがっつり鍛えてきてるとはいえ、磨いてきたのは魔物と戦う技術ばかり。人を守るというミッションは、このイベントが初めてという半人前が意外に多いのだ。


 運動能力が劣り、集団行動にも慣れていない一般人の集団を、守りながら全員無事に率いて移動するという困難を、初めて味わうことになる。

 足並みが揃わない行軍は遅々として進まず、怪我でもされれば、たちまちストップ。被災者役の体力や運動能力もバラバラ。そんな中で襲ってくる数々の罠。


 普段危険な状況下では、戦闘能力を有した仲間とばかり行動していた戦闘職の卵たちは、ここで騎士と一般人の違いを改めて認識させられる機会になる。

 慣れない相手と臨機応変で息を合わせ、居合わせた見ず知らずの護衛対象をうまくさばく経験を積ませることが、雪中行軍イベントの大きな目的の一つなのだ。


 もちろん非戦闘職の学生も、和を乱さないように協力して付いていかなければいけない。こちらはこちらで逃れられない別の困難が待ち受けていたりするから、結局どちらも大変なんだけどね。

 

 さあ、お待ちかね、チームメイトとの顔合わせ!


 訓練目的の性質上、反りが合わなかったり苦手な相手をあえて同チームにぶっ込むのが学園の方針。

 私は誰が来ようが気にしないけど、私を苦手だという生徒はそれなりにいるかもしれない。いまだに完全な素の状態は仲間内にしか見せてないから、イベント中は()()()()()()()()()()でいく予定だしね。


 さて、誰が入ってくるのかな? 私も生徒として参加する以上、メンバー編成に手を回したりとかのズルはしていない。

 ここで初めてメンバー編成を知って、「こいつかああああっっ!!?」てなるお約束も醍醐味の一つだからね。

 いつもは決まった仲間と一緒にいることが多いから、普段接点のない生徒と同じチームになって行動するというのもちょっと楽しみだ。


 集合場所の面々は、やってきた最後の一人が私であったことに、幾分ざわりとした。

 マジか――なんて心の声が聞こえそう。彼らの内心の悲喜こもごもを知らん顔で観察するのが面白いんだから大いにやってくれたまえ。


 メンバーは私を含めて全部で十人で、やっぱりほとんどが普段の交流がない顔ぶれだった。同学年の子ですら顔と名前を知ってる程度。魔導師のノーラと、騎士のアンディだったかな?


 直接話したことがある相手は、二人しかいなかった。

 一人は夏の森林サバイバルでバッティングした三年生のライアン。

 ジェイド・ハンターのパーティーに引きずり込まれて難儀してた頭脳労働担当の優等生だ。今回はメンバーにハンターいなくてよかったね。代わりに私がいるけどね!


「ど、どうも……その節は……」

「おはよう。今日はよろしくね」


 引き気味に挨拶され、私はあたかも重役出勤してきた上役かのような挨拶を悠然と返す。

 一年生の態度じゃないけど、当然意識的にやっている。初顔合わせからマウンティングは始まっているのだ。ここで不必要に謙虚な態度だと、グループの立ち位置が決まっちゃうからね。

 ――っていうかすでに姫と従者の空気になってるし。君は頭の出来は抜群なのに、気が弱いのがもったいない。


 で、もう一人が……。


「お、お前か……」


 こいつかああああっっ!!? ――って、早速されちゃったんですけど。


 ソニアの従兄の『兄様三人衆』の一人だよ。なんとも予想外なとこが来たな、おい。

 私の顔を見た瞬間のあからさまな「うっ」って表情。なんだねその反応は、失敬だな。隠す気もなしだなんて、なんだかとっても愉快になってくるじゃないか。


 私は逆に最高の笑顔で挨拶をする。


「あら、あなたもいたのね。よろしく。ええと……」

 

 名前は確か……なんだっけ? ソニアとの会話でよく聞いてるんだけど――コーディ……あれ? ショーンだっけ? それとも……。


「クライヴだ!」

「ああ、そうそう、クライブ兄様」

「兄様って言うな! あとクライヴだ!」


 そんな忌々しそうに言わなくてもいいでしょーが。ちょっと三択に迷っただけじゃん。


 私は何とも思ってないけど、どうも向こうはいまだに私に苦手意識を持ってるらしい。学園は完全に、こいつに私をぶつけて来たな。

 子供の頃ちょっと口でやり込めただけなのに。


 ああ、でも入学直後に、ソニアをうちのパーティーにヘッドハンティングしちゃったっけ。

 そういや、新歓バトルロイヤルでは、不意打ちで秒で退場させちゃったかも。

 そうそう、急にソニアを誘って、兄様たちとの約束ドタキャンさせちゃうこともよく……って、あれ? 意外とやっちゃってるかも。


 まあ、改める気はないから別にいいか。


 下手したら、性格の悪い私に、嘘八百の告げ口されちゃうかもしれないぞ。ソニアに嫌われないように、せいぜい態度に気を付けろよ! と、視線で語っておく。

 通じたようで、すごく渋い表情が返ってきた。


 率直な感想として、全般的に可もなく不可もない面子が揃った感じだね。無難だけど爆発力はないというか。

 大体1グループに一人は問題児が混ざるもんなんだけど。


「…………」


 全員の視線を受けて、はたと気付く。


 ――っていうか、私がその役どころか!? こいつは盲点だった!!


 良くも悪くも目立ちがちな私の加入に、他のメンバーもどう受け止めればいいのかと困惑気味だし。頼れると喜ぶべきか、トラブルの種と距離を置くべきか、って感じ?


 そもそも私は、普段だってこういうイベントごとだって、もれなく超優等生なんだけどなあ? 問題を起こしたことなんてないはずだ。私からは。

 真面目な話、周りの評価はちょっとおかしくなってると思う。同じチームでむしろラッキーと思うべきでしょ。学園に入る前の評判が悪すぎたのかな?


 それにしても、学園は本当に性格が悪い。

 多分敷地内のあちこちで、同じようなやり取りが繰り広げられてるはずだ。普段反発し合ってる間柄ほど、高確率で組まされる。ストレスをガンガンかけてくるスタイルだ。


 そして学校行事でありながら、紛れ込んでいる()()()()()()()()が二人。


 これこそこのイベント最大の特筆事項、ボランティアさん。


 より現実的なシチュエーションに近付けるため、同じ避難者の設定として外部から協力いただいているのだ。

 それぞれのグループに老若男女問わず数人ずつ組み込まれている。

 学生同士では培えない、彼らとのコミュニケーション能力や、即時の対応力が試されるわけだね。


 更に、採点者としてうちの第8グループに同伴する学園職員が二人。

 一応一緒に避難する一般人の位置付けにはなるんだけど、審判なので例によって基本的にいないものとして扱われる。

 私の担任のデリンジャー先生と、事務のティナさんだった。


 熱量のベクトルが正反対の視線が、私に向いている。

 デリンジャー先生の淡々とした無感情な態度が、むしろほっとするわ~。


 そして強力な意志の力で、冷静さを装っているティナさん。

 痛い、痛いよ、ティナさん。なんか内心の狂喜乱舞が透けて見えちゃってるよ。なまじできる女風なだけに、こっちも見てるのが辛いというか。

 この人が私のストーカー予備軍であることは、誰も気付いてないからなあ。ティナさんの名誉のために口外してないせいで、同じ班に組み込まれてしまった。


 一抹の不安……。

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