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 しばらく集中してデザインを描き続けてから、一休み入れる。

 やっぱりベッドの上だと肩が凝る。ノートとペンを置いて、大きく伸びをした。


 今頃みんな王城で何やってるんだろ?


 昨日の件で働いてた学園のお仲間たちは、今日は事後処理に駆り出されている。

 マックスはもちろん、ヴァイオラ、ガイ、アーネストは森林公園での作戦に参加してた。

 ソニア、ダニエル、ティルダは、闘技場での対ヒュドラの戦闘に加わってたし、ノアはアイザックと一緒に現場に待機。

 ユーカは言うまでもなく両面での大活躍だったし。その分まとめる報告も多いだろうな。

 今頃みんな忙しくしてるかな?


 ある意味事件の中心にいた私はといえば、表向き病欠でこうしてゴロゴロしている。なんか悪いな。

 大した症状でもないのに寝室に押し込められてるのは、それはそれでキツイけど。叔父様の過保護には私も逆らえん。


 そして無駄に考える時間があると――つい、昨日のことを思い返しちゃうのだ。

 苦さと同時に、胸の内の大騒ぎが止められなくなって困る。


 ちょっと浮かれすぎな自覚はある。

 いったん認めたら最後、えらい勢いで気持ちを持ってかれちゃってて、自分でもどうにもならない。まったく参った。

 長年生徒の青春をニマニマ見守ってたけど、恋する乙女はみんな大変だったんだなあ。


 これに関しては、大きな課題が残ってるのも気掛かりの一つ。


 昨日は帰ってすぐ、マックスとだけ話し合ってから休んだ。今朝も微熱のせいで、朝食の席には出ていない。

 ゆっくり語り合う時間がなくて、キアランとのこと、まだ伝えられてないんだ。叔父様にどう報告するべきか……。

 私が本気だったら、快く認めてくれるだろうとは思うけど、ちょっと照れるというかなんというか……。

 男親に初めてのカレシの報告するのって、なんかハードル高くね? なんせ人の何倍も長い人生で初めてのことだし。

 トリスタンはまあどうでもいいや。


 ってか、マックスですら気付いたんだから、トリスタンも叔父様も、私がキアランと帰宅直前まで一緒にいたのを察知してるのはほぼ間違いないんだよな。

 私の報告待ちなのかもしれないと思うと、余計切り出しにくい。


「――!?」


 頭を悩ませ始めたところで、突如として浮かぶビジョン。思わず意識を持っていかれる。


「えっ、キアラン!?」


 王城の通路を一人で歩いている姿の映像が、頭の中にはっきりと流れ出す。


 別に恋する乙女の妄想なわけではない。リアルタイムのビジョンが見えちゃってるんだ。つい思いを馳せちゃったせいかな?


 お互いにカッサンドラの守護石持ってるから、繋がりやすくなってるのかもしれない。映像はこっちからの一方通行だけど。

 なにコレ便利だな! 好きな人のことを考えただけで、姿が見られるとか!


 それにしてもこれは由々しき事態ですヨ!


 私、ストーカーの才能に恵まれ過ぎじゃね!?


 機材いらずでいつでも監視!! 初恋の微笑ましさを通り越して、一気にホラーじみた狂気の域に突入しちゃってないか!? いや、そんなバカな!?


 証拠の掴みようがない犯行だけに、完全犯罪は確実。ただでさえ我慢のきかないタチだけに、このままじゃ犯罪者まっしぐらな予感を否定できない。


 ――果たして私に自制できる? 抑止力皆無なだけに、ぶっちゃけ自信ないわ。

 きゃ~~~~っとかわざとらしく目を塞いでも、脳内に直接投射だからね。指の隙間を開ける必要すらないのよ。アングルまで自由自在のこの仕様。我ながら高性能すぎる。


 ところでこの特殊能力の有用性、前向きに検討するとして、ノゾキは具体的にどこまで許されますか!? せっかくのチート、是非上手いこと活用したい!!

 今のとこ通路を歩いてるだけだし、まだセーフだよね!?

 さすがにお風呂とかトイレはシャットダウンするとしても、着替えは審議が必要だ! どこまでイケる!? 男なんだからパンイチまではオッケーっ!? ってことは、ほぼ丸々セーフ判定!?


 って、いやいや、そういう問題じゃないだろ!!!


 ああ、マズイ!! 一度手を染めたら、深みにはまって引き返せなくなりそうだ! 私って実は恋をしちゃいけない人種なんじゃないだろーか!? 性格的に、100か0しかない。ほどほどって、ソレ何オイシイの!?

 キアラン、逃げて~! 超逃げて~~!! その気になれば世界の果てまで追えるけど!! 厄介な女でスマン!!


 こうやって、もうちょっともうちょっととずるずるやってるうちに、取り返しのつかない中毒患者になっちゃうんだよな~、きっと。


 それにしても――こうして離れたところから客観的に眺めてると、やっぱキアランって目立つんだなあ。

 今まで特に意識してもいなかったことに、改めて気付いた。


 王子って立場だからだけじゃなくて、物静かなのに不思議と人目を引き付ける独特の雰囲気がある。これがカリスマ性ってやつなのかな。

 そこにいるだけで、老若男女の目が自然に集まる。――特に女性陣の視線が熱い!! ――なんだか複雑な気分。


 学園では当たり前に一緒にいるから、あんまり気にしてなかったわ。

 私も他の仲間も注目浴びるタイプだし、いちいち目くじら立ててたらキリがないもんなあ。

 キアランもそんな感じで、左右に割れる人の視線を空気みたいに受け流して悠然と歩いている。


 どこに向かってるのかという疑問は、すぐに解けた。


 少し先にいる人物に手を振る。


「悪い。待たせたか?」

「気にすんな」


 相手は、マックスだった。一足先に用事が終わって、キアランが来るのを待ってたらしい。合流した後、二人でテラスに出ていく。

 二人並んで歩いてると、更に注目度がすごいことになってる。どっちから誘ったのかは分からないけど、人目の多い城内から離れないと、落ち着いて話すどころじゃないんだろう。


 ――ありゃあ、これ、どうしよう。


 絶対私の話題に触れるよなあ。むしろそれが本題というか、ちょっとツラ貸せ的なやつだよね?

 さすがに男同士の話を盗み聞きするのは無粋に過ぎるか。ものすっご~~~~~くっ、知りたいけど。


 それよりさっきから気になってるのが、外に出て二人きりになったように見えて、実はそうではなかったりすることなんだよね。


 何故か、傍にノアがいる。


 そしてキアランもマックスも全然気付いてない。


 私自身、大預言者としての知覚で、視覚を通さず、直接脳内で捉えてるから認識できてるけど、その場にいたらはっきり補足できてるか怪しいくらいの隠蔽術のクオリティ。


 これはなかなかスゴイ。ノアは代々政治家の家系で、戦闘に役立つほどの高い魔力は持ってないけど、その多くはない魔力を諜報関係の能力に全振りしてるらしい。

 子供の頃から変装までして、あちこち出歩いてた奴だもんなあ。まさかこういう形で、大きく飛躍していたとは。


 王城の敷地内で、警備関係に一切関知させずに魔術を使えるって、相当だよ。

 もちろんかなりグレーゾーンな行為だけど、そこはバレなきゃ問題ない。

 ノアならトラブルにならない立ち回り方と匙加減は心得てるだろうし、誰かを理不尽に傷付けたりもしないはず。

 そこをきっちり弁えてるなら、この技能はノアの将来に確実に役立つ。

 やってることはあんまり勧められない気もするけど、自分の武器を情報収集に特化して磨く努力は大いに褒めたい。どんどん頑張るべきだよね。


 それにしてもノアの異常な情報力の一端がやっと垣間見えた感じだな。


 デバガメ仲間を発見してちょっと嬉しいぞ。


 とにかくちょうどいいや。後でこっそり内容を聞くことにしよう。これなら、ノアフィルターもかかることだし、あんまり気が咎めない。


 こうして私は後ろ髪を引かれる思いで盗視――いや、透視? ……を打ち切った。

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