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挨拶の準備

 バルフォア学園最初のイベント、新入生歓迎バトルロイヤルが、とうとう明日に迫った。


 私たち新パーティーは、放課後空き教室に集まって最終打ち合わせだ。


 学園で、はじめましてのご挨拶イベント。腕に覚えのある連中は、自分の存在感を大いにアピールする場となる。


 なので、ただ勝てばいいというわけではない。


 かつて有力候補同士が潰し合うのを待ってから漁夫の利をさらった優勝者は、バカにされ初っ端から侮られる結果になった。

 このイベントで勝利以上に重要なのは、自分の実力を見せつけること。私はこういう人間ですよ、うちはこういうチームですよ、という、まさに『ご挨拶』企画なのだ。ということで当然全員参加。


 近い将来国を背負う人材の初お目見えということで、優勝者、上位者や勝負内容の詳細とかは、なんと翌日の新聞にも載る。下手なことをすると、大人になってまでもの笑いのタネで、ことあるごとにいじられることになる。まさに末代までの恥。名門の子息ほど、一族の期待と名誉を背負って、正々堂々全力で取り組まなければならない一大イベントだ。


 自己紹介がメインだから武器、魔法、魔道具、なんでもあり。一番得意なことをやって戦える、名称通りのバトルロイヤルだ。最後まで生き残った者が優勝。


 ただし安全対策はしっかりしてあって、参加者一人一人に、完全な防御魔法が施される。その上で受けたダメージがしっかり計上され、死亡状態か戦闘不能まで蓄積されたら、ゲームオーバーとなる。


 戦場は学園の敷地内全部。ただし、ただの単純なバトルロイヤルではない。

 ゲーム全体としては、宝探し要素も入っているのだ。

 1から99までの数字が書かれたナンバーカードが、校舎含む敷地のどこかに隠されている。

 より多くのポイントを集めた順位も競われる。


 何しろガチ戦闘なら、戦えない一般人は出る幕がない。そこで戦闘以外での点取り方式も並行させ、パーティーの総合力が試されるルールになっている。必ずしも非戦闘員が足手まといなだけの存在になるわけではない仕組みだ。


 戦闘員が警戒と護衛をし、非戦闘員がポイント集めに専念するというのが、多くのパーティーのオーソドックスなスタイルになる。ちなみに相手が脱落、降参前だったら、ナンバーカードの強奪アリ。一発逆転狙いで、集めたポイントを賭けて、戦闘ということもよくある。

 

 つまりゲームとしては、「バトルロイヤル」、「撃破数」、「ポイント」、「総合」と、大きく4パターンの結果が出る。その外にも、プロ野球みたいにこまごまと色々な賞が出る。

 格闘メインのパーティーならバトルロイヤルと撃破数、単独(ソロ)だったり、格闘に自信がなければ地道にポイント獲得と、パーティの特色ごとに戦略は異なる。


 そして個人戦の他に、チーム戦の順位も出る。早い段階で捨てゴマとして脱落しても、仲間から優勝者が出れば、自分も同じく優勝者。ただし1グループ6人までだから、ハンター辺りの大所帯は2~3チーム作って連携を取り、ワンツーフィニッシュを狙ったりする。


 最後の10人になった時点で合図の鐘が鳴り、生き残りは校庭に集合。最終決着で順位を確定させる。


 しかも100、200、300ポイントのナンバーカードが、合図の鐘の音と同時に校庭のどこかに投入されるから、生存人数を把握しておいて、いち早く校庭で待機していれば、一気に600ポイントの総取りも可能。

 ただしこの場合、後から次々生き残りがやってきて、立て続けの戦闘になる可能性大。最悪、遮蔽物のない校庭で、複数から狙い撃ちを受ける。ポイントを取るか、生き残り順位を取るか、色々と作戦の立てどころでもある。


 校庭への到着は、生存者3人の時点までに間に合えばいい。

 そのため、最後までひたすら身を隠し続けて生き残った非戦闘員が、トップ二人の勝敗がコールされるまさに直前に、慌てて滑り込み、戦わずして2位になったなんて例も過去にはある。

 これは非戦闘員だから作戦勝ちと許容されるけど、戦闘職がやるのは末代まで馬鹿にされる行為だ。

 バルフォア学園のバトルロイヤルは、ガチの戦闘が華だからね。


 大体は、最後10人になった時点で、順位より全力での勝負がメインのお祭り騒ぎになる。脱落者たちも野次馬と化して取り囲むから、下手な戦いには容赦ないブーイングが巻き起こる。ちょっとした地下格闘場気分だ。その上、翌日の新聞でも手厳しい評価が付くから、最後まで気が抜けない。


 かつてザカライアだった時は、高ポイントのナンバーカードを片っ端から独占しつつ、ギディオンが有利になる戦況を作って対戦相手を潰し倒し、ぶっちぎりの全トップをかっさらったものだ。


 でも、今回は大預言者の力は封印。チームの力を合わせ、ちゃんと作戦を立てて勝負に挑む。


 私としても初めての試みだけど、なかなかの戦いができると思う。最初に考えていたより、はるかにいいメンバーが集まった。


 まずはヴァイオラ・オルホフ。平均的な体格ながら、RPGで例えるなら、戦士の中でもまさかのパワーファイター。でも攻撃魔法も強力な、さすがの総合力。

 ダニエル・ハンターは、盗賊とか斥候タイプ。目敏くて、意外と器用なスピードスター。もちろん戦闘も高いレベルでこなす。

 ティルダ・イングラムは、技も火力も備えた、攻防両面で活躍できる魔法使い。すでに宮廷魔術師に余裕でなれる実力者。自分に甘い怠け者はもういない。

 ソニア・エインズワースは、魔術寄りで中距離が得意。集団戦の経験が豊富で、支援も巧みな、高い戦闘技術を持つ戦士。

 そして一般人ながら、アクロバティックに動ける隠し玉のユーカ。

 学生・教師時代合わせて、このイベントを三十数回経験している私。


 有力な上級生パーティー相手にだって、絶対に引けはとらない。むしろ、今までできなかったことがいろいろやれそうで、心が躍る。


「さあ、いよいよ明日だよ。みんな、準備はできた? やるからにはすべてのトップを狙うよ」


 仲間内だけだから、素の態度で檄を飛ばす。


「ダニエル、暗記は?」

「頭ん中が、大混乱だよ。耳から言葉がこぼれ落ちそう」


 ダニエルがノートを開いたまま、頭を抱える。大した量でもないんだから頑張れ、最上級生。


「それが作戦のキモだから、きっちり覚えて」


 容赦なく指令。他のメンツは、頭の出来がいいからすでに記憶済み。ユーカだけ例外。


「ティルダ。仕掛けは整った?」

「私の仕事は完璧よ! 三日もかけて慎重に進めたのだから、一切の手落ちはないわ」


 ティルダが自信満々に答える。技術的にけっこうな無茶ブリをした気がするけど、さすがにやればできる子、完遂してくれた。


「ソニア、明日はいろいろフォローしてもらうよ」

「ええ、それはもちろん」


 実戦経験も安定感もあるソニアが、しっかりと請け負う。それから少し不安そうに首を傾げた。


「でも、ティルダの準備した()()は、大丈夫? 聞いたことがないけど、ルール違反にはならないかしら?」

「イベント規約は全部記憶してる。過去50年分の前例も把握した。敷地内にあるものならなんでも利用可能だし、事前準備期間は、入学式後からすでに解禁されてる。ノープロブレム!」


 何しろ参加者としても運営側としても、私は誰より経験豊富だ。明確に違反とは断定できないグレー行為なら、クレームが出たって言い抜けてやる。


「ユーカ。アレはもうできる?」

「はい! 前にグラディスに訊かれてから、半年間毎日練習してきました。細かいコントロールはまだですけど、言われたことぐらいならバッチリできます!」


 ユーカが元気に頷いた。半年も前に、好奇心で出来るのかとユーカに確認したとある技。ユーカ自身も自らの可能性が気になって、ずっと事あるごとに試行錯誤してきてたらしい。まさか本当に形にしてるとは頼もしい。


「ヴァイオラが戦闘の要だよ。調子はどう?」

「こんなに明日が楽しみなのは、久し振りよ。やっぱりこのパーティーに入ってよかった」


 ヴァイオラが楽しそうに笑った。拳を掌にバシッとやる仕草すら、どこか品があるのが不思議だ。


「ふふふ。細工は流流あとは仕上げを御覧じろってやつだね。明日は派手な挨拶をぶちかますよ」


 私の宣言に、メンバーはそれぞれ気合の入った返事を返した。 

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