MMW-098
10機以上。
とっさに感じたMMWの気配。
警戒というか、そんな感じはあるけど、殺気は無いって感じかな?
意外なことに、今の時点ではそう技術の差は感じない。
「コランダムコロニーの戦士だよ。遠征時にトンネルを見つけて通ってきた」
短く告げ、武装は下す。
最悪撃たれたら終わりだけど、大丈夫でしょう、たぶん。
目が慣れてきたことで、相手の様子が見えてくる。
見覚えのないタイプのMMWが大半だけど、いくつかは覚えがある。
あれがソフィアの関係者かな?
「仲間もいる。話を聞かせてもらえる?」
「プレートは読んだか?」
「もちろん。あー、グランデール家の関係者もいるよ」
相手からの問いかけに、しっかりと答える。
これでもし、俺が撃たれるようなことがあれば、ソフィアたちは逃げてくれるだろうか。
できれば逃げてほしいけど、どうだろう。
ソフィアの家名を口にしたのは、当然理由がある。
両親と関係者が、誰かしらこっちに来ているだろうからだ。
相手の言うプレート、そこに書かれていた内容にグランデールの名前自体はない。
けれど、ここで告げることで相手にいるだろう両親たちに伝わってくれれば……。
と、囲んでいるMMWの1,2機に動き。
「まさかお嬢様が? 私たちが対応してよろしいか」
無線から聞こえてきたのは、お年寄りといった声。
あれかな、昔風に言うと執事って人だろうか?
彼が話しかけているのは、他のMMW。
相手の多くが下がっていくことで、俺は生き延びたのを感じた。
「貴方1人だけ、ゆっくり歩いてきなさい」
「わかった。搭乗口も開けておくよ」
トンネルの中にいるソフィアたちが飛び出てくる様子はない。
ひとまず、会話からすぐどうこうとはならないことを感じているのだと思う。
(ソフィアは飛び出してきそうだったけど……うん)
『そりゃあな、今の声に覚えもあるんだろう』
プレストンに頷きつつ、MMWを少し前に。
もうどうせならと、俺は機体を止めて、降りた。
危険も危険だが、どうせ無防備なところを撃たれたら一緒だ。
相手の動揺が、機体に乗っていなくてもわかる。
気を付けようって思ったばかりなのに、粒子の動きを見てしまった。
先ほど話しかけてきたMMWから、相手も降りてくる。
おじいさんというにはまだ若く、元気そうだ。
上下とも灰色の服で、髪色も銀というか灰。
「若いですね。だからこそ、か。飼い主の名は?」
「ソフィア。俺の自慢の飼い主だよ」
「お嬢様が戦士を……なるほど、コランダムコロニーは思った以上に平等だったわけですな。貢献できぬなら名は消す、と」
ソフィアが苦労したことに怒るかと思ったが、意外に冷静だ。
両親も、ソフィアなら大丈夫とか思ってたんだろうか?
執事(仮)の視線が俺とトンネルを交互に行き来し、頷いた。
それをきっかけに、残りのMMWが少しずつ下がっていく。
彼らはグランデールの関係者か、それとも……。
執事(仮)が話してても、何も言ってこないから無関係ではないと思う。
この動きから、興味深いこともわかった。
関係者だとしても、こうして交渉も担当できるほどの立場になるのは、そんな簡単ではないだろう。
つまり、短期間でそれなりの立場にグランデール家の人間があることを感じる。
「出てきてもらってください。その間に、お嬢様のことを伝えなければなりません」
「ん、わかったよ。待ちくたびれてるだろうし」
俺がフローレントに近づき、トンネルへ向けて手を振って合図。
事前の合図ではないけど、これでわかるだろう。
すると、ぎりぎりまで来ていたであろうソフィアの運転するトラックが出てくる。
本当はリングたちを前にしてきてほしかったけど……今更か。
どこかに連絡している執事(仮)の顔が驚きに染まる。
きっと彼の中では、そういったことをしないお嬢様のままなんだろう。
(実際、俺と出会ってMMWのことを学んだりするまでは、お嬢様お嬢様してたもんな)
特に何か説明することはしない。
執事(仮)も、きっとソフィアの姿を見て、どういった苦労があったかを察するだろうからだ。
『本番は、ここからだ。コロニーに何を持って帰れるのか、コロニー間の関係性も大きく変わるかもしれない』
俺にしか聞こえないつぶやきに、静かにうなずく。




