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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-046


 テスター、テスト……試験……つまりは、そう。


「実験体?」


「悪く言えばそうですがね。さすがに社内で初期試験自体は済ませていますよ」


 出会ったころと同じ、丁寧なようでどこか冷たい口調のリッポフ。

 嘘はないようで、本当に外部の人間に追加のテストを希望しているだけなようだ。


(さすがに、裏を考えすぎただろうか?)


 若干の罪悪感のようなものを感じたけれど、お嬢様にはいつも騙されないようにと言っているわけで。

 このぐらい疑ってかかるほうが、長生きできるはずだ。

 そのうえで、悪い話ではないと思う。


「俺は遠慮しておく。今から新しいものに対応できるとも思えん」


「そう? 俺は受けようかな。命の危機はなさそうだし」


 なんとなく、リングが拒否したのにはほかに理由があるような気がする。

 例えばそう、過去に同じような依頼で事故があったとか、そういうの。


 どうしてそう思ったのかは、自分のことながらわからない。


「ひとまず、お嬢様たちに話してからでいいでしょ?」


「もちろん。最終的には飼い主の決めることですからねえ」


 そこまで話して、リッポフに護衛がいないことに気が付く。

 つまり、護衛がいなくても大丈夫な状況に本人がいるわけで。


 一気に緊張感が増してきた。


『ようやくか。もっと危機感を持て』


(何も反論できない……くぅ……)


 反省しながら、お嬢様が来る間、もう1つの入り口とリッポフの間に立つことにした。

 肉の壁になるには、生身での訓練は積んでいないけれど……。


「その慎重さ、やはりアナタは好ましい。なかなかそうは動けません」


「ちっ、やっぱり食えないやつだよ、お前さんは」


 同じく移動したリングが、顔をゆがめながらそんなことを言い放つ。

 当然というか、彼も部屋に来るであろうエルデを守るような位置に。


 奇妙な緊張感が漂う中、2人がやってくる。


「セイヤ? あなたは……」


 やってきたお嬢様たちもリッポフを見て驚いている。

 ひとまず座ってもらい、同じ話をリッポフにしてもらった。


 その内容に、再度驚くことになる2人。


「悪くはないわね。一人だというし、セイヤがやるのが良いと思うわ」


「わかりました。セイヤ、受けましょう」


 飼い主である2人の許可も出たことで、正式に受けることに。

 武器のテストをということだが……。


「試していただきたい武器はですね、ブレードになります」


 それだけを言って、移動することになった。

 リッポフが来た入口から出ると、当然のように護衛の男が待機していたのには驚きだ。

 中にこなかったのは……たぶん、聞かないほうがいいのだろう。


 無言のまま、用意された車に乗り、リッポフの店というか、倉庫群にたどり着く。


『見ろ、MMWまで用意されてる。よほど普通にデータが取りたいんだな』


「機体はタルクスでいいんだね」


「それはもう。最低ラインの動きは確認しておきませんと……」


 馬鹿にした様子は、ない。

 本当に、どこまでの性能があるのかを確認したいようだ。

 頷き、タルクスに近づく。


 見た目は乗りなれた機体に飛び込むと、コックピットも慣れたものと同じ。

 細かいところは違うし、メタルムコアの性能も違うけれど。


「試す武器は3本か……じゃあまずはっと」


 手前にあるブレードを持たせ、すぐに認証を通す。

 これでブレードが使用可能になるはずで、力の手ごたえもちゃんと感じる。

 上を向けてから刃を出すように、とだけ注意書きが添えられている。


「ではあのターゲット相手にお好きに」


「了解。って、なんだこの長さ……」


 周囲の店員だとかが、距離を取るわけだ。

 もし、下を向けていたらそのまま床を貫いていた。 


 長い長い光の刃が、しっかりと伸びて力を誇示している。

 その長さは、おおよそこの機体、タルクスと同じぐらい。

 ほかに武装がないとはいえ、よくもこの機体で使えるものだ。


「? 長いわりに、コアのエネルギーはそこまでカツカツじゃない?」


「新しい増幅方法を使っていますので。では続きを」


 無線越しに聞こえるリッポフの声。

 よく考えたら、一番上の人間が直接指示を出すっておかしいような?

 そういう考えってことなのか?


(まあ、俺が気にすることじゃないか。さてっと)


 さすがに長すぎるので、今までのような使い方はできない。

 例えばそう、廃材の柱を武器にするかのような使い方じゃないと……よし。


 試験会場となる空間には、MMWのものを流用したであろう残骸のような的がいくつも。


 そのうちの1つに、接近しながら飛び上がり、ブレードを振り上げる。

 実体刃じゃなく、エネルギー刃なので重さは感じない。

 慣性すらないので、不思議な感じである。


 振るう勢いに、刃が曲がるのを感じながら正面から振り下ろしながら落下。


『実戦じゃ、こうなることはないだろうが、試験には重要だな』


(そいうこと、うん。次は、横に振りぬく!)


 縦に両断され、倒れる残骸を無視して、次の的に。

 今度は横に構え、大きく振るえば、その刃の範囲には入り込めない罠のよう。


「うん。切れ味も問題ない。消費は……接触時に、思ったより増えてるかな?」


「データは問題なく取れています。そのまま続けてください」


 どことなく、興奮した声色になった気がするリッポフ。

 そんな彼の指示を受け、試験を続けていくのだった。






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