MMW-203
ソフィアの決意を聞いて、他のみんなも同じ意見だと確認できた。
ジルはまあ、うん……守るよってことで許してもらおう。
そんな気持ちで見つめるのは、地上と地下世界を結ぶ道。
その地上側にあったスターレイによる防衛装置。
今も稼働していそうなのもすごいけど、一番はここにこれを作れたことだ。
何せ、粒子を力に変えているのか、スターレイであろうそれらは常に光を放っている。
周囲の植物に負けないほどのその光は、地下世界にあるものとどこか違って感じた。
地下世界では再現できないものを、地下に逃げ込む状況で設置できたという事実。
「当時は、必死に逃げ込もうとしていたはず……ううん、長い時間をかけて準備はしていたのかな」
もしかしなくても、道中の道も少しずつ準備したのかもしれない。
地上での危機を回避できず、最終手段として地下に逃げ込んだ、そう考えられなくもない。
最初は、地下世界は新たな発展先、ぐらいだったのかもしれない。
そして、それは当たりのような気がした。
「かもな。ほれ、よく見るとMMWらしき残骸もあるぜ」
「本当だ。最後の1人まで、守ってたんだろうな」
防衛装置の向こう側、すなわち機械虫らと戦っていたであろう場所にある残骸。
機械虫のそれに混ざって最初はわからなかったけど、確かにMMWのような人工物だ。
来るなと言っているのか、待っていたと言っているのか。
何かを伝えたそうな姿に、一人勝手にうなずいていた。
「よし、行こう」
覚悟を決めて、進む。
防衛装置のいくつかの個所にあるがれきの山。
それをどうにかどかすと、移動拠点も通れるだけの幅が確保できた。
おそらくは逃げ込むときも相当大規模な集団だったんだろう。
そおっと防衛装置の前に出て、それが撃ってこないことを確認し、安堵の息。
「セイヤ、念のためにふさいでおきましょう」
「そうだね。俺は狭い部分から一度中に戻るよ。リング、よろしく」
そう言って、他のMMWぐらいは通れそうな隙間から中に。
時間をかけないようにと一気にがれきを戻し、元のようにふさいで再び外へ。
幸い、襲撃は無かったようだ。
先ほどまでと違い、薄暗さを感じる光景だ。
どうやら、こちら側には光る植物は少ないらしい。
「いよいよだな。わくわくするぜ」
「うん。何があるのか……」
風が、吹いている。
念のためにコックピットは閉じているから、センサー頼りだけど。
何が飛び出してきてもいいように、武器を構えさせたまま。
進む速度は人間の走る速度ほど。
生身では速いけど、MMWとしてはかなり遅い。
それでも確実に進むと、徐々に周囲の様子も変わってくる。
「これ、コケってやつか。すごいな」
リングのため息交じりの声。
モニター越しに見えるのは、まだら模様の岩盤。
彼の言うように、コケとかいうやつがびっしりだ。
逆に言えばだ。
地上は不毛の大地ではなさそうと言える。
『その意味では期待が持てる展開だな』
頷き、さらに進む。
ソフィアたちにも警戒してもらっているので、ほぼ無言だ。
光景に魅入ってるのかもしれないけどね。
「リング、前の灯り……どう思う?」
「俺たちも使う人工的な光じゃねえな」
大きな穴、トンネルの先に光。
緊張にか、手に汗がにじむのを感じつつも止まらない。
モニターの明るさを調整し、光の向こうに何かいても大丈夫なようにしてさらに進む。
明らかに空気が変わるのを感じた。
同時に、この旅のひとまずの終わりが来たことも。
「撃ってもいいと思う?」
「俺たちと同じ地下からのなら、そうなっても仕方ないってわかるはずだ。地上に残ったままのやつだとしたら、それぐらい想定してるはずだ。つまり、撃たれる前に、だ」
力強い返答に頷き、MMWを前に。
薄暗い世界から、まばゆい世界へとついに踏み出した。




