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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-202



「まさか、坂を上るだけで一か月もかかるとはな……」


「まっすぐじゃなく、渦を巻いてるよね?」


 岩盤に突入してからの時間は、よくわからないものになった。

 警戒しながらの進みは、どうしても遅くなる。

 それでも着実に進んでいるはずだった。


 最初はまっすぐに見えたけど、徐々にカーブしてることが実感できる。

 かなりの距離を、少しずつ上に上がっているようだった。


 途中、いくつも人工物を見つけた。

 見覚えはないけれど、機能は覚えがあるものだ。


「空気の流れを生み出す装置、一体何年稼働してるんだ」


「こういうのは、相当耐久年数があるらしいですからなあ」


 ちょうどくぼみのようになった場所で、休息がてら話し合い。

 生身では見上げるほどの箱状の機械、それが風の源だった。


 もしかしなくても、人間が地下に逃げ込むときからずっと稼働しているのだろう。

 その技術のすごさに驚きつつも、地上に希望があるなと感じる。

 もし、地上に脅威がいて、逃げ込むのに失敗したのならこんなのが無事なはずがないからだ。


「セイヤ、もう1か月進んで何もなければ、一度戻りますよ」


「ん、了解。ジルも飽きるだろうしね」


 ほとんど変わらない景色に、大人ですら飽きが来てるのだ。

 幼い子供となれば、言うまでもない。


『その心配はたぶんないな。進んできた距離を考えると、近いぞ』


 第一、先達も一度は来てる可能性がある、そんな風にプレストンは続けた。

 確かに、俺たちより先に地上にたどり着いた人がいてもおかしくない。

 誰もたどり着いていない、という可能性も十分あるのだけども。


『俺のほうも予想外だ。正直、ここに来たことはない』


 なんと、プレストンはこのルートで地上に出たことは無いという。

 あのMMW同士での争いも、実際は地下世界だったのだろうか。


 あるいは、あるいはだ。

 未来が、歴史が1つだなんて誰が保証するのか。

 プレストンがいくつもの未来を生きて死んだように。


 俺の未来は、何も決まっちゃいないのだろう。


「よし、行こうか」


 雑談をしながらの休息を終え、出発。

 ドーンスカイに乗り込む直前、確かに周囲の植物に違いを感じた。


 再びの変わらぬ景色。


 ……いや。


「セイヤ」


「うん。戦闘準備するね」


 リングも、きっとみんなも気が付いた。

 粒子を見るまでもない。


 あの送風機ではない何かで、植物が揺れている。


 視界に、新しい光が現れた。


「スター……レイ? でもこれは……」


「なんだこのでかさは……」


 徐々に強くなる光と風。

 その正体にたどり着いたとき、言葉を失った。


 これから向かう先に刃を向けた、透明な殺意というべきものが並んでいた。

 その正体は、スターレイを材料にした防衛装置……だと思う。

 尖った杭を並べて積んだ、そんな感じだ。


 昔はともかく、今はこちらに来ようとする存在がいないから動く姿はわからない。

 けれど、スターレイらしきものの隙間に見えるのは朽ち果てた機械虫たちだ。


「人間が設置した、地下世界への門番でしょうかね」


「たぶんね。そういうことなんじゃない。動力は事実上、無限ってことだ」


 スターレイをこんな風に加工する技術があったのが昔の人間。

 見る限り、数百でも少ないそのスターレイの杭はまだ現役に見える。


 これは、どうしようか。


「何に反応してるかだよね。単にこっちに来る相手をどうにかするのか、判定してるのか」


「たぶん、両方だろ。そのぐらいはやってのけそうだ」


「でも、戻れないと思ったほうが良いでしょうね」


 それぞれの意見を聞きながら、俺は口を開こうとした。


「だめですよ、セイヤ」


「何も言ってないけど?」


 じとっとしつつ、真面目な表情のソフィア。

 どうやら、言いたいことは御見通しのようだ。


「行くなら私も一緒です。そのまま、地上で過ごす覚悟はできています」


 きっぱりと、明確に言葉にされてしまうのだった。




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