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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-189


 それはまるで、縦長の建物を駆けあがるかのような光景。

 ドーンスカイを後退させるのと、スターレイが落下するように伸びてくるのはほぼ同時だった。


 もう少し後退が遅かったら、巻き込まれたかもしれない。

 モニター一杯を、スターレイが占めながら落下していく。


『原石が堅くて、スターレイが詰まってたってところか』


(それにしたって、この勢いはやばい!)


 瞬き数回。


 そんなわずかな時間に、一気にスターレイは山の頂上付近にたどり着き、そのまま貫いた。

 一気に沈んでいくスターレイ。


 轟音が周囲に響くのを感じながらも、空中で高度を維持しながら見守り続ける。

 ようやくスターレイが止まったことで、リングのことを思い出した。


「無線! ノイズがひどいや。ええっと……あ、いた!」


 さすがの嗅覚というべきか。

 リングが結構離れた場所にある岩陰に隠れているのを見つけ、降りていく。


「セイヤ!」


「ここなら聞こえるね。すっきりして、伸びてきたって感じかな」


 振り返れば、周囲を煌々と照らすスターレイ。

 まさに光る柱。


「とんでもないな。原石だけでもすごい量の資源なのに……あのスターレイ、どうする?」


「どうするも何も、切断できるもんでもないでしょ」


 落下したスターレイは使ってもよい、それが俺たちの共通認識。

 上に生えているスターレイは使わない、これも同じく。


 今のところ、地面まで伸びてきたスターレイには遭遇したことがない。

 一度合流し、今後のことを話し合おうと爺たちを呼ぶ。


「みんなで話して決めようか」


「そりゃそうだが……おい、待て! 動いてるぞ!」


 リングの叫びに、慌ててスターレイを見る。

 確かに、ゆっくりとだが動いている。

 地上までずっと伸びているわけじゃないのかな?


 ゆっくりと、でも確実に動いているスターレイ。

 空の穴に引っかかったのか、動きが止まった。

 そのままかと思ってみていると、妙な胸騒ぎがした。


『ヤバイ、なぜかわからんが、こっちに倒れてくる!』


「横に回避!」


 一度止まって、向きを変えたのだとわかった。


 向かってくる車両に叫び、自身も機体を動かす。

 場所を変えるとそれがよくわかる。

 長い長いスターレイが、倒れてくる。


 地面にぶつかる瞬間は、妙に静かに感じた。

 そして振動と、土煙があたりを包み込む。


「あのままだったら危なかったね」


「まったくだ。折れてないな……どうするべきか」


 地面に倒れたスターレイは、光を発したままだった。

 地上の太陽、その光を反射してるだけのはずのスターレイがだ。


 理由を求めて、空の穴を見て……気が付く。


(明るい……まさか!)


「おい、セイヤ!?」


「ごめん、行かせて!」


 制止の声を振り切り、ドーンスカイを加速させる。

 ソフィアの声も聞こえた気がしたけど、今は時間の勝負。


 一気に斜面を駆けあがり、頂上だった場所にたどり着く。

 飛翔し、穴の真下にたどり着く。


 そして、ドーンスカイは天然の光に白く光る。


 太陽、地上の光。

 長い長い穴の上にいる、光の親玉。


『太陽、だ。間違いない』


 一体、距離は何キロあるのだろう。

 ただの光でしかないはずなのに、太陽の光は何かを感じさせた。


 失われていた何かが満たされていくかのような感覚。


 人は、太陽がないといけない。


 そう確信した。


「あっ……」


 地上への距離はかなりのもの。

 スターレイの太さなんてのは、それから考えれば細いという言葉ですら足りないだろう。


 すぐに穴の上から太陽は動き、光が失われていく。

 機体を照らした光も同様で、周囲は薄暗くなる……。

 

 足元の原石たちと、地面に倒れたスターレイだけが、妙に輝いていた。


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