MMW-185
「よし、一度整理しよう。俺たちの今抱えている問題、目標に関してだ」
「俺は地上に出ること、空を見たい。そのためにランクを上げて、もっと稼いで、移動拠点的なものを作り、長期間の遠征で到達を目指してる」
かなりあわただしい日々を乗り越え、どうにか地揺れからの復興も進んできた日。
みんなで食事を終えたところで、リングに話があると言われたのだ。
議題?話題?は、これからのこと。
まずはと俺が言うと、ソフィアも頷き返す。
「こっちも似たようなもんだな。というか、俺たちの目標なんかは解決したからな。セイヤたちに合わせる」
「そうね。リングの意欲も戻ったし、ジルも一緒に暮らせている。もらいすぎなぐらいよ」
そう告げるエルデの腕の中で、ジルは声をあげて何やら笑っている。
確かに、この姿を見れただけでも十分な報酬だろうか。
「私は、お嬢様と若に奉仕させていただく残りの人生ですので……」
「何かあったら言ってね。ま、事件が起きる前と変わらずってことかぁ。機械虫の襲撃はあったけど、例の別勢力の人間からは特にないんだよね?」
いつぞや遭遇して以来、特に話を聞かない。
スターレイを破壊すべく、今日もどこかに遠征しているのだろうか?
あれから、岩盤の空を波が走るようなことは起きていないから……どうなんだろうな。
スターレイ自体はあちこちにあるはずだから、遠いほうでやってるのかな?
「聞かねえな。わざわざあのスターレイに来たってことは、どこでもいいってことはないはずだ。案外、この地下世界は広くないのかもな。ずっと進むと、壁に当たるのかもしれない」
「水も食べ物も限られる状態だと、遠征にも限界がありますからね。でも機械虫や機械獣なら?」
そんなつぶやきに、みんなの視線が俺に集まる。
確かに、俺が機械獣にひたすら一方向へ進めと命令したらいいのだろうか。
(だとしても、世界が広いといつまでも戻ってこないよね)
『さすがに球体をさらに大きな球体が覆っている、みたいな状況は無いと思うが』
頭に浮かぶイメージ図は、小さな握りこぶしを大きな大人のそれが包む様子。
手と手の隙間の空間が、俺たちが過ごしている空間ではないかという感じ。
「また今度、やってみるね。1週間ぐらい進ませて戻る、とか繰り返せば情報は集まるかも」
「そうしてくれ。で、話を戻すと試合をして、遠征で資源だとかを集めるわけだが……」
地揺れの影響で、試合はしばらくまともになさそうである。
その分、外で資源集めの仕事が増えている。
大きな移動拠点を作るためにも、俺たちもそれに乗っかるべきだ。
「あっちのコロニー方面で、未探索領域をあさろう。ついでに試合もあっちなら再開してる可能性がある」
「それはありだね。ソフィアも、家族の様子を見たいでしょ?」
「単純にうなずけない間柄ですけど……ええ、はい」
作られた俺と違い、ソフィアには親がいるのだ。
多少、微妙な気持ちかもしれないけど、会えるうちに会っておいたほうが良い。
そんな俺の気持ちは、ちゃんと伝わったらしい。
「若はお優しい。仕事をあっせんさせるぐらいの気持ちでよいのです」
「そう? ま、何か持って行ったほうがいい物資が無いかは聞いていくけどね」
爺になぜかほめられ、苦笑しつつ行動を決めていく。
こちらのコロニーより、行動方針の都合で未探索領域が多いだろう場所へと向かうことを。
1つ、ずっと気になっていることがあるのだ。
地下世界に人類が逃げ込んだ、それはいい。
それは、どこからでどのように?
地上から、この地下世界へはどうやってきたのか。
それを、知りたいと思ったのだ。




