MMW-160
MMWとは、ウニバース粒子とは何なのか。
そんな疑問を、抱くことがある。
『深く考えても、とは思うが、それも俺だ。悩むのも大事なことだよ。何より、俺も本当を知ったとは思えない』
(そう言われても、ね)
色々と機材の並ぶガレージに1人……いや、爺がいる。
いつ寝てるんだろうな? いつの間にか近くにいるんだよな。
そういう俺も、実はあまり眠らなくても大丈夫な体質だったりする。
ちょうどいいといえば、ちょうどいい。
この疑問を、年長者に聞いてみることにした。
「爺、少し聞きたいことがあるんだけど」
「私でよろしければ。どのような?」
すっと、きれいに頭を下げてくる爺。
彼は戦士として生み出されたのか、そうでないのかは聞いたことが無かった。
もし、戦士として生まれてないなら話は通じないんだけど……。
「俺は教育を受けているけど、爺は?」
「一応は。若のように戦士としては生まれてはおりませんが、受けたほうが良いとされておりますので」
これは驚くべきことだと思う。
今の地下世界で、爺の年齢まで生きるのは、なかなか大変なのだから。
長生きしているなら、その分、経験も知識も得る機会があったと考え、さらに聞くことにする。
「そっか。教育のさ、中身に疑問を抱いたことはない? どこからこの知識が来たのかって」
「工場設備と同じで、調整はできても新規にというものではありませんからなあ。こういう会話のための知識も一通り……不思議なものだなあとは思っておりますね」
やっぱり、そうなるよね。
様々な、知識を覚えることができる教育。
中身と比較すると、かなり短時間で行われるのが不思議である。
もっとも、悪い話ではないんだけどね。
それに、本当にダメな奴なら、こういう疑問を抱くことができないようにしてると思う。
「若のこれまでのお話から推測するに、恐らくは人類が地下に逃げ込む際に、復興のために用意した総合的な、まさに教育のパッケージなのではないでしょうか」
「たぶんね。俺もそう思う。でもさ、だったら少しおかしいんだよね。あまりにも、地上を目指す意欲がないんだ」
俺が、前から感じていたのはこれだ。
俺自身は、空を、地上を目指す夢を抱き、それに向かって進んでいる。
飼い主であるソフィアもまた、それに乗ってくれる。
でも、他のみんなはそこまでではない。
それどころか、地上って何?ってぐらいの人までいる。
そりゃあ、生きていればその辺の気持ちは変わるんだろうけど。
駆け出しの戦士たちに、それが見られないのが謎なのだ。
「実感がないのではないでしょうか。私もその……教育にあるような青い空、というものは存在するのかと感じております。命を賭けていた戦士たちとなればなおさら」
爺の答えは、納得のいくものだった。
確かに、将来のあれこれより、目の前の物、か。
地下に人類が逃げ込んでから、相当の年月が経過している。
それでも達成できていないことなのだから、そうもなるのだろうか。
『教育のシステムを組んだ存在も、全員が同じ方向を向けるとは考えていなかったのかもな。きっと、地上の人類もいろんな人がいただろうから』
(そうだよね。誰もが戦えるわけでも、後方作業に向いているわけでもない)
そう考えると、最近までの全員戦士にさせるというのも、ある意味間違っていない。
地下での生存、地上の奪還を考えているなら、戦力は必須。
誰が素質を持つかわからないから、じゃあ全員をとなったわけだ。
「ありがと。疑問は解消したよ。全員が戦士として戦わなくなった今、きっと次の段階に移ったんだね」
「確かに、そうなりますな。若、お嬢様を……頼みます」
「俺もがんばるけど、爺もそばにいてあげてね」
俺の言葉に、今度こそは、と頭を下げる爺だった。




