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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-154



「遠くまで出ていたチームが、襲われた?」


「のようだ。幸い、死者は出なかったのだがね」


 ベルテクスに呼ばれて向かった先で、聞かされたこと。

 それは、俺たちが通った道をなぞるように遠征に出た集団の被害に関してだった。


 最初は、あの人間たちの仲間かと思ったけど……。


「機械虫、その新型か」


「人形たちも、記録にないそうだ」


『記録にない? 妙だな……原則として、人間が設定、設計したものしか生産できないはず』


 プレストンの声を聞きながら、持ち帰ったという情報をリングと一緒に見る。

 立場的にはソフィアやエルデもいたほうがいいのだけど、今日は戦士だけが呼ばれた。

 まあ、彼女らに前線に出てほしくはないから、これでも問題はないのだけども。


(一応、飼い主っていうのはしっかりしておかないとな)


「獣型も、虫型も決まったものだけだと思ってたけど……んん?」


 鮮明とは言い難い映像、いわゆる写真と言えそうな静止画だ。

 そこに写っていた姿と、証言から行くと……。


「これ、地下世界に合った形になってない? 地下に来てから設計されたんじゃ?」


 画像の一部、機械虫の特定の部分を指さす。

 そこには、明らかに少ない光量で活動するための、大きな大きな目があった。

 それに、体のあちこちが妙に光っている。


 直感的に、それは自分でエネルギーを確保するための仕組みだと感じた。

 地上の設計なら、こんなものはいらないんじゃないだろうか?


「何?……これは、確かに」


「厄介ごとのにおいがするぜ……ったく」


 もしかしたら、俺たちが知らないだけで地上にいた虫、というのにこういったのがいたかもしれない。

 けれど、プレストンを含めて、本来の虫を見たことがある存在はいないのだから仕方ない。

 教育をはじめとする資料でも、そのあたりは正確には残っていないのだ。


(あの光の海で見た地上の記憶なら、もしかしたら……)


 そんなことを考えるけど、またスターレイに行かないといけないし、必ず見れると決まったわけでもない。

 重要なのは、機械虫がただ作られただけではないのではないか、ということだ。


「もし、あの敵対者たちが機械虫を従えてるのなら、あの時に1匹もいなかったのはおかしいと思う」


「それには同意するぜ。ベルテクスさんよ、遠征は最低人数を増やすべきだぜ」


「ああ、そうしよう。頭が痛い話だ。人を増やすとコロニーの持ち出しが増えるからな」


 政治、運営のことはよくわからないけれど、大変そうというのはわかる。

 かといって、俺に何ができるかといえば戦うぐらいなもんだ。


 それを俺なりに伝えれば、ベルテクスは苦笑気味に笑う。


「君らが動き始め……目立ち始めてから、面白いほどに状況は変化していく。それも、良い方向に。今後も期待させてもらう」


「勝手に期待されてもね、やれるだけのことをやるってだけだよ。ねえ、リング」


「まったくだ。息子が良い未来を過ごせるように頑張るさ」


 近々、外仕事を頼むかもしれないというベルテクスの言葉を最後に、解散となる。

 建物から出ると、そちらの用事は終わったらしいソフィアが、爺の運転で迎えに来てくれた。

 後ろには、エルデと赤ちゃんも乗っている。


 2人して乗り込み、ガレージまで戻る道すがら。

 ソフィアとエルデから、自分たちもMMWを動かしたいことを告げられる。


「おいおい、そりゃあ無茶ってもんだぜ。子供はどうするんだよ」


「そうだよ。それに、戦いとなると正直……」


「足手まとい、ですよね。大丈夫です。戦うためのMMWじゃなく、移動拠点としてのMMWのことです」


 ソフィアの口から出てきたのは、MMWは人型に限らないのを忘れていませんか?だった。

 確かに、と思える話だった。


 なんでも、希望の穴や箱舟の人形に聞いて回ったらしい。

 今の車両を超える安全な移動拠点はないか、と。

 その答えが、MMWだったというわけだ。


 当然、結構お金というか、物がいる。


「2人はその、そのために稼いでほしいんですけど……」


「そういうことなら話は別だ。確かに武装してても、普通の車両は怖かったもんな」


「うん。俺たち共通の問題だからね」


「よかったわね、ソフィア」


 なんだかんだ、長い時間を過ごしている。

 濃密な関係は、話を早くするには十分だったのだ。


 俺の目的に、移動拠点としてのMMWを入手する、が加わった。



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