MMW-153
MMWは兵器だ。
それに、重機のようにも使われる。
MMW以外にもほかにも呼び方はあるけれども、基本的には今の形をMMWと呼ぶ。
なぜかというと、単純な話で、一番普及した形だかららしい。
すなわち、四肢と頭部のある人型。
まるで重装備の人間を大きくしたかのような姿。
(だからこそ、なんだろうなあ)
例えば、いきなり転がれと言われて、転がれる人間はあまりいないと思う。
それこそ、こけそうになったら踏みとどまるのだ。
MMW初心者ほど制御できず、結果的に素直に転がれ、慣れるほど踏みとどまってしまう。
そしてそれが、機体の損傷であったり、隙を生む。
「おっと? なかなかやるじゃん」
「セイヤっ、下がれっ!」
思わずほめてしまったけど、まだまだ戦闘中。
迫る攻撃を回避すべく、大きく距離を取った。
続けて攻撃を仕掛けた相手が、予想を超えた動きをしたからだ。
『思い切りが良いな。確かにMMWに限らず、メタルムコアで動くものはそういうもんだが』
(まったくだね。まさか、掴まれた腕を胴体から切り離すなんてさ)
ちらりと、地面に落ちた壊れていないMMWの腕を見る。
1機は事実上戦闘不能、続けてというところでの意外な回避だった。
これで相手は、俺の狙いを知ったわけで、対策も立ててくるだろう。
奇襲が1回で効果を発揮しなくなったことで、俺は苦戦するに違いない。
だからこそ、やりがいがある。
「行けるな、セイヤ」
「当然。武装も少ない分、速いからね!」
リングには、どんな相手を狙うかは大体知らせてある。
それに従い、俺を間に挟むようにして動き回るリング。
俺は彼に攻撃が行かないよう、引っ掻き回すのだ。
これまで、必要がなかったほどの加速を、解放。
悲鳴のようにウニバース粒子とそれによるエネルギーをブースターから吐き出すドーンスカイ。
一定のところから、悲鳴ではなく、歓声のように聞こえ始めた気がした。
撃たれてから避ける、余裕。
接近し、ぎりぎりで左右に旋回、行ける。
新しいコアから生まれる力を、加速、機動力に傾けた動きが、俺に翼を与える。
高さはそう大したものじゃなく、ただジャンプした程度。
しかし、その空間を自由に動き回る俺は、その場の支配者だった。
「思ったより加速がきついけど、なんとかなる!」
おそらく、相手の視界からは俺が消えては現れている。
そのぐらいの速度で移動し続けている自負があるのだ。
「よいっしょっと!」
左右に揺さぶり、掴む隙を見つけたところで、しっかりつかむ。
そして最初のように姿勢を崩し、攻撃へ。
腕を分離すれば、回避できる方法。
けれど、それは以降腕を使えなくする方法に違いない。
一度は回避できても、後が続かないのだから、そう何度も同じことはできない。
わざとリングの射線に入り、当たる前に回避し、その弾を追いかけるように進み、掴む。
近接武器、金属ブレードとエネルギーのブレードの2本を用意したが、それでは切りつけない。
あくまでも、肉体というべきMMWの機体だけで相手に襲い掛かる。
(相手が手を出されたらいやな場所を……)
プレストンの記憶、そして実際に繰り出した動きを合わせるようにして、暴れる。
そうしているうちに、相手が俺から逃れようと後退したところをリングに撃たれる、ということが続く。
そうなると、徐々に相手は追い詰められていき、試合終了。
「これ、こっちの関節とか痛みそうだなあ」
「要相談、だな。だが、俺も覚えておこうと思える動きだったぞ。外で弾切れの時とか、役立ちそうだ」
「まさにそのためだよ」
リングに頷きながら、俺自身の考えを口にする。
今後、もしかしたら弾切れするぐらいの間、何かと戦うかもしれない。
そしてそれは、対人、対MMWだろうという予感がある。
「……なるほどな。戻ったらよろしく頼むわ」
納得した様子のリングと共に、試合会場を後にするのだった。




