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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-151


 3人で訪れた試合会場は、見た目だけなら他の会場と大差ない。

 にぎわう声場所に視線を向ければ、寝注した様子の人たち。

 そして、試合会場で駆け回るMMW。


「なんというか、すごい」


「ははっ、言葉がなくなるのもわかるな」


 動いているMMWは、基本的にほぼ同じ形だ。

 性能差を設けないためにというのもあるけど、たぶん……壊れるからだ。

 高いランクのMMWで、いちいち修理してられないんだろう。


『衝撃でゆがみとかも生じやすそうだしな』


(うん。ひねったり投げたり、人間そのものだね)


 見学している3人の視線の先で、手早く試合が進んでいく。

 武器による射撃と違い、MMWだけでの戦いとなれば近づくしかない。

 結果、決まるときは5秒もない程度だった。


「よほど下手に倒れたりしなければ、死人は出ない設計のようですな」


「そうだね。それに、動きは参考になる」


 腕で組み合い、足で引っ掻き回す動きは、これまでに経験のないものだ。

 機械虫や獣たち相手には厳しい気もするけど、接近されたときの対処としてはありかもしれない。

 ましてや、対人となれば有り、だと思う。


「なら、経験だけしていくかい」


「え? ああ、俺のこと?」


 耳に飛び込んできた唐突な誘い。

 横を向くと、戦士の1人であろう男性が、笑顔を浮かべながら立っていた。


 教育で見た彫刻のような鍛えられた肉体。

 髪は短くこげ茶色。

 MMWに乗らずに生身でも戦える、そんな戦士だ。


「おう、そうさ。あんた、結構やるだろ? 試合があるかもしれないし、触りだけでもやってみるかい?」


「いいのなら、是非」


 俺のことも大体は知っているようで、試合のことも気にしてくれたお誘い。

 これは乗るしかないと承諾し、彼についていくことに。


 ソフィアと爺も引き連れて向かう先は、会場脇の戦士が待機する区画の1つ。

 そこには、左右5機ずつのMMWが並んでいた。


「これは……もしかして、試合に使うMMWって個人で持たないの?」


「その通り。単純に技量差で戦うのがここの流儀さ。そのほうが、燃えるだろう?」


「燃えるかはわからないけど、納得はしたよ。だから俺に乗ってみるかってことね」


 そっけないような俺の返事に、最初は微妙な顔だったけど、やる気があるのは伝わったようだ。

 乗ってみな、と促されMMWの1機に。


 大体は他と一緒みたいだが、操縦桿周りは少し違う。

 手足や体を細かく動かすためのスティック複数と、いつもと同じ操縦桿。


『うまく粒子を制御できないやつは、いろんな操作をするんだろう。ま、俺ならいけるさ』


(りょーかいっと)


「他にも試合に出るレベルじゃないやつが、試合間の時間稼ぎにトレーニングを会場でするんだ。混ざってやってみな」


「よし、行ってみる」


 何機ものMMWが試合会場に進むのについていき、俺も武器を使わないMMWの戦闘、いわゆる格闘技場へ。


 いつものようにまぶしさに目を細めつつ、すでに音が響く会場へと出る。

 先に出ていたMMWたちが、仮想目標の柱やそれっぽい相手に動いている。


 まずは歩き、手を振り回す。

 足を上げ、腰をひねり、力を紡ぐ。


 なんのことはない、プレストンは経験者だったのだ。


『大した理由じゃない。弾切れ、武装欠損はよくあることさ』


 どこか懐かしそうに言うが、寂しさもあるように思う。

 そりゃあ、誰も実戦で好き好んで格闘戦はしたくはない。

 そうせざるを得ない状況にあった、ということだ。


(補助、よろしく)


 それだけ頭の中で告げ、柱に向けて思うままにMMWを動かす。

 イメージ的には、こちらの攻撃をすべて防ぐ強敵、という感じで。


 MMWの拳を繰り出し、姿勢を変えて蹴りつけ。

 カウンターがあったかのように間合いを取り、再び攻勢に。

 増設されたスティックは使わず、いつも通りの操縦桿。


 違うのは、意識してウニバース粒子に気持ちを、こう動かしたいというものを乗せることだ。

 理由はいまだに解明されていないけれど、MMWはこうすることで同じ操作にも関わらず、動きを変えるのだ。


 いつか、その謎も解いてみたい。

 そう考えながら、動かない柱を強敵と見立てた動きを繰り返すのだった。



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