MMW-150
「よう! 戦士セイヤ! 元気そうだな!」
「う、うん。そっちこそ、頑張って稼ぎなよ」
元気なあいさつに応え、見送りながら考える。
見たことがあるような、誰だったかな?と。
歩いていると、今のような会話がちょこちょこ発生しているのだった。
ひとまずの買い物も終え、ソフィアの案で、コロニーを見て回っている俺たち。
教育にあった、観光ってわけじゃないけれど……多くの場所が、様変わりしたのを感じる。
もちろん、いい意味でだ。
(治安としてはあまりよくなかった区画まで、なんだろうね、これ)
人は、ここまで変われるものなのだろうか?
『希望、期待、展望、そういったものが見えてきたのが大きいんだろうな』
懐かしむようなプレストンの言葉に頷きつつ、同じように驚くソフィアの手を引く。
立ち止まったままの気持ちはわかるけど、道のど真ん中はさすがにね。
慌ててこちらに身を寄せてくる姿は、俺が言うのもなんだけど年相応ってやつなんだろう。
「若、感謝いたします。お嬢様がこのようなお姿で過ごせる日が来るとは」
「やめてよ、今更。爺だってソフィアがあんな風になるとは思わなかったから、あっちについていったんでしょ?」
涙ぐみそうな勢いの爺を制止し、頭を上げさせる。
ですが、となおも口を開く爺の前で手を振る。
「ソフィアが気にしてないんだから、それで終わり。でしょ、ソフィア」
「ええ。こうして今はそばにいる、それで十分ですよ」
聞けば、ソフィア自身も恨みつらみといったものは抱えていないようだった。
そりゃあ、明日をも知れぬ状態になるとは、思いもしなかったからなんだけども。
いい勉強になった、なんていう姿には、驚きを通り越してまさに感心といったところ。
ようやく落ち着いた爺も一緒に、散策を続ける。
ガレージはあちこちにあり、扉やシャッターを開いたまま、MMWをいじっている場所もある。
やはり、こうしてみていくとコロニーは思ったより規模が大きいのだとわかる。
徒歩では端から端までいっていたら、1日では到着できない。
(俺が暮らしてた場所が、ごく一部だってよくわかるな)
『そりゃ、そうでもしないと地下で人類の再起を図ることなんて、できやしないさ』
確かにその通りである。
人が増え、やれることが増えなければ復興も何もないのだから。
「おお、戦士セイヤ、散策か? 気分転換は大事だからな」
「そんなところ。いい場所ある?」
「ふうむ……そうだ、その角の向こうに、武器を使わないルールの試合会場がある。行ってみてはどうだ」
再びの見覚えがあるようなないような相手から、興味深い話が飛び出してきた。
武器を使わない、か……気になるね。
「ふふ、人気者ですね」
「びっくりしてるよ。最初は、もっとこう……馬鹿にされるというか、前の態度から変わるとは思ってなかったんだけど」
こんなガキが?なんて感じになるかと思ったら、とんでもなかった。
わからない人は誰だ?なんてなるけど、なぜか俺のことを知っている人のほうが多く、好意的だった。
うまく稼いでるな、なんてやっかみ交じりのこともあるけれど、そんな相手も笑顔が多い。
うれしく、コロニーが良い方向に向かっているのを実感できた。
「武装のないMMWの試合ですか。なかなか派手そうですな」
「え、どうしてですか? 普段は武装で戦うから面白いのでしょう?」
「ソフィアの感覚は、ある意味正解だけど、人にはいろんな趣味趣向があるみたいなんだよね」
例えばそう、武装にしても近接武器を好む、とかと同じようなものだ。
MMWは、現在は多くが人型だ。
それは何も偶然じゃなく、必然ともいえる。
あくまで人同士が戦ってるのが良いのである、という考えがあるということだ。
その戦いは、昔々あったという格闘技……ということなのだと思う。
「そうなんですね。見てみましょうか」
「俺たちの試合まではまだまだ時間があるからね、そうしよう」
まだ見ぬ戦いに興味をひかれつつ、聞いた場所へと向かう。




