MMW-146
地下洞窟を掘り始めて、もう1週間。
そう、1週間だ。
「セイヤ、最初より調子が上がってないか?」
「自覚あるよ。なんていうか、どの順番で撃ち込むと効果が高いか、わかるようになってきたんだ」
隣で掘るリングに、陽気に答えるぐらいの余裕は出てきた。
大体、俺1人と他3から5人分ぐらいの差が出始めている。
どちらかというと、砕いたものを運び出しているソフィアのほうが先に疲れるぐらいだ。
数えるのもやめたぐらい、往復しているけど……本当に岩だけだ。
「なるほどな。これは良い特訓にもなるかもしれん。それより、よかったな。外仕事もランクにしっかり影響を与えるってさ」
「うん。だからアデルたちも動き方を変えてるんだよね?」
リングが言うのは、コロニー上層部からの通達のことだ。
いわゆるランクを、試合の強さを中心としたものから、コロニーへの貢献度のようなものも加えるとしたのだ。
つまり、試合にあまりでなくても、ある程度ならランクは安全に上げられるということ。
結果として、ランク1の戦士がすぐいなくなるというのは改善してきているらしい。
もっとも、外に出るには高ランクの付き添いが必要らしいけど。
まあ、高ランクの仕事の手伝いって感じかな?
(で、俺たちにもその恩恵はある、と)
この穴掘りも、対象となるようで何よりだ。
勝ち負けではっきりする試合と比べ、地道なものだけどね。
「そろそろ次の設置です。手を止めてください」
「了解。結構掘ったと思うんだけど、後どのぐらいかな?」
照明兼換気用の装置を設置するのを眺めながら、そんなことを聞いてみる。
実質、寝る時以外ずっと掘っていたりする。
終わったら、ちょっと体を休めないとね。
「そうですね……希望の穴まで、もう半日も戦士セイヤが掘ってくれれば、つくかと」
「ほんと? じゃあやるやる。早く終わらせよう」
俄然、やる気が出てきた。
再開していいと言われ、すぐに掘り始める。
掘ると言っても、延々と筒状の何かからエネルギー弾を放つだけだけど。
なんでも、こういう採掘専用の地上から持ち込んだ道具の1つらしい。
コランダムコロニーでは、あまり使われてこなかったようだ。
「セイヤ、コアの調子はどうですか?」
「問題ないね。まだ全然本気を出してないし、安定してるよ」
言いながら、ソフィアの運転する車両の荷台に、砕けた岩を積んでいく。
ひたすら往復のソフィアは、運転にも慣れた様子だ。
心なしか、体つきも変わったような……これは気のせいかな?
「それはよかったです。慣らしになってるかは少し不安ですけれども」
「それは確かに。開通したら、ちょっと出力を上げて飛んでみようかな?」
そう言って、運ぶために離れていくソフィアを見送る。
さらに掘ろうとしたところで、岩の向こう側に確かに気配を感じた。
悪いものじゃなく、岩じゃないぞという感覚だ。
「そろそろっぽい。念のために、MMW以外は下がったほうが良いかな」
敵とこんにちは、はさすがにないとは思うけども……。
「いいぜ、セイヤ」
「うん。一気に行くよ!」
そう告げて、目の前の壁に向けて連続で勢いよく力を叩き込む。
崩れていく岩、岩。
そして……空気が流れるのを感じた。
「開通した……!」
まだわずかな隙間。
その向こうに、見覚えのある景色が見えた。
コロニーのそれとは違う建物群。
以前と違い、周囲には機械獣だけでなく、MMWもある。
がれきを皆と協力してどかし、通れるように広げるとさらに周囲がよく見える。
「ついたね」
「ああ、希望の穴だ」
外に出て休憩していると、希望の穴のほうから機械獣が数機、近づいてくるのが見えた。
どうやらお迎えのようだった。




