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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-142



「ソフィア、何か聞こえない?」


「え? 作業機械の音はしますけれど……セイヤの言うのは、それのことではないですよね?」


 ソフィアに頷きつつ、周囲を見渡してしまう。

 待機するように言われた、ごく普通の部屋。


 机と椅子、それに何もない棚がいくつか。

 普段、使われているか怪しい質素な部屋だ。


 当然、ソフィアの言うように、部屋の外以外に音を立てるようなものはない。

 その音ですら、聞きなれた類の物ばかり。


(じゃあ、この声のような響きはなんだろう?)


 実のところ、聞き覚えはある。

 それは、巨大なスターレイ、その光の中で夢のような時間を過ごした時のものだ。


 あの時も、降り注ぐ光に照らされながら、こんな声のような音を聞いたような……。


 と、部屋に誰かが入ってきた。

 作業をしてくれている人員の1人だ。


「お待たせしました。私たちも二重構造化はかなり久しぶりですので、手間取りました」


「急な話だし、仕方ないと思う。前みたいに力を注げば?」


 俺の言葉に、相手は首を横に振った。

 違う? じゃあ何をしたらいいのだろうか?


「恐らく考えているような作業はまだ行われていません。今から、スターレイを砕いてもらいます」


「スターレイを、砕く? セイヤがなぜ?」


 ソフィアの疑問の声に、俺も内心共感しつつも、別の意味で納得した。

 スターレイは特殊な鉱物だ。

 この前のほどでなくても、地上に向けて伸びる長い長い構造。


 そんなものが、自然に出来上がるものだろうか?

 その答えのヒントは、これまでに教わっている。


 故意か事件かにせよ、人類がかかわっているのだと。


「MMWというか、メタルムコアは不思議の塊。そんなこともあるよ」


「それは……そうかもしれませんけど。私も見てて大丈夫でしょうか?」


 あまり納得いってない様子のソフィア。

 それでも、見学は問題ないと言われ、少し落ち着いたようだった。


 案内されるままに部屋を移動し、作業場と言わんばかりの部屋へ。

 天井が高く、中央には俺の機体から取り外したコアが1つ。

 話通りなら、スカイブルーのコアだ。


 多くの機械と、照明に囲まれ、光っている。

 その横には、スターレイの破片。

 破片といっても、コアに使うサイズなのでかなりの大きさだ。


 コロニーに持ち帰ってきた破片の1つだ。


「まさか人力で砕くの?」


「やってみるとわかりますよ。昔から、人の手による場合は必要に応じたサイズで砕けてくれる、そう伝わっています」


 冗談かと思ったけど、真顔だ。

 プレストンも、黙ったまま肯定の感情を伝えてくる。


 俺は半信半疑ながら、砕くための道具を渡されるままに手を取り、スターレイに近づく。


 実のところ、部屋に入ってから音……声がうるさいのだ。

 早く、早くと。


『実際には、波長の合う感覚がそう聞こえているだけだ。生きている石とかそういうわけじゃないから安心しろ』


 唐突な助言に、かすかに頷きつつスターレイの前に立った。

 そうして、思うままに砕くための道具をハンマーで叩きつける。

 わずかな手ごたえ、あっさりと道具はスターレイに沈み、ざっと3分の1ほどが砕けて転がった。


「おお、こんな大きく砕けたのは記録には無いぞ」


 誰かの興奮した声が、どこか遠くに聞こえた。

 砕けた破片を思わず数えると、12個。

 不思議と、小さい破片はなく、みんなある程度の大きさがある。


「この数なら、相当の増幅力、それに安定性が見込めます。すぐに取り掛かります」


 言うが早いか、周囲の機材に乗り込むかのように駆け寄った作業員たちが、スターレイの破片を機材でつかむ。

 そして、外側のコアのための素材だろう金属板等も一緒に、スカイブルーのコアを覆う新たな球体を組み立て始めた。


 スターレイの破片は、要所要所といった形ではめ込まれ、照明を反射して輝いている。


「なんだったんだろうな……」


「セイヤ、大丈夫ですか?」


 ぼんやりした俺の声に、心配そうに話しかけてくるソフィア。

 大丈夫、と返事をしつつも、先ほどの感覚に気持ちは向かっていく。


 砕けると同時に聞こえたように感じた、歓喜の声のようなもの。

 果たしてあれは……なんだったのだろうか?


 俺の疑問に、プレストンは答えず、微笑む感覚を伝えてくるのみだった。





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