MMW-127
残骸を集めつつ、機械獣の調査も続ける。
譲り受けた個体との違いなんかを確認していると、地図情報のようなものが読み取れた。
数値とかは入っていないから、地図として使うには、微妙な感じ。
それでも、大まかな地形らしきものは読み取れる。
何より、俺の知っている場所から来たのではないことが確定した。
『これは、なかなか重要な情報だな』
一人頷き、地図情報を見ていく。
どうやら、ここから離れた場所にも同じような場所がいくつかあるらしい。
案外、地下世界には多くの人類が逃げ込んだんだろうか?
(いや……散らばらないといけなかった?)
その考えに至ったとき、なぜか背筋が寒くなった。
それにたどり着くべきという気持ちと、たどり着くべきではないという気持ちがぶつかり合う。
嫌な気持ちを振り払うべく、調査はそこで切り上げる。
再起動させた機械獣には、この場所を維持しろという命令を伝え、置いていくことに。
連れて行ってもいいのだけど、帰りに拾えたら拾おうと考えた。
ソフィア曰く、こういう決まりがあると、無理をしなくなるのだとか。
まるで、俺がいつも無理をしてるような……してるかな? してるかも?
「セイヤ、どうした? 何か気になることが?」
「ううん、大丈夫。行こう」
命令通りにじっとしたままの機械獣を見ていたら、結構時間がたっていたらしい。
リングの呼びかけに、慌ててMMWを操作し移動を再開。
ここからは、何があるかわからないからと戦士の半分はMMWで移動だ。
何事もないのが一番だけど、さて?
その後、1週間ぐらいは何もなく進むことができた。
順調すぎて、何も変化がないぐらいに感じるほどだ。
さらに進んだ先で見えてきた、大きな岩の柱(たぶんキロ単位)。
近づき、視界一杯がその柱になったところで、どうにか迂回する。
柱というにはでかすぎるけど、何かあるかもと思ったんだけど……。
(力を感じる……この柱の中に何かあるのかな?)
『いや、これは……スターレイだ。この向こう側にある』
(え? この距離、それにこの柱かなり太いよ?)
プレストンの言葉に、驚きを隠せない。
疑いつつも、そろそろ柱の端っこというところで、柱のない部分に力の波を感じた。
まるで、まぶしい灯りを柱がさえぎっていたかのような、不思議な感覚。
開けた視界に飛び込んできたのは、圧倒的な輝き。
「スターレイだ。なんだあのでかさは……」
誰かの声に、俺もそのスターレイを見て、圧倒される。
俺が見たスターレイが、子供も子供、と感じるような大きさだ。
今通り過ぎた岩の柱と同じぐらいにも見えるほどだ。
と、そんなスターレイに打ち込まれる、エネルギーの光線。
「発光! いや、あれは攻撃?」
自然にあんな光線が放たれるわけがない。
つまりは、MMWかそれに相当する何かのせいだ。
光線がスターレイに当たると、コロニーで感じたのとは強さがまるで違う波が周囲に広がる。
「くそっ、コアが安定しねえ。みんなはどうだ!?」
「こっちもだ。まるで怒鳴りつけられたガキみてえだ」
俺の乗るMMWも、メタルムコアの動きが怪しい。
どちらかというと、活性化という感じだけど……。
「UGクラスの威力があるぞ……おい、光線の発射元をよく見ろ!」
思わずズームをすると、人影。
人、人か? いや、この距離でこのサイズ、MMWだ。
「別のコロニーの連中か? 何のためにスターレイを?」
騒がしくなる戦士たち。
無理もないことだけど、俺は気になることがある。
スターレイに手を出さないというのは俺も教わったことだ。
正確には、落ちてきたものは利用できるが、上に生えてるのはダメ、という感じ。
しかし、目の前で起きてる行為は……スターレイを半ば敵視しているかのようなものに見える。
考えなかったとことが無いといえば、嘘になる。
コランダムコロニーとベリルコロニーの関係が、当たり前なのかもしれない。
けれども、人間はそんな単純じゃないことも俺は知っている。
「みんな、戦闘準備。あいつら、自分たちが一番って連中かもしれないよ」
警戒を、と警鐘を鳴らすプレストンの感情に従い、俺はMMWを本気の状態に持っていく。




