MMW-125
スターレイ、それは地上との接点の1つ。
長さは、推測になるが基本的に地上までというとんでもないものだ。
落ちてこない空、岩盤を考えると、恐らく10㎞でも足りないぐらい。
あちこちで地下世界に顔を出す形の、透明な結晶による柱。
稀に落ちてきて、素材になるらしい。
地上からの光を地下に届ける、唯一の存在である。
道中の岩盤に反射するせいで、地下世界に届く光は基本、茶色い。
また、黒系の岩盤に光が吸収されていくのもあり、恐らく真上に来た時以外は光はわずかだ。
「成長してるっぽいのが、すごいところだよなあ」
「今、揺れたか? 光が……」
最初に遭遇したほどではないが、思い出したように力の波が伝わり、空が震え、粒子が満ちる。
誰かの言葉通り、粒子が見えない状態でも変化がわかる。
「あのスターレイは無事ですね……」
道中、いくつかのスターレイに遭遇する。
ほかの戦士たちとも観察するが、今のところは異常なし。
力が伝わってくるのはまだ先のほうだから当然か。
(その……はずなんだよな)
教育と、プレストンの知識からして、地上まではかなりの距離というか長さがある。
それだけスターレイが長いのも信じられないけど、光がなんだかんだ届くのがすごい。
この地下世界が最低限の明るさを保っているのも、スターレイのおかげ……らしいけども。
『そのうちわかるだろうから言っておくと、スターレイ自体は……おそらく人の手が入ったもので、自然の物じゃない』
「は?」
「? セイヤ、どうしました?」
ソフィアに見間違いだった、何でもないと答え、口を閉じる。
スターレイが自然の物じゃない?
今まで、そんなこと言ってこなかったじゃないか。
『機会がなかったからな』
(そういう問題じゃ……で、どうすればいい?)
問い詰めようとして、止める。
意味がないし、知りたいのはそこじゃない。
『どうもないさ。採取できれば有効活用する、それだけ。俺もいつかの記録で見ただけだが、スターレイの数は増えているようだ』
(増えてる……生き物? いやいや、それはないか)
あと考えられるのは、誰かが作ったということ。
で、それは誰かといえば地上にいたころの人間か、人間を追いやった何か。
少しもやもやしながら、旅は続いた。
コロニーに残ってる記録的に、外仕事で調査した範囲はとっくに追い越している。
ここから先は、未調査領域。
そんな時だ。
「っ! みんな、機械獣か虫の反応あり。後30分ぐらい先」
感じた独特の気配を伝え、自分も念のためにMMWを戦闘モードに。
数は多くなさそうだけど、放っておくのも問題だ。
相変わらずの荒地と岩山達、そして光る林。
中心地には、水だ。
「んん?」
以前見た、小さなものと似てるけど、何か違う。
MMWをホバー移動させ、少し前に。
こういうのは、見つけた人が先に調査するのが話が早い。
「動くものは無し。無線の調子はどう?」
「問題ないぜ。早く戻ってこい、お嬢ちゃんが心配してるぞ」
そうは言っても、何もわからないほうが逆に怖い。
この距離でもわかるしっかりした林、そして色の違う岩たち。
結構な量の緑に、その場所を覆うようなほんのりとした光。
(まるで、ここだけで完結してる入れ物みたいだ)
直感的にそう感じ、それは正しかったんだと思う。
それが見えたとき、機体を止めた。
「セイヤより全員へ。小さいけど建物がある」
自分でも言って信じられないけど、建物がある。
すぐに他の戦士たちも、戦える状態で近づいてくる。
そして同じものを見、沈黙。
「ベリルコロニーからの離脱者か?」
「いや、こんな場所で定住は戦力が足りないだろう」
誰かが言った通り、近くに機械獣か虫の反応がある。
そんな場所で、少人数では一時的な滞在が限界だ。
いや、そもそもその考え自体が間違っていたら?
「住むつもりがない、一時的な休憩所って考えはどう?」
「遠征のために、道中の整備をするようなものか……ありえるかもな」
リングの返事を聞きながら、ゆっくりと近づき……それに気が付く。
距離を詰めることで、ようやくそれが見えた。
なるほど、機械虫はともかく獣に襲われてないわけだ。
「建物のそばに、停止状態の機械獣がいる。上書きしてくる」
停止した状態の機械獣、虫を感じ取ることはできないから、気が付かなかった。
それと、希望の穴の人形曰く、管理者権限は共通とのこと。
これは分散して地下に逃げ込んだ人類が、どの状態でも再興できるようにとのことだ。
俺が慎重に近づき、機械獣を再起動させたのと、さらにどこからか力の波が空を流れたのは、ほぼ同時だった。




